国土交通省データ、建設大手50社受注1.3兆円、民間低迷で5ヶ月ぶりマイナス

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国土交通省が公表した令和7年7月の建設工事受注動態統計調査(大手50社調査)によると、受注総額が前年同月比19.0%減の1兆3,142億円となり、5ヶ月ぶりに減少に転じたことが明らかになりました。

民間工事が大幅減少の主要因

今回の大幅な減少の主な要因は、民間工事の落ち込みです。民間工事は前年同月比29.4%減の9,242億円となり、8ヶ月ぶりに減少しました。この背景には、製造業で33.6%減、非製造業で27.6%減という深刻な状況があります。

特に以下の業種で顕著な減少が見られています。

・製造業:33.6%の大幅減

・電気・ガス・熱供給・水道業:大幅な減少

・サービス業:大きく落ち込み

一方で増加を示した業種もあります。

・運輸業・郵便業:増加傾向

・非製造業その他:プラス成長

工事種類別の明暗が分かれる

工事の種類別で見ると、建築工事は減少したものの、土木工事は増加という対照的な結果となりました。具体的には、土木その他、建築その他、娯楽施設などが伸びを見せる一方、工場・発電所、事務所・庁舎、宿泊施設などは大きく減少しています。

公共工事は微減にとどまる

公共工事については、前年同月比0.2%減の2,229億円と、民間工事ほどの落ち込みは見せていません。しかし、先月の増加から再び減少に転じており、予断を許さない状況です。

国と地方の機関別では大きな違いが見られます。

■国の機関

全体で24.1%の減少

・国:減少

・独立行政法人:減少

・政府関連企業:増加

■地方の機関

全体で36.8%の大幅増加

・市区町村:大幅増加

・都道府県:減少

・地方その他:減少

・地方公営企業:減少

海外工事は好調を維持

唯一明るい材料となったのが海外工事です。前年同月比138.2%増の1,213億円と大幅な伸びを記録し、先月の減少から再び増加に転じました。

国内全体の厳しい現実

国内工事全体では、民間・公共両方で減少したため、1兆1,929億円(前年同月比24.1%減少)となり、5ヶ月ぶりの減少となりました。

大規模工事の動向

受注高10億円以上の大規模工事については、全体の65.8%を占める重要な指標となっていますが、前年同月比で34.5%の大幅な減少となり、建設業界全体の厳しさを象徴する結果となっています。

地域別の受注状況

地域別で見ると、関東地方が877,072百万円と最も大きな受注額を記録していますが、前年同月比では66.8%の大幅増となっています。一方、北海道は58.3%の大幅減、近畿地方も31.1%減と地域による格差が拡大している状況です。

今後の見通しと課題

建設業界は現在、複数の課題に直面しています。民間投資の慎重な姿勢、材料費の高騰、人手不足などが重なり、厳しい環境が続いています。特に製造業からの工事受注が大幅に減少していることは、産業全体の設備投資意欲の低下を示唆しており、今後の経済動向への影響も懸念されます。

しかし、海外工事の好調や一部業種での増加傾向も見られることから、業界全体としては多様化する市場ニーズに対応した戦略の見直しが求められています。公共工事についても、地方の機関からの受注が増加していることは、地方創生や社会インフラ整備への期待の現れとも言えるでしょう。

今回の統計結果は、建設業界が転換期を迎えていることを明確に示しています。企業各社は市場の変化に柔軟に対応し、新たな成長分野の開拓が急務となっています。

出典情報

国土交通省リリース,建 設 工 事 受 注 動 態 統 計 調 査 報 告 ( 大 手 50 社 調 査 )( 令 和 7 年 7 月 分 ) に つ い て,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001906310.pdf