国土交通省調査、7月の全国建築物着工が13.3%減、民間投資の冷え込み深刻で業界回復に遅れ

令和7年7月の全国建築物着工床面積が757万平方メートルとなり、前年同月と比較して13.3%減少したことが明らかになりました。これで4カ月連続の減少となり、建築業界の低迷が続いています。

公共・民間ともに減少傾向
建築主体別に見ると、公共建築主による着工は48万平方メートルで前年同月比3.7%減となり、6カ月連続の減少を記録しました。一方、民間建築主による着工は709万平方メートルで同13.8%減となり、4カ月連続の減少となっています。
民間建築主の内訳では、居住用建築物が491万平方メートル(前年同月比8.4%減)、非居住用建築物が218万平方メートル(同23.9%減)となりました。特に非居住用建築物の減少幅が大きく、2カ月連続で前年を下回る結果となっています。
事務所建築が大幅減少
民間非居住用建築物を用途別に分析すると、次のような傾向が見られます。
・事務所:28万平方メートル(前年同月比56.2%減、9カ月連続の減少)
・店舗:27万平方メートル(同21.3%減、3カ月ぶりの減少)
・工場:39万平方メートル(同24.9%減、2カ月連続の減少)
・倉庫:52万平方メートル(同22.9%減、2カ月連続の減少)
特に事務所建築の落ち込みが深刻で、半分以上の大幅な減少となっています。これはテレワークの普及や企業の投資抑制などが影響していると考えられます。
一部業種では増加も
減少傾向が目立つ中、増加を示した業種もあります。
業種別の動向は以下の通りです。
・情報通信業用:4万平方メートル(前年同月比59.2%増)
・金融業・保険業用:2万平方メートル(同14.3%増)
・宿泊業・飲食サービス業用:15万平方メートル(同34.9%増)
・その他のサービス業用:22万平方メートル(同27.0%増)
これらの業種では、デジタル化の進展や観光業の回復などが着工増加の背景にあると分析されています。
新設住宅も減少が継続
新設住宅の着工戸数は61,409戸となり、前年同月比9.7%減少しました。これも4カ月連続の減少となっています。
利用関係別では次のような結果となりました。
・持家:17,665戸(前年同月比11.1%減)
・貸家:27,412戸(同13.1%減)
・給与住宅:446戸(同横ばい)
・分譲住宅:15,886戸(同1.7%減)
住宅市場においても、金利上昇や建築コストの増加などが影響し、全体的に低迷が続いている状況です。
地域別の状況
都道府県別に見ると、地域によって大きな差が生じています。
首都圏(埼玉、千葉、東京、神奈川)では、建築物の床面積合計が2,145万平方メートルとなり、前年同月比17.3%減少しました。新設住宅戸数は22,168戸で同5.8%減となっています。
中部圏(岐阜、静岡、愛知、三重)では、建築物の床面積合計が1,057万平方メートルで前年同月比2.0%増と、数少ない増加地域となりました。
近畿圏(滋賀、京都、大阪、兵庫、奈良、和歌山)では、建築物の床面積合計が1,083万平方メートルで前年同月比24.7%減と大幅な減少を記録しています。
工事費予定額は小幅減少
7月の建築物工事費予定額は2兆3,383億円となり、前年同月比4.1%減少しました。床面積の減少幅に比べると減少幅は小さく、建築単価の上昇が影響していると考えられます。
住宅関連では、工事費予定額が1兆3,590億円(前年同月比1.7%減)となり、床面積の減少率を下回る結果となっています。
今後の見通し
建築業界では、資材価格の高騰や人手不足などの課題が続いており、当面は厳しい状況が予想されます。ただし、情報通信業や宿泊・飲食サービス業などの一部業種では回復の兆しも見られており、業種によって明暗が分かれる状況となっています。
政府の経済対策や金融政策の動向、さらには国際情勢の変化などが、今後の建築着工動向に大きく影響することが予想されます。建築業界関係者は、これらの要因を注視しながら事業計画の見直しを進める必要があるでしょう。
季節調整値で見ると、7月の床面積合計は前月比1.7%増となっており、月次ベースでは若干の改善が見られます。しかし、前年同月との比較では依然として大幅な減少が続いており、本格的な回復にはまだ時間がかかりそうです。
出典情報
国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和 7 年 7 月分)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha707.pdf