建築板金とは?仕事内容・年収・資格・将来性まで徹底解説【2025年最新】

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Category:コラム建築
Tag:建築

著者:上野 海

建築板金(読み方:けんちくばんきん)は、屋根・外壁・雨樋(あまどい)・水切り・笠木・ダクトなど建物の重要部分を金属板でつくり込む専門職です。しかし、具体的にどのような仕事なのかイメージできずにいる人も多いでしょう。

そこでこの記事では、仕事内容・単価・年収・資格・将来性まで一次情報も交えてわかりやすく解説します。

建築板金とは?基礎知識をわかりやすく解説

建築板金は「金属を加工して建物に取り付ける仕事」です。

薄い鉄板やアルミ、ステンレス、ガルバリウム鋼板などを使い、現場ごとに形を整えて施工します。まずは建築板金がどのような仕事なのか、概要から解説します。

建築板金の仕事内容

建築板金の仕事内容を以下に整理しました。

  • 屋根工事:立平葺き、横葺き、瓦棒葺きなど
  • 外壁工事:金属サイディング、角波サイディング
  • 雨樋の取り付け:軒樋、竪樋、集水器など
  • 役物(やくもの)の加工:棟包み、唐草、水切り、笠木など
  • ダクトや厨房金物の製作:ステンレス板を切って曲げて溶接

建物の雨漏りを防ぎ、建物の耐久性を高め、さらに見た目を整えるのが建築板金の仕事です。

建築板金と屋根工事の関係

屋根工事と建築板金は密接な関係にあります。特に次のような金属屋根は板金職人がいなければ施工できません。

  • 立平葺き:長尺で継ぎ目が少なく雨漏りに強い
  • 瓦棒葺き:リフォームで使いやすくカバー工法にも対応
  • 換気棟や雪止め:屋根板金と同時に取り付けることが多い

屋根は雨や風の影響をもっとも受ける部分です。建築板金は「雨仕舞い(あまじまい)」と呼ばれる雨水処理を正しく行うことで、建物を長持ちさせる重要な役割を担っています。

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建築板金の年収・単価・収入事情

建築板金の仕事でどれくらい稼げるのか、気になっていないでしょうか。

ここでは職人の平均年収や、工事にかかる単価、儲かるかどうかの目安を紹介します。

建築板金工の平均年収はいくら?

厚生労働省の「job tag」によると、建物板金の平均年収は403.8万円です。

(出典:職業情報提供サイト job tag「建築板金」

また、年齢別で見た場合の平均年収の最大値は497.5万円(40〜44歳)であり、国税庁が調査した日本全体の平均年収461万円に近しい値であることがわかっています。

(出典:国税庁「1 平均給与」

建築板金の単価相場(屋根・外壁・雨樋別)

施工の単価は材料や工事の難易度によって変わります。目安は以下のとおりです。

工事内容相場(税別)
屋根(金属葺き)6,000〜13,000円/㎡
外壁(金属サイディング)5,500〜12,000円/㎡
役物(棟包み・ケラバ等)1,500〜4,000円/m
雨樋(軒樋・縦樋)2,500〜5,000円/m

※工事業者等の公式サイトの情報などを参考に平均単価を算出

見積書を見るときは、㎡単価やm単価だけでなく、足場費・下地処理・廃材処分などが別途計上されているかもチェックしましょう。

建築板金は儲かる?収益性の現実

建築板金の仕事が「儲かるか?」は働き方次第です。

たとえば、会社員として安定的に働く場合は年収400〜600万円が中心となります。対して、建築板金の平均年収は400〜500万であるため、一般的な働き方をしていれば、安定を実現しやすいです。

また、企業に属さず一人親方として独立した場合は、売上が年間1,000〜1,500万円になることもあります。ただし材料費や外注費もかかるため、手元に残るのは粗利20〜30%(600~800万円)程度と言われています。

建築板金職人の仕事のリアル|きつい?やりがいはある?

建築板金の仕事は「きつい」と言われることも多いです。まずはきついと言われている部分を整理しました。

  • 高所作業:屋根の上や足場の上での作業が多く、常に安全対策が必要である
  • 天候の影響:雨や雪の日は仕事ができないことも多く、工期の調整に苦労する
  • 夏場の暑さ:金属屋根は高温になりやすく、体力的に厳しい時期がある
  • 重い材料の搬入:長尺の金属板を運んだり荷揚げする作業は筋力も必要である

対して、次のようなやりがいを感じるのが魅力です。

  • 雨漏りを防ぐ使命感:建物を雨から守り、住む人に安心を届けられる
  • 仕上がりの美しさ:曲げや折りの技術でピタッと納まった瞬間の達成感がある
  • お客様の感謝の言葉:引き渡し時に「これで安心できる」と喜ばれる
  • 技術が評価される世界:技能士資格や現場での評判が、評価や収入につながる

確かに、体力的にきつい面は確かにあります。しかし、それ以上に「自分の手で建物を守る」「形に残るものをつくる」というやりがいがあり、職人としての誇りを持てる仕事です。

最近はフルハーネスや熱中症対策グッズなど安全装備も整備され、昔より働きやすい環境が整ってきています。古い時代と比べて、働きやすい環境が整ってきていると覚えておきましょう。

建築板金に必要な資格とキャリア一覧

建築板金の仕事は、資格がなくても始められます。ただし資格を取れば「技術の証明」や「収入アップ」につながり、キャリアを築くうえで大きな武器となります。

仕事をスタートしてからは、次のような資格取得を目指しましょう。

資格名種別難易度・目安
建築板金技能士(1〜3級)国家資格実務経験が必要。3級は初心者向け
建築施工管理技士(1・2級)国家資格学科+実務経験が必要
職長・安全衛生責任者教育講習2日間程度の講習で取得可
高所作業車運転・玉掛け・フォークリフト特別教育/技能講習1〜3日の講習で取得可能
溶接資格(アーク溶接、ガス溶接など)技能講習数日の講習+実技試験あり

また、キャリアステップの例をまとめました。

  1. 見習い期:現場で先輩の補助をしながら基礎を習得
  2. 中堅期:技能士資格を取得し、独り立ち
  3. 職長期:安全衛生責任者資格を取り、チームをまとめる
  4. 独立期:一人親方として元請けから直接受注
  5. 経営期:自分の会社を持ち、従業員を雇って事業拡大

もちろん人によって差はありますが、より高見を目指したい方は次のステップのことを考えながら働くのがおすすめです。

建築板金業界の将来性|”終わり”と言われる理由とは?

「建築板金はもう終わりでは?」と耳にすることがあります。

実際、新築住宅の着工数は減少傾向にあり、建築業界全体で仕事量が縮小している地域もあります。これが“終わり”と言われる背景です。

(出典:国土交通省「建築着工統計調査報告 令和6年計分」

しかし、建築板金の需要自体がなくなるわけではありません。次のような理由から、むしろ 改修・リフォーム需要 は今後増えていくと見られています。

  • リフォーム・改修市場の拡大

古いスレート屋根を金属屋根にカバー工法で改修する需要が増加

  • 省エネ・断熱需要の高まり

金属サイディングや通気層工法は断熱性能を高めやすい

  • 太陽光発電・新技術との連携

太陽光パネル設置時に金属屋根が選ばれるケースが増加

  • 美観需要

金属パネルによるデザイン性の高い外装が人気

まだまだ需要が続く業界です。建築板金として長く活躍するためにも、多能工化を目指すのはもちろん、新技術の導入やデジタル対応などで効率化に取り組むことが重要です。

建築板金に関するよくある質問【FAQ】

建築板金の読み方は?

「建築板金」は「けんちくばんきん」と読みます。自動車修理の板金と混同されやすいですが、建築板金は屋根や外壁、雨樋など建物の外装部分に金属板を加工・取り付ける仕事を指します。住宅から工場、公共施設まで幅広く施工を担う、建築には欠かせない専門職です。

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建築板金工の平均年収は?

建築板金工の平均年収はおおよそ350万〜600万円(厚生労働省の情報だと平均403.8万円)とされています。経験年数や地域、会社規模によって差がありますが、資格を取得し現場を任されるようになると年収はさらに上がります。職長や管理者になれば600万〜750万円クラスに届くこともあります。

一人親方の年収はどれくらい?

建築板金で独立し、一人親方として働く場合の年収は大きく変動します。売上で1,000万〜1,500万円に達する人もいますが、そこから材料費・外注費を差し引いた手取りは20〜30%程度。安定性は会社員に劣りますが、技術と営業力次第で高収入を得られる可能性があります。

板金屋と塗装屋の違いは?

板金屋は金属板を加工・施工して建物を雨風から守る専門職で、屋根や外壁、雨樋工事を中心に行います。一方、塗装屋は建物の外壁や屋根に塗料を塗り、防水性や美観を維持する仕事です。両者は役割が違いますが、外装リフォームの現場では一緒に入るケースも多くあります。

建築板金の仕事は将来なくなる?

「建築板金は終わり」と言われるのは新築需要の減少が背景です。しかしリフォームや屋根のカバー工法、省エネ住宅への改修ニーズが増えているため、今後も需要は続くと予測されています。職人不足もあり、技術を持つ人材はむしろ重宝される傾向にあります。

まとめ

建築板金は、屋根や外壁、雨樋を金属で加工・施工することで、建物を雨風から守る大切な仕事です。見た目のデザインや耐久性を左右するため、職人の技術が大きく問われる分野でもあります。

また、体力的にきつい部分はあるものの、やりがいのある仕事であり、技術を身につければ安定して長く活躍できます。興味をお持ちなら、ぜひ仕事情報をリサーチしてみてください。