建設業法とは?施行規則や2025年改正概要、ガイドラインをわかりやすく解説

建設業法は、建設業を営む企業が必ず準拠しなければならない法律です。しかし、具体的にどのようなルールが記載されているのかわからないとお悩みの方も多いでしょう。
そこでこの記事では、建設業法の施行規則やガイドラインの概要をわかりやすく解説したのち、2025年時点での改正概要を紹介します。
目次
建設業法とは
建設業法とは、建設業に関する規制を定めた法律です。以下に法律の目的を整理しました。
第一条
この法律は、建設業を営む者の資質の向上、建設工事の請負契約の適正化等を図ることによつて、建設工事の適正な施工を確保し、発注者を保護するとともに、建設業の健全な発達を促進し、もつて公共の福祉の増進に寄与することを目的とする。
引用:e-GOV法令検索「建設業法」
つまり「建設業者の資質向上」「工事請負契約の適正化」が当法律で定められています。基本的な法律の対象者は、工事業務をつくる「発注者(施主)」「受注者(建設企業)」であり、正しく不合理のない契約ができるようにルールがまとめられているのが特徴です。
建設業法の改正変遷
建設業法は、次のように複数回にわたって法律の改正がおこなわれてきました。
改正年 | 改正内容 |
昭和24年 | ・登録制の導入・請負契約の原則(契約内容、見積り期間等)の規定など |
昭和36年 | ・総合工事業者(現在の一式工事に相当)の創設・経営事項審査制度法制化 |
昭和46年 | ・建設業の許可制度の採用・請負契約の適正化に関する規定の整備・下請負人保護に関する規定の新設など |
昭和62年 | ・特定建設業の許可基準の改正・監理技術者制度の整備など |
平成6年 | ・建設業の欠格要件の強化・経営事項審査制度の改善 |
平成12年 | ・入契法違反の建設業者に対する、監督処分等の規定整備 |
平成26年 | ・担い手の育成及び確保に関する責務の追加・従前の28業種区分に解体工事業を追加など |
令和6年 | ・建設業法および公共工事の入札及び契約の適正化の促進に関する法律の一部改正 |
例えば、平成26年の改正では、リーマンショック等による影響を受けて建設業で人手不足が起きるようになったことをきっかけに、担い手確保のための改正が実施されました。
このように、時代の変化に合わせて建設業法も少しずつ改正が加えられています。
2025年時点における建設業法等の改正概要
2024年6月7日(交付は2024年6月14日)、新たに入札や契約の適正化を促進化するための法律の一部改正が、国会で可決・成立しました。以下に改正の概要を整理しました。
- 労働者の賃金引き上げによる処遇改善
- 資材高騰による人件費(労務費)へのしわ寄せ防止
- 働き方改革と生産性向上の推進
参考:国土交通省「建設業法・入契法改正(令和6年法律第49号)について」
特に近年では、新型コロナウイルスのまん延や海外での戦争、円安などの影響を受け、建設業界の低賃金問題や物価高が加速しています。その問題が建設従事者に及ばないよう、国が建設企業に対し「相場に合う賃金まで改善して」「経費補填のために人件費を下げないで」「工数削減のためにDX化に取り組んで」というルールが法律に追加される予定です。
なお2025年3月時点で、まだ施行日は決定していません。ただし、交付日から1年6ヶ月を超えない範囲で施工されると公表されていることから、遅くとも2025年12月13日までには施行される予定(前倒しの可能性あり)となっています。
建設業法で定められているルール・ガイドライン
建設業法では、主に「建設業の許可」「請負契約」「技術者の設置」に関するルールが定められています。各ルールの概要をわかりやすく整理しました。
【ルール1】建設業の許可
建設業法では、次の条件にあてはまる建設企業に対し、許可制を定めています。
- 請負代金が500万円以上/件(建築一式工事では1,500万円以上)の工事
- 建築一式工事のうち、延べ面積が150㎡未満の木造住宅の建設工事
ひとつの都道府県に営業所を設置して事業を営む場合は、その都道府県を管轄する都道府県知事、2つ以上の都道府県にまたがって複数の営業所を設置する企業は国土交通大臣から許可を取得しなければなりません。
なお建設業許可のガイドラインに則った経営が必要なのは、次のような事業を営む企業です。
- 土木工事業
- 建築工事業
- 大工工事業
- 左官工事業
- とび・土工工事業
など
上記はあくまで一例ですが「工事業務を実施し、請負代金等のルールにあてはまる企業」は、そのほとんどが許可制であると覚えておきましょう。
【ルール2】請負契約
建設業法には、工事を受注(請負)する際のルールもまとめられています。以下に工事業務の請負時に明記しなければならない情報の一例を整理しました。
- 工事内容
- 請負代金
- 工事着手時期~工事完成時期
- 工事を施工しない日または時間帯
- 請負代金の支払時期・方法
- 工事延期や変更申請のルール
- 不可抗力による工期の変更または損害の負担等の計算
- 第三者が損害を受けた場合における賠償金の負担
- 資材提供や建設機械等の貸与について
- 検査内容・方法・引渡し時期
- 工事完成後の請負代金の支払時期・方法
- 契約不適合責任または当該責任の履行の措置
- 遅延利息・違約金その他の損害金
- 契約に関する紛争の解決方法
上記の項目はあくまで要約した内容です。契約手続きをする際には、建設業法に明記された項目にもとづいて、具体的に整理された請負書の締結が必要になると覚えておきましょう。
【ルール3】主任技術者や監理技術者の設置
建設業法では、工事責任者として「主任技術者」「監理技術者」といった人員を配置しなければならないルールが決められています。以下にルールの概要を整理しました。
主任技術者 | 監理技術者 | |
役割 | 工事の施工管理を担当 | 工事の技術上の管理を担当 |
設置条件 | ・所定教育課程を収めている・10年以上の実務経験・国土交通大臣の認定のいずれか | ・所定検定試験に合格・2年以上の監督実務経験・国土交通大臣の認定のいずれか |
対象工事 | すべての工事 | 請負代金5,000万円以上 (建築一式工事だと8,000万円以上) |
なお、工事内容によって上記のルールが少しずつ変化します。例えば、公共工事の場合には請負代金5,000万円以上(建築一式工事だと8,000万円以上)で専任の主任技術者・監理技術者を設置しなければならない、といったルールもあるので該当する条件に注意しなければなりません。
建設業法に違反した場合の罰則・罰金
建設業法に違反して経営を続ける企業は、次のようなペナルティを受けます。
- 営業停止
- 建設業許可の取り消し
- 刑事罰
軽度な間違いやミスなどであれば注意や是正を受ける程度で済むケースもありますが、特に情状が重い場合には、経営できなくなる措置を取られることもあります。なかでも刑事罰は重いものだと3年以下の懲役刑や、1億円以下の罰金等が発生することもあるので注意が必要です。
まとめ
建設業法は、建設企業を経営するうえで必ず遵守しなければならないルールです。国土交通省では建設業法を守るよう遵守ガイドライン(令和6年12月版)なども公開していることから、工事業務を請け負う際には、確実にルールに則った対応を取るように心がけましょう。
なお、建設業法は今後も時代の変化に合わせて改正が実施されていきます。改正の交付が出た際には、何が変化したのか(追加したのか)をチェックし、業務契約に取り込むようにしてください。