【2025年最新版】透水性コンクリートとは?駐車場・施工方法・メリット・デメリットまでプロが解説

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著者:上野 海

「駐車場にできる水たまりに困っている」
「歩道が滑りやすくて危ないと感じたことがある」

そんな悩みを解決するのが、今注目を集めている「透水性コンクリート」です。

この記事では、透水性コンクリートの仕組みやメリット・デメリット、施工費用、目詰まり対策、そしてDIYに使えるホームセンター製品にいたるまで、プロの視点でわかりやすく解説していきます。

透水性コンクリートとは?

透水性コンクリートとは、雨水をそのまま地面へ通す性質を持つ特殊なコンクリートです。

ポーラス構造(空隙率15〜25%)であるほか、骨材(砕石)+結合剤で構成され、砂を含まないつくりとなっています。たとえば、次のようなシーンで活用されています。

  • 戸建て住宅の駐車場・アプローチ
  • 公園・歩道・サイクリングロード
  • 学校・商業施設の外構
  • 災害対策を重視する公共施設

その名の通り「水を通す」ことが最大の特長で、都市部の水害対策や環境対策の一環として、近年導入が進んでいます。また、アスファルトや通常のコンクリートのように水をはじくのではなく、表面から雨水を吸収し、下層に透過させる構造になっているため、水たまりの発生を防止できるのが魅力です。

加えて、施工準備を簡素化できるドライコンクリートについて興味がある方は、以下の記事もチェックしてみてください。

通常のコンクリートとの違い

透水性コンクリートと通常のコンクリートには、構造・機能・使用目的の3点で明確な違いがあります。

項目透水性コンクリート通常のコンクリート
水の通り道多孔質(水が通る)緻密(防水性が高い)
材料構成砂なし+粗骨材+セメント砂+骨材+セメント
水はけ性高い(即浸透)低い(表面に水が残る)
主な用途外構・歩道・駐車場など基礎・壁・スラブなど

なお注意すべきなのが、「透水性=万能」ではないという点です。水を通す構造であるがゆえに、強度や凍害リスク、施工時の気象条件などに配慮しなければなりません。目的や場所によって使い分けることが重要になります。

また、モルタル・コンクリート・セメントの違いを知りたい方は、以下の記事もチェックしてみてください。

なぜ今、透水性コンクリートが注目されているのか

現在、透水性コンクリートの需要が高まっているのは、次の地球環境の問題がかかわっています。

  • ゲリラ豪雨・都市型水害の増加
  • ヒートアイランド対策・環境への配慮
  • 脱炭素・SDGsを意識した建材ニーズ

上記3つの要素には、それぞれ地球温暖化問題が影響しており、なかでもひんぱんに発生するゲリラ豪雨は、洪水や雨水の滞水といった問題を慢性的に引き起こしている状況です。

参考:気象庁「大雨や猛暑日など(極端現象)のこれまでの変化」

そのため、透水性コンクリートは自然排水を促進し人工排水設備を最小限に抑えるという観点から、評価を集めています。企業や行政の調達基準においても、透水性・保水性などを持つ舗装材の導入がポイント化されるケースが増え、将来的にはより普及が進むことが見込まれます。

透水性コンクリートのメリット・デメリット

透水性コンクリートは、従来の舗装材とは異なる独自の性質を持つ建材です。環境面での評価が高まる一方で、使用場所やメンテナンス方法を誤ると問題も発生します。

ここでは、透水性コンクリートの代表的なメリットとデメリットを整理し、導入の判断材料としてご紹介します。

メリット|環境負荷低減・水はけ改善・都市景観

透水性コンクリートは「雨水を地中に戻す仕組み」により、環境負荷を抑えながら、都市景観の向上にも貢献できる優れた舗装材です。

一般的な舗装では、雨水がそのまま排水溝に流れ、都市の排水システムに負担をかけますが、透水性コンクリートは雨水を直接地中へ浸透させることで、自然本来の水循環を再現します。そして、この性質により、次のようなメリットを期待できます。

  • 水たまりを防ぎ、歩行性を確保できる
  • 都市型水害の抑制しやすくなる
  • ヒートアイランド現象を軽減できる
  • 景観の向上と多様なデザイン性を維持できる

なお、実際に東京都では、透水性コンクリートパネルの導入がスタートしました。また、佐賀県などにも導入の波が来ていることから、今後、全国的な導入に進むのも時間の問題だと言えるでしょう。

(参考:PRTIMES『透水コンクリートパネル「Dotcon」が東京都「雨水しみこみアンバサダー」に認定!』

デメリット|単価・耐久性・補修性・目詰まり

透水性コンクリートは、多機能で環境性能に優れた建材ですが、コスト・耐久性・目詰まりリスクなどのデメリットも無視できません。以下に主なデメリットを整理しました。

  • 単価が高い(材料+施工費)
  • 耐久性が低い・ひび割れリスクがある
  • 補修性が低く、部分修繕が難しい
  • 目詰まりによる透水性能の低下の恐れがある

透水性コンクリートは万能ではなく、使用条件や維持管理の手間を含めて検討するべき素材です。特に「強度・コスト・目詰まり」の3点を理解し、用途に合った選定を行うことが選定の失敗を防ぎます。

使用に向いているケース・向いていないケース

透水性コンクリートは「適材適所」で選定することが重要です。すべての場所に最適なわけではなく、用途・立地条件・利用頻度などによって向き・不向きがあります。参考として以下に、向いているケース・向いていないケースを整理しました。

【使用に向いているケース】

利用シーン理由・利点
一般住宅のアプローチ水たまり防止、靴が汚れにくい、見た目もおしゃれ
戸建て住宅の軽自動車用駐車場軽量車両であれば強度的に問題なく施工可能
公園・散策路・歩道自然景観に調和し、雨天時も足元が快適
学校・公共施設の外構安全性+ヒートアイランド抑制の観点で有効
商業施設のアプローチ美観と機能性を両立、着色施工で演出力も◎

なお、向いているシーンについて詳しくは、国土交通省が公開している「構内舗装・排水設計基準(平成27年制定)」にもとづいて対応しなければなりません。

【使用に向いていないケース】

利用シーン理由・懸念点
大型車が頻繁に出入りする駐車場圧縮強度が足りず、ひび割れや沈下のリスクが高まる
倉庫や工場など荷重が集中する場所一体構造のため補修が難しく、経済的にも非効率
落葉の多い樹木周辺目詰まりを起こしやすく、頻繁な清掃が必要になる
寒冷地(積雪・凍結地域)凍害によって内部から崩壊する恐れあり。凍結融解対策が不可欠

透水性コンクリートは「どこでも使える材料」ではありません。

歩行者向けエリアや軽車両向け外構には最適ですが、荷重・凍結・落ち葉リスクのある場所では注意が必要です。

費用相場・単価|一般住宅と業務用でどう違う?

透水性コンクリートを施工する際には、通常のコンクリートと比較してどれくらいの価格差があるのかを把握しておくことが重要です。

ここでは、m²単価の相場や施工条件による違い、住宅用と業務用の費用構造の違いを具体的に解説します。

透水性コンクリートの㎡単価・比較表(通常との違い)

透水性コンクリートの施工単価は、通常の土間コンクリートに比べて1.3倍〜1.5倍程度高いのが一般的です。以下に、㎡あたりの単価を整理しました。

種類単価の目安
(1㎡あたり)
特徴
通常の土間コンクリート約6,000〜9,000円汎用性が高く広く使用される
透水性コンクリート(住宅)約10,000〜13,000円見た目・機能性重視
透水性コンクリート(業務用)約12,000〜16,000円耐荷重・面積・仕上げ品質が影響

※メーカー等の情報をもとに目安を算出しています

金額差が出る理由としては、以下のような材料・技術・工程の違いが挙げられます。

  • 施工面積が狭いほど割高になりやすい(施工準備にコストがかかるため)
  • 業務用は表面処理や骨材選定が高品質なため、費用がさらに上昇する
  • 自治体案件では吸水量試験・強度試験等が求められることもありコスト加算される

施工価格は地域差・施工業者・面積・下地条件によって変動するため、正確な見積もりを得るためには事前相談が不可欠です。

特に住宅用では「美観+機能性」を重視した選定が多く、費用に見合う価値があるかどうかを、施工目的と優先順位によって判断する必要があります。

材料費・施工費の内訳

透水性コンクリートの費用構成は「材料費」「施工費」で約半々を占めます。特に、材料の特殊性と施工技術の高さが、価格上昇の要因となっています。

参考として以下に、透水性コンクリートの費用の内訳の一例を整理しました。

【材料費の内訳】

項目費用目安備考
セメント約1,000〜1,500円耐久性・品質重視のプレミックス使用
粗骨材(砕石等)約800〜1,200円骨材の大きさが透水性能に影響
繊維補強材(オプション)約300〜500円クラック対策として使用されることも
その他添加剤約200〜400円粘性調整・水分コントロール目的

※メーカー等の情報をもとに目安を算出しています

【施工費の内訳】

項目費用目安備考
現場搬入・混練・打設約3,000〜4,500円機械使用+人力による転圧作業
表面仕上げ・レベリング約1,000〜1,500円均一な透水性能を得るための重要工程
養生・硬化・目詰まり防止対策約800〜1,200円施工後の性能維持に必要

※メーカー等の情報をもとに目安を算出しています

施工費は「ただの人件費」ではなく、透水性を維持するための調整・仕上げ・養生などに時間と技術に関わる工程が含まれている点に注意してください。

よくある質問(FAQ)

ホームセンターで購入できる透水性コンクリートは信頼できますか?

市販されている透水性コンクリート材も、一定の性能を備えています。特にカインズなどではDIY向けに調整された製品が販売されており、施工マニュアルも充実しています。ただし、強度や耐久性はプロ施工品に劣るケースがあるため、用途を選んで使用することが大切です。

目詰まりしたらどうすればいい?

軽度な目詰まりであれば、高圧洗浄機や吸引機を使って異物を除去することで改善できます。重度の詰まりや長期間放置した場合は、専門業者による水圧+吸引清掃や薬剤処理が必要になることもあります。定期清掃を怠らなければ、透水機能の維持は十分可能です。

自宅のアプローチには向いていますか?

透水性コンクリートは住宅のアプローチや外構に最適です。水はけが良く、靴底や車輪が汚れにくいため、バリアフリー設計とも相性が良好です。見た目もナチュラルな仕上がりで景観性が高く、雨の日の滑りやすさも抑えられます。軽車両や歩行が中心の場所には特におすすめです。

駐車場に透水性コンクリートは使えますか?

軽〜中型車程度の駐車場であれば使用可能です。施工前に地盤を締め固め、車輪の荷重が集中する箇所に補強材や高強度骨材を使うことで耐久性を確保できます。大型車や頻繁な出入りがある場所では、通常コンクリートとの併用や部分施工も検討するとよいでしょう。

まとめ

透水性コンクリートは、水はけ・景観・環境性を兼ね備えた優れた舗装材です。

デメリットであるコストや目詰まりも、正しい施工とメンテナンスによって十分カバーできます。なお、住宅のアプローチや駐車場に導入する場合は、使用環境に合った設計と清掃体制の確保が長持ちの秘訣です。用途と予算を考慮して、後悔のない材料選びをスタートしましょう。