大成建設が自律ロボット向け安全装置ロボストップシステムを開発、反射テープで暴走防止

大成建設株式会社は、法和株式会社と共同で、自律走行ロボット向けの新たな緊急停止装置「ロボストップシステム」を開発しました。このシステムは、建設現場で使用される様々なタイプのロボットに搭載可能で、安全運転性能を格段に向上させます。
自律走行ロボットには通常、人や障害物を検知して回避するシステムや、接触時に停止するテープスイッチ、落下防止センサー、緊急停止ボタンなどの安全装置が備わっています。しかし、これらの装置だけでは十分とは言えない場合があります。
従来の安全対策の課題
特に大成建設が開発した「T-DriveX」のようなフォークリフト型の自律走行ロボットでは、システムの異常や検知不良が重なると重大事故につながる可能性があります。そのため、システムの暴走に対応する二重の安全システムや、別回路での緊急停止ボタンを設置することが一般的です。
しかし、こうした対策にも問題点があります。
・緊急停止ボタンは常に監視者が必要
・人為的な見落としミスのリスクがある
・無線で作動させるケースが多く、通信障害の可能性がある
さらに、フォークリフトは積荷の出し入れ時に安全センサーを一時的に無効にする必要があり、物理的な接触センサーの装備も難しいという特性があります。
レーザーバリアを設置して緊急停止信号を出すシステムも考えられますが、設置の手間やコストが高く、無線通信のリスクも解決できませんでした。
「ロボストップシステム」の革新的な特徴
こうした課題を解決するため、大成建設は既存の安全対策をさらに上回る新たな緊急停止システム「ロボストップシステム」を開発しました(特許出願中)。
1. 反射テープによる自動停止機能
作業範囲の床に反射テープを配置して囲むことで、ロボットに取り付けた反射センサーがテープの反射信号を検知し、自律走行ロボットが作業エリア外へ暴走することを防ぎます。これにより、システム異常が発生しても安全が確保されます。
2. 有線接続による高い信頼性
無線ではなく有線接続を採用することで、通信障害のリスクを排除し、安全性を高めています。さらに、反射センサー装置は1台につき2重の機能を有しており、さらにそれを2台、3台、4台と取り付け台数を増やすことで、万一のセンサー検知ミスも起きない機構と出来るよう工夫しています。
3. 簡単設置と低コスト
停止区画を設定する反射テープは幅25mmほどで十分なため、専用の巻取機に収納されており、設置が簡単です。また、センサーの強さを調整できる機構を採用し、様々なロボットへの取り付け位置(高さ)に対応できます。
実証実験で有効性を確認
大成建設はこのシステムを「T-DriveXシリーズ」のフォークリフト型ロボット(愛称:Rapyu.(ラピュー))に搭載し、高い安全性と有効性を確認しました。
床に反射テープを配置して作業範囲を囲み、ロボットに取り付けた反射センサーがテープの反射信号を検知する仕組みです。センサーの機構は簡単で安価に製作可能で、取り付けも容易です。エリア区画の設定も反射テープを設置するだけなので、導入コストを抑えられます。
今後の展開
大成建設は今後、この「ロボストップシステム」を他のロボットや無人搬送車(AGV)にも順次搭載することで、建設現場におけるロボットの安全な自律走行運転を実現し、現場作業の効率化を進めていく予定です。
これにより、生産プロセスのデジタルトランスフォーメーション(DX)をさらに推進し、建設業界における安全性と生産性の向上を目指しています。
なお、大成建設は「情報処理の促進に関する法律」に基づき、「デジタルガバナンス・コード」の基本的事項に対応する企業として国からDX認定を受けています。
このロボストップシステムの開発は、建設現場でのロボット活用を安全に進める上で大きな一歩となり、今後の建設業界のデジタル化に貢献することが期待されます
出典情報
大成建設株式会社リリース,自動緊急停止装置「ロボストップシステム」を開発-あらゆるロボットの安全性を向上-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250516_10468.html