大成建設のZEB技術が世界で評価、愛知県研究施設がASHRAE賞で国内初の最高位獲得

大成建設株式会社、久米設計、名古屋大学の3者による共同受賞となった「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」が、2025年2月27日、米国暖房冷凍空調学会(ASHRAE)主催の2025年技術賞において、公共施設・性能検証部門で世界第1位を獲得しました。これは日本の施設として初めての快挙です。

世界的に権威ある技術賞とは

ASHRAE技術賞は、居住者の快適性、室内空気質、省エネルギー分野での革新的な計画・設計や性能検証に関する業績を表彰する制度です。また、省エネルギー性能や地球温暖化防止に貢献する冷凍機・空調機の技術開発も評価対象となっています。

この賞は、以下6種類の施設区分があり、それぞれ新築、既築改修、性能検証の3部門に分かれています。

・業務用施設

・公共施設(教育施設または他用途施設)

・医療施設

・産業施設

・集会施設

・住宅

審査には実際の運用データによる裏付けが求められ、建築・設備関係者からも高い信頼を得ている世界最大規模の技術賞です。

環境首都にふさわしい最先端施設

受賞した愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所は、愛知県が「環境首都あいち」にふさわしい最先端の省エネ・創エネ技術を導入し、公共施設として全国トップクラスのZEB(Nearly ZEB)達成を目指した建物です。

この施設には次のような先進技術が導入されています。

・高効率熱源システム「2温水回収ジェネリンク」

・井水熱を利用した空調設備

・大成建設が開発した省エネ自動環境制御システム「T-Zone Saver」

これらの技術により、設計時点では年間一次エネルギー消費量を建物全体で85%削減し、「Nearly ZEB」認証を取得しました。

運用改善による大幅な省エネ実現

この建物の特筆すべき点は、性能検証プロセスを導入したことです。設計計画を基に、運用段階で継続的に性能分析・評価を行い、調整しながら運転性能向上を実施してきました。

その結果、建物の全面供用開始から3年後には、年間一次エネルギー消費量が建物全体で101%削減を達成。当初の「Nearly ZEB」計画から『ZEB』へと進化し、大幅なCO2排出抑制を実現しています。

今後の展望

大成建設は今後も環境に配慮した持続可能な社会の実現を目指し、発注者のニーズに合ったZEBの提案を進めていきます。また、建物の供用開始後の運用や機能改善にも積極的に取り組む方針です。

用語解説

ASHRAE(米国暖房冷凍空調学会):

132カ国に5万人以上の会員を持つ、空気調和に関する世界最大の国際的学会です。1894年に創設され、本部は米国アトランタにあります。

Nearly ZEB:

建物のZEB化には「省エネ量」と「創エネ量」により4段階のレベルが定義されています。Nearly ZEBは、年間のエネルギー消費量を基準値から75%以上100%未満削減した建物を指します。

『ZEB』(ネット・ゼロ・エネルギー・ビルディング):

年間のエネルギー消費量収支を基準値から100%以上削減した建物です。省エネと創エネを組み合わせることで、使用するエネルギー以上のエネルギーを生み出す建物を意味します。

2月8日には現地で表彰式が行われ、この画期的な環境技術の成果が世界的に認められました。この受賞は、日本の環境技術の高さを世界に示す重要な一歩となります。

出典情報

大成建設株式会社リリース,「愛知県環境調査センター・愛知県衛生研究所」が「米国暖房冷凍空調学会」が主催するASHRAE Technology Awardを受賞-公共施設・性能検証部門にて世界1位(国内初)-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250227_10350.html