国土交通省調査、令和6年度の建築物着工3年連続減、不動産業用のみ約50%増の異例の伸び

令和6年度の建築物着工統計によると、全建築物の着工床面積は10,445万平方メートルとなり、前年度と比較して3.6%の減少となりました。この結果は3年連続の減少を示しています。

建築主体別の状況
建築主体別に見ると、公共の建築主による着工は463万平方メートルで前年度比1.4%増となり、2年連続の増加を記録しました。一方、民間の建築主による着工は9,982万平方メートルで同3.8%減となり、こちらは3年連続の減少となっています。
民間建築主の内訳を見ると、居住用は6,507万平方メートル(前年度比0.2%増)で3年ぶりの増加となりました。しかし非居住用は3,474万平方メートル(同10.5%減)で3年連続の減少が続いています。
非居住用建築物の用途別状況
非居住用建築物を用途別に詳しく見ていくと、以下のような状況となっています。
・鉱業・採石業・砂利採取業・建設業用:80万平方メートル(前年度比15.1%減)
・製造業用:758万平方メートル(同11.7%減)
・情報通信業用:36万平方メートル(同16.9%減)
・卸売業・小売業用:440万平方メートル(同6.1%減)
・金融業・保険業用:35万平方メートル(同12.2%減)
・不動産業用:188万平方メートル(同49.5%増)
・宿泊業・飲食サービス業用:214万平方メートル(同10.0%減)
・医療・福祉用:297万平方メートル(同16.5%減)
・その他のサービス業用:279万平方メートル(同20.1%減)
特筆すべきは不動産業用の建築物が前年度比で約50%という大幅な増加を示していることです。一方で、情報通信業用やその他のサービス業用の建築物は大きく減少しています。
使途別の着工状況
主な使途別に見ると次のような結果となりました:
・事務所:464万平方メートル(前年度比18.8%減)
・店舗:378万平方メートル(同4.9%増)
・工場:662万平方メートル(同7.9%減)
・倉庫:1,026万平方メートル(同12.6%減)
店舗は前年度の減少から再び増加に転じましたが、事務所、工場、倉庫はいずれも減少しています。特に事務所の減少率が18.8%と大きく、前年度の増加から再び減少に転じました。また倉庫は3年連続で減少が続いています。
新設住宅の状況
新設住宅に関しては、総戸数が816,018戸となり、前年度比で2.0%の増加となりました。床面積は62,830平方メートルで前年度比1.0%の増加です。
■利用関係別の内訳
・持家:223,079戸(前年度比1.6%増)
・貸家:356,893戸(同4.8%増)
・給与住宅:6,606戸(同29.1%増)
・分譲住宅:229,440戸(同2.4%減)
貸家と給与住宅が大きく増加している一方で、分譲住宅は減少しています。
総括:令和6年度建設業界の動向まとめ
令和6年度の建築着工統計は、全体として3年連続の減少を示していますが、その内訳には様々な動きが見られます。
住宅分野では新設住宅が増加傾向にあり、特に貸家や給与住宅、マンション、ツーバイフォー住宅などで伸びが見られます。これは住宅需要が一部回復していることを示唆しています。
一方、非居住用建築物では全体的に減少傾向が続いていますが、不動産業用や店舗などでは増加が見られます。特に不動産業用の約50%増という大幅な伸びは、不動産市場における新たな動きを反映している可能性があります。
事務所や倉庫の減少は、働き方の変化やオンライン化の進展による影響が考えられます。また、製造業用や情報通信業用の減少は、これらの産業における設備投資の慎重姿勢を示しているかもしれません。
このように、令和6年度の建築着工統計からは、日本の産業構造や生活様式の変化が建設需要にも影響を与えていることが読み取れます。今後も経済情勢や社会変化を注視しながら、建設業界の動向を見守っていく必要があるでしょう。
出典情報
国土交通省リリース,建 築 着 工 統 計 調 査 報 告 令和 6 年度計,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/kencha614.pdf