国土交通省発表、4月新設住宅着工26.6%減、5万6188戸で3カ月ぶり減少

国土交通省が5月30日に発表した建築着工統計調査報告によると、令和7年4月の新設住宅着工戸数は5万6188戸となり、前年同月と比べて26.6%の大幅な減少となりました。

住宅着工戸数が3カ月ぶりに減少転換

令和7年4月の住宅建設状況を見ると、持家、貸家、分譲住宅のすべての分野で減少が見られ、住宅市場全体の冷え込みが鮮明となりました。

■主要指標の概要

・新設住宅着工戸数:5万6188戸(前年同月比26.6%減)

・着工床面積:417万7000平方メートル(同27.6%減)

・季節調整済年率換算値:62万6000戸(前月比42.0%減)

これらの数値は、いずれも3カ月ぶりの減少となっており、住宅建設業界にとって厳しい状況を示しています。

利用目的別に見る住宅着工動向

持家部門では1万3635戸の着工となり、前年同月比で23.7%減少しました。これは前月の増加から一転しての減少となりました。

内訳を詳しく見ると

・民間資金による持家:1万2362戸(前年同月比24.4%減)

・公的資金による持家:1273戸(同16.5%減)

民間資金、公的資金ともに減少しており、個人の住宅建設意欲の低下が懸念される状況となっています。

貸家部門も3カ月ぶりの減少

賃貸住宅の建設を示す貸家部門は2万4939戸となり、前年同月比27.9%の減少となりました。

・民間資金による貸家:2万2205戸(前年同月比30.8%減)

・公的資金による貸家:2734戸(同8.1%増)

公的資金による貸家建設は7カ月連続で増加しているものの、民間投資による賃貸住宅建設の大幅な減少により、全体としては減少傾向が続いています。

分譲住宅は3カ月ぶりの落ち込み

分譲住宅部門は1万6148戸の着工となり、前年同月比29.7%の大幅減少となりました。

マンション・一戸建て別の状況

・マンション:7709戸(前年同月比36.9%減、4カ月ぶりの減少)

・一戸建て住宅:8169戸(同22.8%減、前月の増加から再び減少)

分譲マンション、一戸建て住宅ともに減少しており、住宅購入需要の冷え込みが顕著に表れています。

地域別着工状況

■首都圏(前年同月比22.6%減)

・持家:18.6%減

・貸家:10.7%減

・分譲住宅:38.0%減

■中部圏(前年同月比36.2%減)

・持家:27.0%減

・貸家:53.0%減

・分譲住宅:21.6%減

■近畿圏(前年同月比25.7%減)

・持家:22.9%減

・貸家:29.1%減

・分譲住宅:22.2%減

全国の主要都市圏において軒並み減少しており、都市部の住宅需要低迷が全国的な傾向となっています。

建築工法別の特徴

建築工法別では、プレハブ工法とツーバイフォー工法の両方で減少が見られました。

・プレハブ工法:6238戸(前年同月比20.5%減)

・ツーバイフォー工法:4839戸(前年同月比46.6%減)

特にツーバイフォー工法の減少率が大きく、海外由来の建築工法への需要が大きく落ち込んでいることが判明しました。

非居住建築物の状況

住宅以外の建築物についても言及すると、民間非居住建築物の着工床面積は361万平方メートルとなり、前年同月比1.6%の増加となりました。

■主な用途別動向

・事務所:38万平方メートル(前年同月比14.3%減)

・店舗:40万平方メートル(同24.2%減)

・工場:64万平方メートル(同20.8%減)

・倉庫:53万平方メートル(同21.3%減)

一方で注目すべきは、宿泊業・飲食サービス業用の建築物が82万平方メートルと前年同月比324.8%の大幅増加を記録したことです。これは観光業界の回復を反映した動きと考えられます。

市場への影響と今後の見通し

今回の統計結果は、住宅市場全般における調整局面の継続を示しています。特に以下の要因が影響していると考えられます。

・建築資材価格の高騰継続

・金利動向への警戒感

・経済情勢の不透明感

・人口減少に伴う住宅需要の構造的変化

季節調整済年率換算値が62万6000戸と前月比42.0%の大幅減少となったことは、一時的な変動を超えた構造的な需要低下の可能性を示唆しています。

住宅建設業界の現状と課題

令和7年4月の建築着工統計は、新設住宅着工戸数の大幅減少により、住宅建設業界が困難な局面にあることを明確に示しました。持家、貸家、分譲住宅のすべての分野で減少が見られ、地域別でも全国的な減少傾向が確認されました。

今後の住宅市場動向については、経済政策の効果や金利環境の変化、さらには人口動態の影響など、多角的な要因を注視していく必要があります。住宅産業関係者にとっては、市場環境の変化に適応した戦略の見直しが求められる重要な転換点となっています。

出典情報

国土交通省リリース,建築着工統計調査報告(令和 7 年 4 月分)について,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha704.pdf