大成建設など5社連携で黒部ダム駅~扇沢駅間を電気バス自動運転実証、9月16日から実施

大成建設株式会社と関西電力をはじめとする5社が、富山県と長野県を結ぶ黒部ダム駅と扇沢駅間において、電気バスの自動運転技術実証を開始することが発表されました。2025年9月16日から19日までの4日間、夜間時間帯を利用した走行テストが実施される予定です。

実証実験の背景と目的

今回の実証実験は、現在運行中の電気バスが更新時期を迎えることを受けて計画されました。将来的に導入する新型車両の選択肢を広げるため、最新の自動運転技術を検証することが主な狙いです。

関西電力、ティアフォー、アイサンテクノロジー、大成建設、大成ロテックの5社が協力体制を構築し、それぞれの専門技術を活用します。営業時間外の夜間帯に実施することで、通常の運行に影響を与えることなく、安全な環境での検証が可能になります。

自動運転レベル2からレベル4への段階的展開

最初の段階では、自動運転レベル2での走行実証を行います。このレベルでは、ハンドル、アクセル、ブレーキの操作を部分的に支援する機能が搭載されており、運転者が常に監視と即座の対応を担う仕組みです。

実証実験で得られたデータと経験をもとに、次の段階として自動運転レベル4相当の完全自動運転システムの導入も検討されています。特定の条件下において、人間の介入なしに完全自動で運行できる技術の実現を目指します。

現行電気バスの運行状況

現在、黒部ダム駅と扇沢駅間で運行している電気バスは、日野自動車製のブルーリボンをベースとした車両です。フラットフィールド社による電動化改造が施されており、最大80名の乗客を収容できます。座席数は32席となっています。

充電システムには2つの方式が採用されています。

・パンタグラフ方式による超急速充電

・チャデモ方式による急速充電

この二重の充電システムにより、効率的な運行スケジュールの維持が実現されています。2019年4月からの運行開始以来、環境に配慮した交通手段として重要な役割を果たしてきました。

各社の専門技術と役割分担

ティアフォーが自動運転実証車両「Minibus」の提供を担当します。同社が開発した自動運転ソフトウェア「Autoware」は、自動運転に必要な全機能を統合したシステムです。システム開発から実際の走行オペレーションまで、一貫して主導的役割を果たします。

高精度3次元地図の製作

アイサンテクノロジーは、車両の正確な自己位置把握を支援する高精度3次元地図の製作を担当します。この3Dマップ技術により、車両が周囲環境を詳細に認識し、適切な判断を行えるようになります。

トンネル内走行支援技術

大成建設と大成ロテックは、トンネル内での自動運転を支援する技術開発を担います。トンネル内部は壁面の形状特徴が少なく、車両の位置推定に課題があります。この問題を解決するため、トンネル壁面にLiDARで認識可能な反射体を一定間隔で設置します。

反射体には特殊な塗装膜が施されており、防汚性能と反射性能の両方を確保します。これにより、長期間にわたって安定した位置推定支援が期待できます。

走行ルートの特徴

実証実験は、黒部ダム駅から扇沢駅までの片道6.1キロメートルの区間で実施されます。この区間は立山黒部アルペンルートの重要な交通インフラであり、多くの観光客が利用する路線です。

山岳地帯特有の地形と長いトンネル区間を含む走行環境は、自動運転技術の検証において貴重なテストケースとなります。様々な走行条件での性能確認と課題の洗い出しが重要な検証項目です。

今後の展望

5社は今回の実証実験結果を詳細に分析し、電気バスの継続利用と自動運転技術の実用化に向けた取り組みを加速させる方針です。山岳観光地における自動運転技術の活用は、運転手不足の解決や運行効率の向上につながると期待されています。

また、環境負荷の少ない電気バスと最新の自動運転技術の組み合わせは、持続可能な交通システムのモデルケースとして注目されています。成果次第では、他の観光地や交通機関への展開も視野に入れた取り組みが進められる可能性があります。

出典情報

大成建設株式会社リリース,黒部ダム駅・扇沢駅間の電気バス自動運転実証の実施,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/assets_cms/pdf/10622.pdf