社会インフラを支える土木会社とは|特徴から専門性に優れた企業をわかりやすく解説

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道路や橋梁、トンネルは社会生活に不可欠なインフラです。そして、土木会社は、地盤や河川、水域といった社会基盤を形成・維持する専門性を持った事業者だといえます。

本記事では、土木会社の概要や建築会社との違いを明確に整理したうえで、土木分野に強みを持つ代表的な企業5社についてみていきましょう。

土木会社とは

土木会社とは、道路や橋梁など公共性の高いインフラ関連の構造物を手掛ける会社を意味する言葉です。土木工事は、土地の形状変更や河川流域や地下水脈といった水の流れ全体を管理する作業を伴うため、規模が大きく、長期的な影響を社会に与える傾向があります。

また、土木工事の成果物は、国民の生命・財産を守る防災インフラとしても重要な役割を担っています。工種は以下のようなものが代表的です。

工種主な内容・施工対象補足説明
道路工事(新設・拡幅・舗装・維持修繕)高速道路、国道、県道、市町村道の新設・拡張・再舗装・劣化補修渋滞緩和・物流効率化を目的とした拡幅や、老朽化による路面補修が中心。アスファルト舗装・コンクリート舗装など多様な技術を用いる。
橋梁工事(架設・補強・耐震補修)河川、渓谷、道路横断用の橋梁の新設・補強・老朽化対策鋼橋・コンクリート橋・斜張橋など多様な形式があり、近年は耐震補強工事が増加傾向にある。大型インフラプロジェクトの核となる分野。
トンネル工事(掘削・内装・補強)道路トンネル、鉄道トンネル、都市インフラ向け地下道の施工山岳部掘削、都市部シールド工法(地下鉄・共同溝)、老朽トンネルの耐震補強・補修など。高度な地盤調査と掘削管理技術が求められる。
ダム建設・補修治水・利水・発電を目的とした大型ダムの新設・補修コンクリートダム・ロックフィルダムなど種類に応じた設計・施工が必要。漏水防止、地震対策補強など長期的な安全性確保が課題。
土地造成・宅地開発住宅地、工業団地、商業地などの地盤整備・区画造成法面整形、盛土・切土、擁壁工事、インフラ(道路・上下水道)整備を一体的に行う。都市拡大・再開発プロジェクトに不可欠。
河川整備・護岸工事洪水対策・流域整備のための堤防新設・強化、護岸工事水害リスク低減を目的とした河川改修や、高潮・津波対策を含む沿岸域防災が中心。環境配慮型工法(多自然型護岸)も推進されている。
港湾施設の建設・補修港湾、岸壁、桟橋、埠頭等の新設・改修国際貿易港・地方港の整備、耐震補強、浚渫工事(航路拡幅)などが対象。物流機能強化とともに、気候変動への対応(高潮対策)も重視されている。
山岳部・傾斜地の法面工事山地斜面、切土・盛土部の崩壊防止工事アンカー工法、吹付法枠工、植生工などを用い、地滑り・崩落・土砂災害を防ぐ。道路沿いや宅地開発地での安全確保に不可欠。

土木会社と建築会社との違い

土木会社と建築会社は、どちらも「建設業」の一翼を担う存在です。しかし、以下のように対象物・目的・施工技術に明確な違いがあります。

項目土木会社建築会社
対象物地盤、構造物(道路、橋、トンネル、河川、上下水道等)建築物(住宅、ビル、工場、学校、病院等)
目的インフラ基盤の整備・維持空間の創出と機能提供
主な発注者官公庁(国・自治体)、インフラ事業者民間企業、個人、官公庁
技術分野土質工学、構造力学、施工管理(特に地盤・大型構造物)建築設計、意匠設計、構造設計、施工管理(建物内部設備含む)
工期の特徴大規模・長期(複数年プロジェクトが一般的)規模により幅広いが、比較的短期(数ヶ月~2年程度)
安全管理自然災害、地盤崩壊、河川氾濫等への対応が不可欠耐震、防火、防犯、バリアフリー対応などが主


たとえば、新たに宅地開発を行う場合は以下のような違いがあります。

  • 土木会社―造成工事(地盤をならして、道路・上下水道等を整備する)
  • 建築会社―住宅の建設(基礎・柱・壁・内装など)


施工対象と専門領域に応じて、役割分担が明確に異なるといえるでしょう。

土木工事の専門性に優れた代表的な土木会社5選

ここでは、日本国内の土木工事に強みを持つ企業についてみていきましょう。

五洋建設

五洋建設は、湾岸・海洋土木工事において強みを持つ企業です。とくに、水際インフラに対して実績が多数あり、洋上風力発電向けの基礎工事などの事業も行っています。

施工実績としては、東京国際クルーズターミナルや中部国際空港などを手掛けています。

売上高経常利益従業員数本社所在地
6,177億円272億円3,824東京都文京区後楽二丁目2番8号

※有価証券報告書、公式ホームページ参照

東亜建設工業

東亜建設工業は、陸上・海上の土木工事に強みを持つ企業です。DRIM(ドリム)工法やマリンプレス工法など多数の土木関連技術を持ち、空港の拡張プロジェクトなどにも参画しています。

施工実績には、オウイア水産センター整備計画や神戸空港などがあります。

売上高経常利益従業員数本社所在地
2,838億円166億円1,705東京都新宿区西新宿三丁目7番1号

※有価証券報告書、公式ホームページ参照

東洋建設

東洋建設は、湾岸工事から鉄道工事まで手掛ける企業です。創業時から湾岸工事を手掛けており、現在では再生可能エネルギー分野にも進出しています。

施工実績としては、今治造船株式会社丸亀新ドック建設工事や13号地新客船ふ頭岸壁(29)建設工事などがあります。

売上高経常利益従業員数本社所在地
1,867億円100億円1,528東京都千代田区神田神保町一丁目105番地

※有価証券報告書、公式ホームページ参照

鉄建建設

鉄建建設は、鉄道高架橋や鉄道トンネルなど鉄道施設を多数手掛けている建設会社です。近年では、再生可能エネルギー分野や不動産開発などにも進出しています。

京葉線、新習志野・海浜幕張間新駅設置他(幕張豊砂駅)や羽越本線羽後本荘駅本屋・東西自由通路新設他などがあります。

売上高経常利益従業員数本社所在地
1,835億円22億円1,811東京都千代田区神田三崎町二丁目5番3号

※有価証券報告書、公式ホームページ参照

東鉄工業

東鉄工業は、鉄道の保守・改良をメインとして手掛けている企業です。たとえば、線路の修繕やレールの交換、災害に対する補強工事なども行っています。

施工実績には、JR北陸新幹線 小松軌道敷設工事や横浜市営地下鉄ブルーライン開削トンネル中柱補強工事などがあります

売上高経常利益従業員数本社所在地
1,418億円121億円1,883東京都新宿区信濃町34 JR信濃町ビル4階

※有価証券報告書、公式ホームページ参照

まとめ

土木会社は、社会の安全・安心を支えるインフラ基盤を構築する重要な役割を担っています。国内には、港湾・海洋土木、鉄道土木など各分野において高い専門性を発揮する企業が数多く存在します。

道路・橋梁・トンネルといった社会インフラの整備・維持には、土木会社の技術力と総合力が不可欠です。今後も土木会社の活躍に注目していきましょう。