大成建設、CO2吸収コンクリートの現場施工を国内初実証、阪神高速で中央分離帯構築

大成建設(社長:相川善郎)が、阪神高速道路株式会社との共同研究による試験施工において、国内初の場所打ち施工を実現しました。阪神高速道路14号松原線の喜連瓜破-三宅間の一部区間で、二酸化炭素排出量を実質マイナスにする「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」という特殊なコンクリートを使用した現場施工を、国内で初めて実現したのです。

この技術により構築された中央分離帯を従来と同様の手順で場所打ち施工できることが確認され、移動式の製造プラントを活用し、現場で製造・施工を実施しました。

カーボンネガティブを実現する新技術の仕組み

2021年に大成建設が開発した「T-eConcrete/Carbon-Recycle」は、従来のセメントに代わって高炉スラグを使用し、さらに大気中の二酸化炭素を取り込んで作られた炭酸カルシウムを配合することで、コンクリート内部に二酸化炭素を固定化する技術です。この結果、材料製造時に発生する二酸化炭素排出量を上回る量の二酸化炭素を吸収・固定することができ、CO2排出量収支がマイナスとなるカーボンネガティブを実現可能にしました。

これまでこの技術は工場で製造されるプレキャスト製品にのみ適用されていましたが、今回の試験により、一般的なコンクリートと同じ方法で現場施工が可能であることが実証されました。この成果により、脱炭素社会の実現に向けた建設業界の取り組みがさらに加速することが期待されています。

厳しい条件下での施工実証

今回の試験施工は、2024年7月18日という気温が30度を超える真夏の厳しい条件下で実施されました。暑中コンクリートとしての適切な品質管理と施工管理を行いながら、阪神高速道路の中央分離帯約10メートル区間に5.2立方メートルのコンクリートを打設しました。

施工後には継続的な品質監視と耐久性評価試験を実施し、長期間にわたる性能確認も開始しています。これらの取り組みにより、新技術の信頼性と実用性が確認されています。

優れた環境効果と構造性能を両立

今回の現場施工において、「T-eConcrete/Carbon-Recycle」は1立方メートルあたり294キログラムの二酸化炭素削減を実現しました。従来の普通コンクリートの場合、1立方メートルあたり274キログラムの二酸化炭素が排出されますが、この新技術では逆に20キログラムの二酸化炭素を吸収・固定することができ、真のカーボンネガティブを達成しています。

設計基準を上回る強度性能

構造物としての性能面でも優秀な結果を示しています。設計基準強度27N/mm²に対して、実際の圧縮強度は30.8N/mm²を記録し、設計値を大きく上回る強度を確保しました。

耐久性の確保

施工完了から1か月後と3か月後に実施した表層透気試験(トレント法)により、コンクリート表層部の品質が良好であることが確認されています。この結果は、長期間にわたる耐久性の保持が期待できることを示しています。

業界からの高い評価

この革新的な取り組みは、建設リサイクル推進の模範的事例として高く評価され、令和6年度近畿建設リサイクル表彰において「再使用・再生利用部門 奨励賞」を受賞しました。環境負荷削減と構造性能の両立を実現した点が特に評価されています。

今後の展開と社会への貢献

大成建設では、この「T-eConcrete/Carbon-Recycle」技術のさらなる開発と実用化を継続し、公共インフラをはじめとする様々な構造物への適用拡大を進めていく方針です。現場施工での適用が可能になったことで、従来のプレキャスト製品に限定されていた適用範囲が大幅に拡大され、建設業界全体の脱炭素化に大きく貢献することが期待されています。

この技術の普及により、将来的には道路、橋梁、建築物など、あらゆる建設分野でカーボンネガティブなコンクリートの使用が可能になり、持続可能な社会の実現に向けた重要な一歩となるでしょう。

出典情報

大成建設株式会社リリース,「T-eConcrete®/Carbon-Recycle」を高速道路構造物の場所打ち施工に国内初適用-阪神高速道路にて中央分離帯を打設・構築し、モニタリングを実施-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250522_10471.html