竹中工務店、クリーンルーム用天井埋込エアコン開発 天井内メンテナンス実現でコスト20%削減

株式会社竹中工務店(代表取締役社長:佐々木正人)が、クリーンルーム向けの天井埋込形エアコンの開発を発表しました。この新技術は、天井埋込形エアコンでありながら天井内部でのメンテナンスを実現する革新的な仕組みを採用しており、2025年7月23日に正式発表されました。

新開発システムの概要

今回開発されたシステムは、従来は困難とされてきたクリーンルーム内での天井埋込形エアコンのメンテナンス作業を可能にする技術です。エアコン本体の上部に専用の保守用パネルを配置することで、室内環境を維持したまま機器の点検や部品交換が行えるようになりました。

このシステムが対象とするクリーンルームは、空気中の浮遊塵埃が限定された清浄度レベル以下に管理され、温度や湿度も厳格に制御される特殊な環境です。主に半導体製造や精密機械加工、医薬品製造、食品加工などの産業分野で使用されています。

従来技術の限界と課題

これまでのクリーンルーム用空調システムには、いくつかの重要な制約がありました。

床置き式エアコンを採用する場合、専用の機械室や設置エリアの確保が必要となり、貴重な床面積を消費してしまう問題がありました。また、天井内に機器を隠す隠蔽形システムでは、空調用ダクトの配管ルートや保守作業のための十分な作業スペースを天井内に確保する必要があり、建物設計上の制約が大きくなっていました。

一方、天井埋込形エアコンは配管工事の簡素化というメリットがある反面、メンテナンス時には室内からの作業が必要で、特にフィルター交換の際には粉塵が清浄な室内環境に拡散してしまうという深刻な問題を抱えていました。

新技術の特徴と優位性

新開発システムの最大の特徴は、機器上部に設置された専用の保守用パネルです。この機構により、天井内部からの直接アクセスが可能となり、従来は室内からしか行えなかった各種メンテナンス作業を天井内で完結できるようになりました。

対象となる作業には以下のようなものがあります。

・エアフィルターの定期交換作業

・ファン部品の点検および修理

・冷却コイルの清掃と点検

・その他機械部品の保守作業

清浄環境保持機能

埃落下止板を挿入できるようにサイド蓋も設置されており、フィルター交換時に発生する粉塵が室内の清浄環境に影響を与えることを防ぐ設計となっています。これにより、クリーンルームの運転を停止することなく、必要なメンテナンス作業が実施できます。

設置スペースの最適化

天井埋込形エアコンの採用により、従来必要とされていた機械室スペースや天井内のダクト配管スペースが不要となります。この結果、機械のスペースや天井内のダクトスペースの確保が不要となり、空間の有効活用が可能になりました。

経済効果と工期短縮

新開発システムの導入により、従来の天井内隠蔽形システムと比較して以下の効果が確認されています。

・コスト削減効果:1台あたり約20%の費用削減を実現

・工期短縮効果:1台あたり約11時間の施工時間短縮

この数値は、機械本体、配管工事、保温工事、吹出口設置などの材料費および工事費を総合的に比較した結果です。ダクト工事や専用の吹出口、保温材などが不要になることで、大幅なコスト削減と工期短縮が同時に達成されています。

産業界への影響

この技術開発により、クリーンルーム設備の初期投資コストが削減されることで、中小企業や新規参入企業にとってもクリーンルーム設備の導入障壁が低下することが期待されます。また、メンテナンス性の向上により、設備の稼働率向上と運用コストの削減も見込まれます。

特に半導体製造業界や精密機械製造業界においては、設備投資効率の向上により、国際競争力の強化につながる可能性があります。医薬品製造や食品製造分野においても、より効率的で安全性の高い生産環境の構築が促進されることが予想されます。

竹中工務店では、この新技術を活用したクリーンルーム建設プロジェクトの受注拡大を目指しており、建設業界における技術革新の一例として注目を集めています。

出典情報

株式会社竹中工務店リリース,生産施設クリーンルーム向け天井埋込形エアコンを開発 限られた天井内スペースに設置可能なエアコン機構の提案,https://www.takenaka.co.jp/news/2025/07/03/