竹中工務店ら3社、建設現場ロボット自動運転システム開発、空間ID活用で2027年実用化へ

2025年8月25日、株式会社竹中工務店、NTTドコモビジネス、アスラテックの3社が連携し、空間IDを用いた建設現場向けのロボット運用システムを開発したと報告しました。

革新的な「ロボットナビゲーションシステム」が誕生

今回開発されたシステムは「ロボットナビゲーションシステム」と呼ばれ、空間IDという特殊な技術を使っています。この空間IDは、3次元の空間を細かな立方体に分けて、それぞれに特別な番号を付けることで、地球上のどこにでも正確な位置を特定できる仕組みです。

空間IDは経済産業省などがデータ規格の策定を進めているもので、今後の活用が期待されています。建設現場という複雑で危険な環境での実用化は、まさに業界初の取り組みといえるでしょう。

既存システムとの連携で実現した高度な機能

新システムの最大の特徴は、NTTドコモビジネスが提供している「tateras作業間調整」というサービスとの連携です。このサービスは、建設現場での様々な作業を調整するためのアプリケーションで、日々の作業場所や重機の位置、材料の搬入出などの情報を図面上で見える化できます。

本システムは「tateras作業間調整」の図面・施工管理情報と空間IDを組み合わせ、ロボットの移動ルートを設定・計画することを可能にします。空間IDを用いることで、屋内外や上下階の移動が生じる複雑な現場でも、各エリアで生成されたマップを統合してシームレスな自律移動を目指せるようになりました。

システムの主な機能

新システムには以下のような優れた機能があります。

・図面および施工管理情報をもとにマップを構築

・作業状況の変化に応じて柔軟に走行計画を作成・修正

・複数のロボットが同時に作業できる調整機能

・異なる種類のロボット間での情報共有

実証実験で確認された大幅な効率化

竹中工務店の実際の建設現場で行われた実証実験では、四足歩行ロボット「Spot」を使用しました。このロボットは、Boston Dynamics社が開発したもので、階段の昇降や足場の悪い場所でも安定して移動できる特徴があります。

実験の結果、現場職員の確認作業にかかる時間が約30%削減されることが確認されました。また、実証実験の結果に基づき、ロボットのシステム開発コストは約30%の削減が可能であると示されています。

建設業界が抱える深刻な課題への対応

現在、建設業界では労働力不足が深刻な問題となっています。危険を伴う作業や繰り返し作業をロボットが代行することで、作業員の安全性向上と生産性の向上が期待されています。

従来のロボット導入では、屋内外の移動困難、3次元方向への移動制限、自動移動に必要な地図作成の高コストなど、多くの課題がありました。今回のシステムは、これらの課題を技術的に解決したものです。

各企業の専門性を活かした役割分担

プロジェクトでは、3社がそれぞれの得意分野を活かして開発を進めました。

竹中工務店は、長年の建設現場での経験とノウハウを提供し、システム全体の企画と実証実験の場を提供しました。現場での効果検証と考察も同社が担当しています。

NTTドコモビジネスは、既存のサービスとの連携機能開発と、3次元情報に時間要素を組み合わせた4次元時空間情報基盤の提供を行いました。この技術により、時間の経過とともに変化する建設現場の状況を正確に把握できます。

アスラテックは、システム本体の開発とロボット向けのカスタマイズ機能開発を担当し、実際の実証実験も実施しました。

2027年実用化に向けた今後の取り組み

現在のシステムは実証実験段階ですが、3社は2027年の実用化を目標として開発を続けています。これまでの実験で明らかになった課題の解決に取り組み、より安定性と効率性を高めたシステムの完成を目指しています。

将来への展望

実用化後は、建設現場での労働時間削減と働きやすい環境の実現に大きく貢献することが期待されています。さらに、デジタルツイン技術の活用も推進し、建築の設計から生産、運用まで全ての工程での効率化を図る予定です。

デジタルツイン技術は、現実世界のデータをもとに仮想空間でモデルを作り、様々なシミュレーションや分析を行う技術です。この技術と組み合わせることで、建設プロジェクト全体の最適化が可能になります。

国の支援プロジェクトとしての意義

この開発は、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の委託業務として実施されました。国家レベルでの技術開発支援を受けていることからも、その重要性と将来性が評価されていることがわかります。

建設業界のデジタル化は日本の重要な政策課題の一つであり、今回のような先進的な取り組みは、業界全体の競争力向上につながると期待されています。

新システムの実用化により、建設現場でのロボット活用が本格的に始まり、日本の建設業界が世界をリードする技術力を示すことになるでしょう。労働力不足の解決と安全性の向上を同時に実現する画期的な技術として、今後の発展が注目されています。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,空間IDを活用した建設現場ロボット運用システムを開発~業界初、3次元位置情報でロボット自律移動を可能にし、2027年実用化めざす~,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/08/05/