生成AI援用の最新事例:工事写真の管理を支援する「仕分けAI」+ 設計図書から数量拾い・見積をする「積算AI」|深堀り取材【毎月15日・月末更新】

建設業界における生成AIの普及には目を見張るものがあり、その適応範囲も急速に広がりをみせている。本稿では、膨大な工事写真の整理、処理に難題を抱えている施工現場をAI技術で支援する「仕分けAI」、設計図書をAIが解析して数量拾い・見積を完了する「積算AI」について報告する。
目次
蓄積した12億枚超の工事写真を解析+約1,500種類の仕分けパターンを認識し「仕分けAI」を開発
ルクレ(港区・有馬弘進: 代表取締役)では、「デザイン×アイデア×ITですべての人を次の世界へ」をミッションとして掲げる中で、工事写真を自動で適切に仕分けるAI技術「仕分けAI」を開発し公開した。
1999年の「蔵衛門」サービスの開始以来、26年間に渡り蓄積した12億枚超の工事写真を解析し、約1,500種類の仕分けパターンを認識し援用する。本技術を建設DXプラットフォーム「蔵衛門」の「台帳ビュー」機能に搭載し、最適な仕分け方法での写真整理・台帳作成を自動化する。「蔵衛門」は、ルクレの登録商標。

「仕分けAI」は、電子小黒板の有無に関わらず、写真の仕分けから台帳作成までを自動化する。これによって属人的な経験に頼ることなく、誰でも写真整理ができ、仕分け作業が一瞬で完了する。加えてユーザーの仕分け傾向を学習してパーソナライズされた仕分けにも対応している。
台帳は「蔵衛門」の「台帳ビュー」機能によって工事関係者にクラウドで共有され、従来のように紙に印刷することなく、台帳の納品イメージをどこにいてもリアルタイムに確認することができる。合わせて紙の台帳をそのままブラウザ上で再現した「蔵衛門」ならではの直感的なユーザーインターフェイスで、誰もが迷わず利用できるサービスを実現している。
鉄筋コンクリート工事用の電子小黒板自動作成AI+計測箇所の寸法を判定する工事写真管理AIも開発
ルクレが開発・提供するAI技術を詳細にみてみよう。
鉄筋コンクリート工事用の電子小黒板自動作成AI「e-Kokuban」(特許番号:6989884)は、配筋リスト(PDF)から必要な豆図・テキスト項目を自動的に判断して電子小黒板を作成する技術である。
計測箇所の寸法を判定する工事写真管理AI(特許番号:7402458)は、出来形管理等の工事写真から標尺を自動認識し、計測箇所の寸法を精度高く抽出・表示する技術となっている。
日本の子どもの写真に特化した顔認識AI「うちの子AI」は、大手クラウドサービスのエンジンでは解決できなかった日本の子どもの顔認識に特化したAI技術で、スクール写真販売システム「みんなの写真屋さん」に搭載、他社システムにも提供している。

小規模現場では数百枚・大規模現場では数万枚も処理する工事写真業務をAIで省人・省力化
本技術開発の背景を探る。建設業では、現場で働くノンデスクワーカーの深刻な人手不足と人件費の高騰を背景に、省人化・省力化が急務となっている。現場では、工事写真を小規模な工事でも数百枚、大規模な工事では数万枚も撮影している。更に工種や場所など様々な項目で細かく写真を仕分けて台帳を作成し、発注者に提出することが必要なため、工事写真業務は依然として大きな負担となっている。
ルクレでは、これらの課題を解決するため、26年間に渡り蓄積した12億枚超の工事写真データを学習し、約1,500種類の仕分けパターンを生成、写真を撮影すると自動的に最適な仕分け方法を適用するAI技術を開発した。本技術は特許出願中である。
1999年に発売した台帳作成ソフト「蔵衛門御用達」によって、写真管理に忙殺される現場監督の負担を軽減することに貢献し、大手ゼネコンから小規模工務店にまで導入されている。建設業界が業務効率化のために推奨する「電子小黒板」をデジタルカメラに代わる電子小黒板タブレットとして「蔵衛門Pad」を2014年に発売、国土交通省が定めるNETIS(New Technology Information System:新技術情報提供システム)において最高評価を獲得している。
多様な設計図書をAIが解析して数量拾い・見積を完了するカスタマイズ型の「積算AI」を開発
KK Generation(港区・藤田浩之介: 代表)では、設計図書をAIが解析して数量拾い・見積を完了するカスタマイズ型AI SaaSである「積算AI」を開発し、「積算AI」を活用した内装自動積算デモをリリースした。これによって業務時間の大幅削減、精度の向上等に寄与し、建設業界の人手不足解決にも貢献していく。
KK Generationは、独自AI技術に基づく「建設図面×AI」に特化したスタートアップ企業。「積算AI」は、昨年末の公開以来、建設業界の企業を中心に20社で活用、高い評価を受けている。
人手に頼る煩雑な拾い作業をAIが代替することで業務時間の大幅削減・精度の向上を実現
「積算AI」の内装自動積算では、建設現場で使用される複数種類の設計図書(平面図・キープラン図・建具表・仕上げ表など)を横断的にAIエージェントが解析し、部屋別・部材別の数量を自動で集計する。従来、人手によって行われていた煩雑な拾い作業をAIが代替することで、業務時間の大幅削減、精度の向上、属人性の排除を同時に実現し、建設業界の人手不足などの社会課題解決にも貢献する。
より具体的には、操作は図面をアップするだけの完全自動化を実現しており、テキスト・図形を統合的に高精度で認識する。顧客企業の積算業務(図面フォーマットや拾い対象・ルール・業務フロー)に合わせて最適化するカスタマイズ性を有しており、内装一式の他、外装・構造・設備・外構・仮設などにも対応可能である。
処理の流れをみてみよう。平面図からは、部屋領域を自動で検出し、床面積や壁長を算出、キープラン図からは、建具(ドア・窓など)の位置を自動認識する。次いで仕上げ表からは、仕上げ材の種類をAIが取得し、部材別の施工範囲を自動で算出、各部屋・部材ごとの数量をExcelテンプレートなどで出力する。
