竹中工務店、次世代バイオディーゼル燃料を導入、2030年CO₂削減目標の達成を後押し

大手建設会社の竹中工務店が、建設現場における二酸化炭素排出削減を目的として、次世代バイオディーゼル燃料の使用を開始しました。同社は2025年7月25日に発表した取り組みにおいて、グループ会社である朝日興産からの燃料供給を受け、東京都内の工事現場を皮切りに全国展開を進める方針を明らかにしています。
次世代バイオディーゼル燃料の特徴
今回採用される次世代バイオディーゼル燃料は、植物由来の油脂や使用済み食用油といった再生可能資源を原料とした環境負荷軽減型の代替燃料です。この燃料は水素化処理植物油(HVO)技術を応用したリニューアブル・ディーゼル燃料として知られており、以下の利点を持っています。
・従来の軽油と比較して二酸化炭素排出量を大幅に抑制
・既存の建設重機エンジンの改良が不要
・重機の性能や操作感に影響を与えない
実用化に向けた検証プロセス
竹中工務店では2023年4月から、大阪・関西万博関連の建設プロジェクトを中心に実証試験を実施してきました。検証対象となった重機は多岐にわたり、具体的には以下の機械で効果が確認されています。
・クローラクレーン
・ラフテレーンクレーン
・運搬用トラック
・フォークリフト
・発電設備
・杭打設機
これらの機械において、エンジン本体および関連システムへの悪影響がないことが実証されたため、朝日興産との連携による安定的な供給体制を整備し、全国規模での展開決定に至りました。
脱炭素目標達成への貢献度
竹中工務店が掲げる「環境戦略2050」では、2050年までのカーボンニュートラル実現を目標としています。同社の工事活動で発生する二酸化炭素の排出構造を分析すると、直接排出であるスコープ1が全体の約75パーセント、電力使用等による間接排出のスコープ2が約25パーセントを占めています。
削減効果の試算結果
竹中グループでは2030年度までにスコープ1における二酸化炭素排出量を2019年度比で32パーセント削減する数値目標を設定しています。軽油から次世代バイオディーゼル燃料への転換により、この32%削減目標のうち約20%分の削減効果が期待できると試算されています。
総合的な環境戦略の推進
同グループでは「スコープ1およびスコープ2を合計した二酸化炭素排出量を2030年度までに46.2パーセント削減する」という包括的な目標を設定しています。この目標達成に向けて、建設工事で使用するエネルギー源のグリーン化を軸とした多面的な取り組みを展開し、持続可能な社会の構築に寄与していく構えです。
パートナー企業の役割
燃料供給を担当する株式会社朝日興産は、1957年に設立された竹中グループの一員で、建設工事業および建設資材の販売を手がけています。本社を大阪市中央区に置き、代表取締役社長は宮本靖雄氏が務めています。
供給体制の構築
朝日興産では次世代バイオディーゼル燃料の安定供給を実現するため、調達から配送までの一貫した体制を整備しています。これにより、全国の建設現場における燃料切り替えを円滑に進めることが可能となります。
建設業界への波及効果
今回の取り組みは、建設業界全体における環境負荷削減の先駆的な事例として注目されています。重機の性能を維持しながら環境負荷を軽減できる技術の実用化は、他の建設会社における同様の取り組み拡大につながる可能性が高いと考えられます。
建設現場では多数の重機が稼働しており、これらの燃料を環境配慮型に切り替えることで、業界全体での二酸化炭素排出削減に大きく貢献することが期待されています。竹中工務店の今回の決定は、建設業界における脱炭素化の流れを加速させる重要な一歩と位置づけられます。
出典情報
株式会社竹中工務店リリース,建設現場への次世代バイオディーゼル燃料導入を開始 CO2排出量削減に向け、全国の建設現場へ順次展開,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/07/05/