大成建設が全国初取得、環境省「自然共生サイト支援証明書」蒜山高原での保全活動が評価され認定

大成建設株式会社(社長:相川善郎)が、岡山県真庭市の「蒜山高原鳩ヶ原草原及び周辺湿原」における自然保全活動への支援が認められ、環境省から「自然共生サイトに係る支援証明書(試行版)」を全国で初めて認定された11件のうちの1つとして取得しました。この取り組みは、蒜山自然再生協議会(会長:日置佳之)との連携により実現したものです。

世界規模で高まる生物多様性保全の重要性

近年、生物多様性の保全は国際社会における重要な課題として位置づけられています。2022年に開催された生物多様性条約第15回締約国会議(COP15)では、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」が採択されました。この枠組みでは「ネイチャーポジティブ」という概念が提示され、自然の損失を食い止めて回復に向かわせることが、世界共通の目標として設定されています。

日本国内でも、この国際的な目標の達成に向けた具体的な施策が展開されています。その一環として「30by30」という取り組みが推進されており、2030年までに国土の30%を自然環境として保全することを目指しています。この目標達成のため、「自然共生サイト」という新たな仕組みが整備され、運用が開始されています。

大成建設の環境保全への取り組み

同社では、グループ長期環境目標「TAISEI Green Target 2050」に基づき、ネイチャーポジティブの実現に向けた様々な活動を展開しています。今年3月には、同社グループが運営する「軽井沢高原ゴルフ倶楽部」が環境省から「自然共生サイト」として認定を受けました。

さらに、自然環境の保全に取り組む地域の団体や企業との連携を強化し、保全活動への支援を積極的に行っています。これらの活動は、持続可能な社会の実現に向けた同社の姿勢を示すものといえるでしょう。

蒜山での具体的な支援活動内容

今回評価された「蒜山高原鳩ヶ原草原及び周辺湿原」での支援活動では、以下のような実践的な取り組みが実施されました。

・湿地のモニタリング技術等の提供

・山焼きに関する人材支援

・草原や湿原などの環境調査

・茅場の保全を目的とした活動支援

これらの多岐にわたる支援活動が総合的に評価され、環境省から「自然共生サイトに係る支援証明書(試行版)」を取得しました。この証明書は全国で初めて認定された11件のうちの1つとなり、同社の取り組みの先進性を物語っています。

長期的な連携協定による継続的な保全活動

大成建設は蒜山自然再生協議会と2030年度までの7年間にわたる連携協定を締結しています。この協定に基づき、草原や湿原に生息する希少な動植物の再生と保全を目的とした環境調査を継続的に実施します。また、茅の利用促進のための茅場保全や山焼き支援なども長期にわたって行う予定です。

これらの活動は単発的なものではなく、継続性を重視した取り組みとして計画されており、地域の自然環境保全に対する同社の本格的な関与を示しています。

新たな社会システム構築への挑戦

同社では、蒜山での活動を通じて保全・創出された草原や湿原について、生息・生育地サービスの価値を定量的に評価する取り組みも進めています。この評価結果をもとに、生物多様性のオフセット・クレジット化等を地域経済に組み込む新たな社会システムの構築を目指しています。

このような取り組みは、環境保全活動を経済的な価値として評価し、持続可能な仕組みとして定着させることを目的としています。地域経済の活性化と環境保全の両立を図る画期的な試みといえるでしょう。

今後の展望と社会への貢献

大成建設は今後も地域との連携を深めながら、自然環境の保全と再生活動を継続していく方針を示しています。これらの取り組みを通じて、ネイチャーポジティブの実現と持続可能な社会の構築に貢献していくとしています。

同社の今回の取り組みは、企業が地域の自然保全活動にどのように関わることができるかを示す先駆的な事例として注目されています。環境省からの全国初の認定は、このような企業と地域の連携による自然保全活動が今後さらに広がっていくことを期待させるものです。

用語解説

・自然共生サイト:国が認定する民間の取組等によって生物多様性の保全が図られている区域のことです。

・ネイチャーポジティブ:生物多様性の損失を止めて反転させ、自然を回復軌道に乗せるという概念で、2022年のCOP15で提示されました。

・30by30:2030年までに自国の陸域・海域の少なくとも30%を保全・保護することを目指す国際的な目標です。

・生息・生育地サービス:様々な生態系を利用する生物に生息・生育環境を提供し、生物多様性の遺伝的多様性を維持する自然の恩恵のことです。

・生物多様性のオフセット・クレジット化:人間活動で損なわれる環境価値を評価し、それに見合う新たな環境を創出することで損失分を代償する手法と、その成果を金銭的に評価して取引可能にすることです。

出典情報

大成建設株式会社リリース,蒜山(ひるぜん)自然再生協議会への支援活動により環境省「自然共生サイトに係る支援証明書(試行版)」を全国で初めて取得,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250529_10475.html