国土交通省発表、住宅性能表示制度が9年連続で拡大、設計評価書の交付割合34.2%で過去最高

国土交通省住宅局住宅生産課が令和7年6月27日に発表したデータによると、令和6年度の住宅性能表示制度における新設住宅着工戸数に対する設計住宅性能評価書の交付割合が34.2%に達し、過去最高を記録しました。この数字は9年間にわたって連続的に上昇を続けており、住宅購入者の品質への意識が着実に高まっていることを示しています。
制度の基本的な仕組みとは
住宅性能表示制度は、住宅の品質を客観的に判断するための全国統一基準として機能しています。この制度では、国が策定した共通の評価基準に基づき、登録を受けた住宅性能評価機関が専門的な審査を実施します。
評価の結果は、住宅性能評価書という形で文書化され、住宅の性能が等級や評価項目ごとに明示されます。これにより、住宅購入者は物件の性能を具体的に比較検討することが可能になります。
評価書の3つの種類と特徴
住宅性能評価書は、評価を行う段階によって以下の3種類に分類されています。
■設計段階での評価
設計図書を基にした審査により作成される「設計住宅性能評価書」では、建築予定の住宅が設計上どの程度の性能を持つかが評価されます。建築前の段階で性能を確認できるため、住宅購入の判断材料として重要な役割を果たします。
■新築住宅の施工・完成段階での評価
実際の建築工事中と完成時の検査に基づいて発行される「建設住宅性能評価書(新築住宅)」は、設計通りに建築が行われているかを確認します。設計段階の評価と併せて取得することで、計画から完成まで一貫した品質管理が実現されます。
■既存住宅の現状評価
すでに建築されている住宅を対象とした「建設住宅性能評価書(既存住宅)」では、現在の住宅状況を詳細に調査・評価します。中古住宅の購入や改修計画の立案時に活用されています。
設計住宅性能評価書の交付状況
令和6年度における新設住宅着工戸数816,018戸のうち、279,010戸が設計住宅性能評価書の交付を受けました。これは前年度と比較して6.3%の増加となり、交付割合34.2%という過去最高の数値を記録しています。
この結果は、新築住宅を建築する約3軒に1軒が住宅性能表示制度を利用していることを意味しており、制度の普及が確実に進展していることが確認できます。
その他の評価書交付実績
建設住宅性能評価書(新築住宅)については191,091戸の交付となり、前年度比で4.1%の減少となりました。一方、建設住宅性能評価書(既存住宅)は172戸の交付で、前年度比23.6%の減少という結果でした。
新築住宅の建設段階評価書の減少の背景には、建築業界の動向や経済状況などの影響がある可能性も考えられますが、設計段階での評価は堅調な伸びを示しており、制度への信頼度は高まっているといえます。
制度普及の背景と今後の展望
住宅性能表示制度の利用拡大は、住宅購入者の品質重視傾向の表れと考えられます。住宅は人生最大の買い物の一つであり、長期間にわたって家族の生活基盤となるものです。そのため、客観的な性能評価に基づいた住宅選択への関心が高まっているのは自然な流れといえるでしょう。
また、住宅ローンの優遇制度や保険料の割引など、住宅性能評価書を取得することで得られる経済的メリットも、制度利用の増加に寄与していると推測されます。
今回の実績は、住宅の品質向上と消費者保護の観点から、住宅性能表示制度が着実に社会に根付いていることを示す重要な指標となっています。
出典情報
国土交通省リリース,新築住宅の3戸に1戸が住宅性能表示制度を活用!~交付割合は9年連続増加で過去最高~,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001896899.pdf