竹中工務店、サーキュラー建材の共通評価基準策定、建材選定プラットフォームでの実証・運用へ

株式会社竹中工務店とDesignFuture Japan株式会社は、2025年7月24日、建築プロジェクトでのサーキュラー建材選定を支援する建築業界共通の評価基準を策定したと発表しました。両社は共同で、再利用可能な建築業界共通の評価基準を開発し、「Material Bank Japan」内でのサーキュラー建材検索システムの開発に着手しています。

この新たな評価システムは、限られた天然資源への依存を減らし、使用後も再び活用できる建築材料(サーキュラー建材)の普及を目的としています。2025年6月より竹中工務店の設計者による実証を開始しており、2027年までに「Material Bank Japan」サービスの全会員への機能提供を目指しています。

Material Bank Japanプラットフォームの概要

Material Bank Japanは、200を超えるブランドから約70,000点(2025年7月時点)の建材サンプルを最短翌日に入手できる建材選定プラットフォームです。設計者の会員登録により無料で利用でき、短時間で膨大な選択肢の中から最適な材料を見つけることが可能です。優れたデザインの創出を支援することを目的として運営されています。

循環型建材評価の背景

建築分野においても環境への配慮が重要視される中、2050年のカーボンニュートラル達成に向けた動きが加速しています。2026年4月からは改正資源有効利用促進法の施行も控えています。

従来、建築材料の選定では機能面や外観デザインが重視されてきましたが、現在では環境への影響も考慮することが求められています。二酸化炭素排出量については計算方法が整備されていますが、材料の再利用性や再生原料の含有量といった循環性については、統一された基準が存在しませんでした。

設計者は建材選定において明確な指標がなく、Material Bank Japanの利用者からも共通評価基準の策定を求める声が多数寄せられていました。

共同開発による評価システムの構築

竹中工務店の建築設計分野での専門知識と豊富な建材選定経験、そしてMaterial Bank Japanの膨大な建材データベースとプラットフォーム運営技術を組み合わせ、「サーキュラー建材検索システム」を開発しています。

この検索システムでは、再生原料の使用率や廃棄後の再利用可能性などを数値化し、循環型の建材を効率よく採用したいという顧客ニーズに迅速に応えます。

評価基準の詳細な内容

評価基準は、WBCSD(持続可能な開発のための世界経済人会議)のCTI(循環移行指標)を基礎としています。建材の循環性は2つの主要指標で評価されます。

・サーキュラーインフロー率:建材製造段階での循環型資源の使用割合

・サーキュラーアウトフロー率:廃棄段階での資源再利用割合

この2つの指標から「実質的な循環性」を定量評価できます。両方の数値が高いほど、新たな資源採掘を必要とせず、廃棄物の発生も抑制し、社会全体で資源が循環し続ける可能性が高いことを表します。

評価システムでは、リサイクルの品質も評価対象に含めています。水平リサイクル・アップサイクル・ダウンサイクル・エネルギー回収等、元来のCTI指標では区別されていなかった項目も詳細に分類できるようになっています。

実用化に向けた段階的計画

建材メーカーへのヒアリングを通じて情報収集とデータベース化を進め、評価基準を満たした建材を順次「Material Bank Japan」プラットフォーム内に掲載していきます。

2025年12月より竹中工務店の設計者のみが試験利用可能な「サーキュラー建材検索システム」の試験利用を開始し、段階的に参加者の範囲を拡大します。2027年までにMaterial Bank Japanサービス全体への実装および全会員への機能提供完了を目標としています。

今後はより多くの建材メーカーの協力を得て評価対象を拡大し、本共通評価基準に則って選択できる建材の拡充をする予定です。

業界全体への波及効果

この評価システムにより、設計者は環境配慮型建材の選定において明確な判断基準を得ることができ、建材メーカーも自社製品の環境性能を客観的に示すことが可能になります。竹中工務店の「サーキュラーデザインビルド®」実現が加速され、建設業界全体での循環型経済推進に大きく貢献することが期待されます。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,サーキュラー建材の共通評価基準を策定し、実証・運用へ 建材選定プラットフォームへの機能実装でサーキュラーエコノミーを推進,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/07/04/