足場とは?種類・安全基準といった建設現場の必須知識を解説【2024年法改正】

足場は建設工事現場での作業を効率化し、安全性の確保に欠かせない仮設構造物です。しかし、どのような種類の足場があるのかわからない、また2024年の法改正で何が変化したのかわからないとお悩みではないでしょうか。

そこでこの記事では、足場の概要や種類を解説したのち、法改正や安全衛生規則、法律違反による罰則・罰金について詳しく説明します。

足場とは?

足場とは、建設工事を効率よく実施するために用いられる仮設構造物です。工事現場の次のような場所で、作業者が安定して動ける環境維持のために用います。

  • 高所作業
  • 外壁工事

単管を組み合わせて足場を組むことにより、墜落事故のリスクを抑えられることはもちろん、安定した場所で施工作業を進められるのが魅力です。

また建設工事で足場が必要とされているのは、業界のなかでも特に労災のリスクが高いことが関係しています。全国仮設安全事業協同組合が公開しているデータによると、全業界のうち約3割が建設工事のなかで死亡事故が発生している状況です。

出典:全国仮設安全事業協同組合「建設業が労働死亡災害に占める割合」

またそのうちの墜落事故・転落事故は4割近い値を示しています。建設事故を防止するためにも欠かせない仮設構造物であることから、事故リスク軽減に欠かせない工法だと言えるでしょう。

足場の種類

建設工事に用いられる足場は、5種類に分類されます。以下に各足場の特徴や用途についてまとめました。

枠組み足場

枠組足場は、ビルやマンションといった中高層の建物で使われている足場です。

パイプやジョイントを組み合わせてつくり上げられるためスピーディーに組み立てられるほか、安定性が高いことから、多くの現場で採用されています。また、高さや横幅の規格が統一されているため、製品を入手しやすいのが特徴です。

面積当たりの単価も安く、長期的な工事においても安定して作業床を確保できるので、安定性・作業性・コストのバランスに優れた足場だと言えます。

単管足場

単管足場は、単管パイプを組み合わせることで自由な形状にカスタマイズできる足場です。

例えば、作業スペースが限られている狭小地や小規模な工事に対応しやすく、障害物があった際には、その部分だけを避けて設置できます。なお単管のみ組まれていることから、作業床を設置するか否かは、担当者が判断しなければなりません。

高さのない工事現場によっては、単管だけを組み、単管に沿って作業をするケースもあります。

一側足場

一側足場は、足場を設置できるスペースが限られる現場で使われる足場です。

片側からのみ支持できる構造であり、次のような建物の片側にしか足場を設置できない場合に適しています。

  • 道路に面した狭い建物
  • 隣接する建物との距離が近い場所

ただし、構造上は安定性が劣るため、法的にも条件付きでしか使用できません。また後述していますが、2024年4月の改正により、一側足場は狭小部を除いて原則適用しないものとして定められています。やむを得ない状況でのみ使われる足場ですので、適用できる機会は非常に少ないでしょう。

吊り足場

吊り足場は、次のように「下に地面がない高所作業」で活躍する足場です。

  • 橋梁の橋桁での作業
  • ビルの外壁での作業
  • 高架道路での作業

既存のコンクリートにアンカーを打ち込み、上部から吊り下げることで足場を設置します。下が河川であったり作業スペースがなかったりと、地上から足場を組むことが難しい現場で用いられる足場工法です。

また吊り足場は地面に直接接しないことから、工事中に地上の通行(歩行者や自動車)を妨げないのがメリットです。ただし上からの組み立てを実施するため、ほかの工法と比べて組み立てや解体に施工日数がかかりやすい点に注意しなければなりません。

移動式足場(ローリングタワー)

移動式足場とは、あらかじめ枠が組まれている箱にキャスターを取り付けた移動式の足場です。

水平な場所であれば自由に移動できることから、次のように屋内や短期作業で利用されています。

  • 天井工事
  • 照明の設置
  • 上面の修理作業

なお、小規模な移動式足場は組み立てや解体をせずに輸送できるのが魅力です。また規模が大きい移動式足場の場合は枠組み足場のように、現場で組み立てて利用します。

2024年から足場の「本足場」使用が原則義務

出典:厚生労働省「足場からの墜落防止措置が強化されます」

建設工事の安全と効率化に貢献する足場のうち「本足場(以下に一例を整理)の原則適用」が、2024年4月の法改正により義務化されることとなりました。

  • 枠組み足場
  • 単管足場
  • 吊り足場
  • 移動式足場(ローリングタワー)

本足場とは「建築物の外壁面等に沿って、建地(支柱)を二列設置して組み立てる足場」のことです。高さ2m以上、幅員1m以上の場所には、必ず本足場を設置するように定められています。

従来の片側支持の「一側足場」と比べて、作業員の転落事故を防止しやすくなるほか、足場崩壊による重大災害のリスクを大幅に低減できるのが特徴です。本足場を使うのが当たり前な時代がスタートしているため、現場担当者や元請け業者は、2024年の法改正を正しく理解し、現場の安全対策をアップデートしなければなりません。

一側足場と本足場の違い

前述した足場の法改正では、一側足場を原則利用しないものとして定められています。では、本足場と一側足場にはどのような違いがあるのでしょうか。以下に比較表を整理しました。

一側足場本足場
構造支柱が建物の片側のみ支柱が建物の両側にあり、作業床を挟んで設置
設置スペース狭小地・片側しかスペースがない場所通常の現場(1m以上の幅がある場合)
安全性安定性に欠ける
※使用には条件あり
支えが多く安定性が高い
法的制限
(2024年以降)
原則禁止
※2m以上かつ1mの幅がある場合は使用不可
原則義務化
適用イメージ都市部の密集地・隣接建物が近接している住宅ビル・マンション・中高層建築全般

狭小な場所を除けば、ほとんどの場合に本足場を用いなければなりません。業務計画・施工計画を立てる際には、現場確認を実施したのちに設置すべき足場を検討する必要があります。

足場の安全基準に関する法律のポイント

足場の安全基準は、労働安全衛生法および関連政令・省令によって法律で厳格に定められています。違反すれば企業・現場責任者に重大な責任を問われる点に注意しなければなりません。

参考として以下に、労働安全衛生規則により定められている主な基準を整理しました。

安全項目労働安全衛生規則のルール
作業床の高さ2m以上であれば足場が必要(第518条)
作業床の幅原則0.40m以上(第563条)
手すりの高さ0.85m以上、中さん0.35〜0.50m(第564条)
幅木
(つまづき防止板)
0.10m以上(第564条)
組立・解体作業者の資格特別教育または技能講習の修了が必要(第519条)
点検義務毎日の作業前、および天候・地震等の影響後(第568条)

参考:厚生労働省「労働安全衛生規則(足場等関係)が改正されました」

なお上記の規則に違反したまま工事をすると「6ヶ月以下の懲役刑または50万円以下の罰金刑」に科せられます。行政からの使用停止命令や是正命令を受けるケースもあるため、安全かつスムーズに建設工事を進めたいなら、足場に定められているルールに準拠して施工を実施しましょう。

まとめ

足場には複数の種類がありますが、2024年4月からの法改正より、狭小地(高さ1m、幅2m以下)を除く工事現場では、安定性の高い「本足場」を利用することが義務化されています。

また改正に伴い、労働安全衛生規則のルールも更新されていることに注意しなければなりません。

足場といった仮設構造物は作業員の安全確保に欠かせない工法であり、労災リスクを減らす効果を期待できます。建設業では工事現場での事故が多発しているため、この機会に今一度、安全管理の見直しをスタートしてみてはいかがでしょうか。