大林組、MR品質管理システムholonicaを大幅刷新、協力会社連携で検査業務25%効率化

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株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:佐藤俊美)は、MR(Mixed Reality:複合現実)技術を利用して施工確認や検査などを行う品質管理システムholonica(ホロニカ)の大幅アップデートを行いました。今回のアップデートにより、これまで社内限定だったシステムの利用範囲を協力会社にも拡大し、検査から修正完了の確認まで全ての工程をデジタル環境で処理できるようになりました。

システム開発の経緯と現状

大林組は建設現場でのデジタル変革を積極的に推進しており、BIM(Building Information Modeling)データを施工管理に活用する取り組みを続けています。2021年には、現実の建設現場とBIMデータから作成した3次元モデルを精密に合成し、工事の進行状況や検査データを記録するholonicaシステムを独自開発しました。

このシステムは仕上げ検査業務だけでなく、現場での完成イメージ共有にも使われており、2024年度までに50件超の大林組の建設現場で試行・適用されています。

2024年度末までに50を超える大林組の建設現場で試験運用と本格導入が進められています。

従来のholonicaでは、検査時の問題点記録作業は効率化されていましたが、システム利用が社内に制限されていたため、検査後の協力会社への修正指示や修正作業後の確認は従来通り紙媒体や別のソフトウェアで実施されていました。この運用方法では、指示内容の伝達や修正完了の報告で手間が発生するほか、紙資料や異なるアプリから情報を読み取る際の人的ミスが起こる可能性がありました。

アップデート後の主な特徴

今回の改良では、協力会社向けの閲覧・操作機能としてスマートフォン対応のWebアプリケーションを新たに導入しました。この機能により、完成後検査での問題点記録から修正完了確認まで全ての業務をシステム内で処理することが可能になりました。

これにより、協力会社への連絡業務で発生していた事務作業が削減され、問題点の見逃しや理解の食い違いなどが発生するリスクが解消されます。結果として、正確で迅速な情報のやり取りが実現されています。

スマートフォン版Webアプリの導入と同時に、管理用PC版Webアプリと施工管理担当者が使用するiPadアプリの構成も最適化され、AR(拡張現実)マーカー配置の自由度向上などの機能改善も実施されています。

大幅な業務効率向上を実現

改良されたholonicaを使用した検査業務では、従来の検査方法と比較して検査業務の約25%の省力化を達成しました。この効果は、修正指示内容の整理と発行、さらに指示内容の伝達や修正完了時の報告にかかる時間を約90%削減できていることが主な要因となっており、システムの実用性が証明されています。

建設現場によっては事務所が工事現場から離れた場所に設置される場合もあるため、指示内容の伝達や完了報告にかかる移動時間や作業時間のさらなる削減効果も見込まれます。

多様な施工管理業務への応用

holonicaは検査モードからビューモードに設定を切り替えることにより、様々な施工管理業務で利用できます。

具体的な活用例として、コンクリート打設前の現場に打設後のBIMデータを重ね合わせることで、スリーブや開口の位置・個数などを確認できます。また、天井部品の配置確認や汚染土壌掘削時の位置出し作業、鉄骨部材検査や起工式での発注者・設計監理者との完成イメージ共有など、建設現場の幅広い業務をサポートするシステムとして機能しています。

表示機能への切り替えは、アプリ上の1回のボタン操作で切り替え可能で、複雑な準備作業は必要ありません。

今後の取り組み方針

大林組では、holonicaのユーザビリティ向上を目指した開発を継続していく方針です。将来的には大林組以外の建設現場での導入展開を通じて、建設業界全体の生産性向上と品質管理業務の効率化に貢献することを目指しています。

同社は2021年4月に施工現場でBIMデータを重ね合わせるMR施工管理アプリ「holonica™」の開発を発表しており、今回の大幅アップデートはその発展形として位置付けられています。

出典情報

株式会社大林組リリース,MR品質管理システム「holonica®」大幅刷新、協力会社も利用可能に 検査から是正完了確認までデジタル空間で完結、仕上げ検査業務のさらなる効率化を実現,https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20250729_1.html