「BIM/CIMの活用状況」全建がICT施工・BIM/CIMの現状について調査・第二回目掲載|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

全国建設業協会(全建)では、2025年7月1日付けで、「令和7(2025)年度 生産性向上の取組に関するアンケート」の調査結果を公表した。アンケート調査は2025年4〜5月にかけて実施され、全国から1,958社が回答している。

調査内容は、主に「ICT施工の取組状況について」「BIM/CIMの活用状況」に大別されている。ここでは、前稿に引き続き、第二回目として「BIM/CIMの活用状況」概説する。

結果としては、全建の会員企業の97.1%を占める資本金1億円以下の中小企業では、BIM/CIMの普及が進んでいない現況が垣間見られた反面、BIM/CIMを導入すれば、「発注者や施工関係者間の合意形成」が進むなど、成果も明らかとなっている。

全国建設業協会がICT施工・BIM/CIMの現状について全国規模でのアンケート調査を実施|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

全国建設業協会(全建)では、2025年7月1日付けで、「令和7(2025)年度 生産性向上の取組に関するアンケート」の調査結果を公表した。 … more

ビルドアップニュース

BIM/CIMの活用工事では「発注者指定型」が5割程度+「発注者指定型を受注」が増加

BIM/CIMの活用状況については、工事の受注実績が1割程度とBIM/CIM活用工事の発注が進んでいない結果となった。「BIM/CIM活用工事の受注実績がある」と回答したケースにおけるBIM/CIM活用工事の受注状況を見ると、「発注者指定型」が5割程度、「受注者希望型」が7割程度となっており、前年度と比べ「発注者指定型を受注」が増加し、「施工者希望型を受注」が減少などの傾向を示した。

次いで、BIM/CIM活用工事の発注者別実施工種については、国土交通省と国土交通省を除く国では「土工」「構造物工」が多く、都道府県、市区町村では「土工」が多かった。

CIM(土木分野)の活用実績は14.7%+一方で「発注者や施工関係者間の合意形成」が64.0%

CIM(土木分野)の活用状況については、「既に活用実績がある」が14.7%、「今後活用したい(準備を進めている)」が19.8%となった。一方で、「活用する予定なし」(25.7%)、「聞いたことはあるが詳細不知」(23.2%)が5割程度となるなど、CIM活用・普及が進んでいない現況を改善する必要があるだろう。

前向きな兆しも見られる。「既に活用実績がある」「今後活用したい(準備を進めている)」と回答したケースにおけるCIM活用内容を見ると、「発注者や施工関係者間の合意形成」が64.0%、「施工ステップの可視化による合意形成の円滑化」が61.8%、「工事にかかわる管理データの一元管理」が48.4%と明らかに成果が上がっているのがわかる。

CIM(土木分野)活用内容

BIM(建築分野)の活用も道半ば+一方で「発注者や施工関係者間の合意形成」が63.5%

BIM(建築分野)の活用状況はどうだろう。ここでも「既に活用実績がある」が3.5%、「今後活用したい(準備を進めている)」が11.0%となった。また、「活用する予定なし」(54.6%)、「聞いたことはあるが詳細不知」(18.8%)で7割を超えるなど、BIM活用・普及も進んでいない結果となった。

一方で、「既に活用実績がある」「今後活用したい(準備を進めている)」と回答したケースを見ると、BIM活用内容は、「発注者や施工関係者間の合意形成」が63.5%、「施工計画への活用」が62.1%、「施工図作成」が60.7%となるなど活用の成果は明らかである。

BIM(建築分野)活用内容

土木・建築分野共通でのBIM/CIM活用の課題や要望についても聞いている。それによると、「BIM/CIMに精通した技術者の採用・育成が必要」という人材面の課題が最も多く、次いで「ハードウェア、ソフトウェアが高額」というコスト面の課題が多いとの結果となった。

BIM/CIM活用の課題や要望

3次元モデルの優位性=「施工過程のイメージが共有でき安全確保や出来高管理が容易となる」

設計段階で作成された3次元モデルの提供を受けた工事では、施工段階で生産性は向上したのかとの極めて興味深い問いかけも行われている。それによると、3次元モデルの提供で施工面の生産性は「向上した」が9.5%で、「向上していない」の1.8%を上回った。一方で「3次元モデルの提供を受けたことがない」が66.6%となった。

「生産性は向上した」と回答したケースを見てみると、3次元モデルの提供で施工面の生産性が向上した点としては、「施工過程のイメージが共有でき安全確保や出来高管理が容易となる」が最も多く、次いで「事前に施工上の問題点が把握でき、確実な施工計画の作成によりトラブルの未然防止ができる」が多い結果となるなど、ここでも3次元モデルの優位性は明らかとなっている。

生産性が向上した点

「生産性は向上していない」と回答したケースでは、「施工用に3次元モデルの作成・修正が生じる」が最も多く、次いで「3次元モデルを自社で作成するための時間とコストがかかりすぎる」が多い結果となっている。

生産性が向上していないと感じる点

通信回線のない現場における衛星通信(スターリンク)の活用など新技術の採用も散見

受注した工事の詳細設計などで省人化に配慮した新技術や施工法が発注者によって検討・採用されているかについても質問している。それによると、「検討・採用されている」が7.5%、「検討・採用されていない」が28.9%、「わからない」が過半数を超える結果となった。なお、「検討・採用している」と回答したケースでは、新技術の傾向を知る上で興味深い結果となっている。

検討・採用された新技術や施工方法としては、

  • ICT施工
  • プレキャスト製品の採用
  • 残存型枠工事
  • AI交通誘導員
  • 建設ディレクターの育成・採用
  • 通信回線のない現場における衛星通信(スターリンク)の活用
  • 機械式接手

などが挙げられている。

現場技術者の負担軽減、管理業務の生産性向上のために現場支援として取り組んだこととしては、「社内書類の削減・簡素化等」が最も多く、次いで「受発注者間の情報共有システム(ASP方式)活用による現場情報共有」「遠隔臨場による監督・検査」の順となり、概ね令和6年度と同様の結果となっており、全ての項目で前年度よりも取り組みが進んでいる結果となっている。

現場支援としての取組