国土交通省発表、令和6年度新設住宅着工が3年ぶり増加、持家と賃貸住宅の回復が全体を牽引

国土交通省が発表した最新の建築着工統計によると、令和6年度の新設住宅着工数は81万6,018戸となり、前年度と比較して2.0%の増加を記録しました。この結果は、令和3年度以来3年ぶりとなる上昇トレンドを示しています。
住宅建設における各分野の動向を詳しく見ると、持家部門と賃貸住宅部門が成長を牽引した一方で、分譲住宅については減少が継続している状況が明らかになりました。
住宅種別による建設状況の詳細分析
■持家建設の復調傾向
個人住宅の建設を示す持家部門では、22万3,079戸の建設実績を達成しました。前年度からの伸び率は1.6%となり、3年ぶりの回復基調を示しています。この数値は、個人の住宅取得意欲が徐々に回復していることを示唆する重要な指標です。
■賃貸住宅市場の活況
アパートやマンションなどの賃貸住宅分野においては、35万6,893戸という高い建設戸数を記録しました。この実績は前年度比4.8%増となっており、昨年度の落ち込みから見事な回復を遂げています。
賃貸住宅需要の増加背景には、都市部における人口集中や単身世帯の増加、住宅購入よりも賃貸を選択する層の拡大などが考えられます。
分譲住宅の二極化現象
分譲住宅部門の総建設戸数は22万9,440戸となり、前年度比2.4%の減少となりました。これで2年連続の下落となっています。
しかし、分譲住宅内でも明確な二極化現象が見られます。
■マンション分野の好調
・分譲マンションは10万5,227戸で前年度比5.0%増
・昨年度の減少から一転して増加に転じる
■一戸建て分譲の不振
・分譲一戸建ては12万2,319戸で前年度比8.5%減
・2年連続の減少傾向が継続
地域別住宅建設の動向
■首都圏の緩やかな回復傾向
首都圏全体では前年度比1.6%の増加を示しました。内訳を見ると以下の通りです。
・持家:0.8%減と微減
・賃貸住宅:3.3%増で堅調
・分譲住宅:0.2%増でほぼ横ばい
首都圏のマンション建設は11.2%増と大幅な伸びを見せた一方、一戸建て分譲は9.9%減となり、都市部における住宅需要の変化が顕著に表れています。
■中部圏の調整局面
中部圏では前年度比2.7%減となり、やや調整色が強まっています。
・持家:2.6%増で堅調
・賃貸住宅:4.1%減で軟調
・分譲住宅:11.1%減で大幅な落ち込み
特に分譲マンションは17.7%減と大きく落ち込んでおり、地域経済の影響が住宅市場にも波及していることがうかがえます。
■近畿圏の力強い回復
近畿圏は前年度比8.6%増と、全地域の中で最も高い成長率を記録しました。
・持家:2.8%増
・賃貸住宅:14.4%増で大幅増
・分譲住宅:5.6%増で好調
近畿圏のマンション建設は16.1%増と大きく伸長しており、関西経済の回復基調を反映した結果となっています。
■その他地域の底堅い成長
その他の地域全体では0.9%増となりました。
・持家:2.0%増で安定
・賃貸住宅:4.3%増で堅調
・分譲住宅:8.4%減で調整継続
建築工法別の特徴的動向
■プレハブ工法の苦戦継続
プレハブ工法による住宅建設は9万3,833戸となり、前年度比6.7%減で3年連続の減少となりました。この傾向は、建設費上昇や工期短縮ニーズの変化などが背景にあると考えられます。
■ツーバイフォー工法の復活
一方、ツーバイフォー工法では9万8,923戸を記録し、前年度比7.9%増で3年ぶりの増加に転じました。耐震性や断熱性に優れるツーバイフォー工法への注目度が再び高まっていることを示しています。
新設住宅着工床面積の動向
建設された住宅の総床面積は6,283万平方メートルとなり、前年度比1.0%増で3年ぶりの増加を記録しました。戸数の増加と併せて、住宅建設市場全体の拡大傾向を示す結果となっています。
まとめと今後の展望
令和6年度の住宅建設市場は、持家と賃貸住宅の回復により全体として成長軌道に戻りました。特に賃貸住宅市場の好調さは、都市部への人口集中や多様な住まい方のニーズに対応した結果と評価できます。
一方で、分譲住宅市場、特に一戸建て分譲の落ち込みは、住宅価格の高騰や購買力の変化を反映しているものと考えられます。
地域別では近畿圏の好調さが際立っており、地域経済の好転が住宅市場にも良い影響を与えていることが確認できます。
今後の住宅建設市場は、金利動向や建築資材価格、さらには人口動態の変化などに大きく左右されることが予想されます。特に都市部と地方部の格差拡大や、住宅の質的向上に対するニーズの高まりなど、様々な要因を注視していく必要があるでしょう。
出典情報
国土交通省リリース,建 築 着 工 統 計 調 査 報 告 令和 6 年度計,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha614.pdf