建設物価とは?積算資料との違いや単価を用いた計算例、2025年最新の物価指数を解説

建設工事の積算、概算工事費の算出に欠かせないのが建設物価と呼ばれる資料です。しかし、具体的にどのような用途で使えるのか、また金額計算のどのような部分にあてはめられるのかわからないとお悩みの人もいるのではないでしょうか。
そこでこの記事では、建設物価の概要や積算の仕方を解説したのち、積算資料との違いや、計算例、最新の物価指数について紹介します。
目次
建設物価とは
建設物価とは、建設工事に用いる次のような費用相場がまとめられた資料のことです。
- 資機材の価格
- 建設機械・仮設機材の賃貸料金
- 労務賃金
- 工事費
一般社団法人 建設物価調査会が、全国の主要都市を対象に、リアルタイムでの情報・データを調査し「月間 建設物価」という情報誌にまとめて公開しています。
なお建設物価は、そのときの時事によって価格が変動する点に注意しなければなりません。1月は10,000円だったものが、半年後には13,000円に変わっている場合もあるため、建設業従事者は常に最新の建設物価の把握が必要です。
建設物価はWeb版も提供中
建設物価は、以前まで紙の資料を購入して利用するのが一般的でした。しかし、膨大な情報が掲載されるがゆえに、1冊当たりの本の厚みが5cm以上になるなど、場所を取りやすくなることに頭を抱える建設従事者も少なくありません。
そこで新たに登場したのが、Web建設物価です。書籍の建設物価には約31万種類の単価が掲載されている一方、Web版には約54万種類(+23万種類)の単価が収録されています。
すべての情報がデータ化されているため、キーワード検索を通じてすばやく単価のチェックが可能です。標準版は最大3名で同時利用できることも含め、わざわざ複数冊の建設物価を購入する必要がなくなりました。
建設物価と積算資料の違い
建設物価と別に、類似の単価等が掲載されている「積算資料(一般社団法人 経済調査会)」という物価本があります。
積算資料は主に、資材価格や労務単価などの情報が掲載されており、建設物価とは若干の単価の違いが出ている点に注意しなければなりません。なお、単価が異なる理由は次の通りです。
- 価格調査・工事費調査の方法が異なるため
- 対象企業等が異なるため
そのため建設従事者は公共工事を実施する際に、建設物価と積算資料の平均値を適用して計算します。(10,000円と12,000円で分かれるなら、平均値11,000円を計上するなど)
詳しく積算・概算工事費を算出する必要がある場合には、2冊の物価本が必要になると覚えておきましょう。
建設物価の計算適用例
建設物価を利用するにあたり、単価をどのように積算に適用するのかイメージできない人もいるでしょう。参考として以下に、計算イメージを掲載しました。
出典:国土交通省「令和7年度土木工事標準歩掛の改定概要」
例えば上記の表は、土木工事に利用する床版補強工の「プライマー工」という工事の歩掛です。4つの項目がまとめられていますが、それぞれ次の出典先から情報を持ってこなければなりません。
名称 | 出典先 |
土木一般世話役 | 労務単価 |
特殊作業員 | 労務単価 |
プライマー | 建設物価等 |
諸雑費率 | 全体の費用から割り出す |
今回、建設物価にあてはまるのは「プライマー」です。
建設物価に記載されているページから「プライマー」に関する情報がまとめられたページを見つけ、工事対象となる都道府県に合う単価(地域ごとに単価が異なる)を当て込むことで積算表を埋められます。
例えば、プライマーが1kgで1,000円程度になる場合には、100㎡あたりの工事に29kg、つまり29,000円がかかると計算できます。
また別途計算しなければならない労務単価については、以下の記事で詳しく解説しています。合わせてチェックしてみてください。
【令和7年最新】労務単価表まとめ!過去からの推移や令和8年の予測を解説
建設物価にない情報や新技術は要見積もり
建設物価には豊富な建材等の情報が掲載されていますが、すべてを網羅しきれているわけではありません。なぜなら、建設系の技術や製品が新しく登場するケースもあるからです。
そのため、用いる工法や工事内容によっては、建設物価に単価が掲載されていないことがあります。専門のメーカーや新技術を提供している会社に対し、見積もりを取るのが一般的です。
複数社ある場合には3社見積もりを取るなど、根拠情報を掲載することによって積算に対応できます。建設物価の範囲外がある際には、見積もりが必要になると覚えておきましょう。
2025年最新の建設物価指数
建設物価について、建設物価調査会より土木・建築・建設資材に分けた工事費の指数が公開されています。最後に、過年度からどのような単価の変化が起きているのか詳しくまとめました。
建設物価の土木工事費指数
出典:建設物価調査会「土木工事費指数(2015年基準)」
土木系の建設物価は、調査日当初の2015年と比較して、約1.3倍まで上昇が続いています。なお、継続的に右肩上がりであることから、2026年以降も単価の上昇が続いていくと予想されます。
建設物価の建築工事費指数
出典:建設物価調査会「建築費指数(2015年基準)」
前述した土木工事費指数と同じく、建築工事費指数も継続的に上昇を続けています。2015年始まりの単価を基準とすると、約1.35倍もの伸びが出ており、建築費の増加が続いている状況です。
土木と同様に、建築でも2026年以降、継続的な物価の上昇が起きると予想されます。
建設物価の建設資材物価指数
出典:建設物価調査会「建設資材物価指数(2015年基準)」
建設工事で使用する資材関連の金額についても、2015年基準の単価と比べて1.40倍ほどの伸びが起きている状況です。同じ建築物でも、当初の1.40倍近い費用をかけなければ建てられなくなっており、膨大なコスト増が課題となっています。
建設物価を用いるメリット
工事費の算出のために、建設物価を利用するメリットを以下にまとめました。
- 最新の社会情勢を反映できる
- 積算業務を効率化できる
- 積算価格の透明性・信頼性を高められる
物の価値は、時間の経過とともに少しずつ変動を繰り返します。そういったなか古い情報ばかり利用していては「この金額じゃ工事ができない」という状況に陥るかもしれません。また、ひとつずつメーカー等から見積もりを取得して積算をすることも可能ですが、膨大な労力を割かなければならないのも課題です。
対して建設物価といった物価本を用いれば、最新の物価相場を用いることができるほか、根拠にもとづく金額の提示が可能となります。また実際の公共事業でも建設物価は広く利用されています。建設企業に必ず1冊はある物価本ですので、積算や概算工事費を算出する際には書籍およびWeb版のツールを利用してみてはいかがでしょうか。
まとめ
建設物価は、建設工事(土木・建築等)の積算・概算工事費の算出に欠かせない資料のひとつです。世の中の最新の物価状況を把握するための資料・データであるほか、実際に工事業務に当て込んで利用できます。
設定されている工事歩掛をもとに計算をするなど、金額算出のルールなども定められているので、はじめて建設物価に触れるという方は、本記事の情報を参考にしつつ、積算業務や概算工事の算出をスタートしてみてください。