【令和7年】建築保全業務労務単価の最新情報!過去からの推移や単価の動向を解説

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建築物・施設の保全に関わる従業員の日割り単価を決める「建築保全業務労務単価」は、建築保全業務共通仕様書を適用して働く人たちにとって欠かせない情報です。そして令和7年4月より、新たな労務単価が適用されることとなります。

そこでこの記事では、建築保全業務労務単価の概要を説明したのち、令和7年最新の技術者単価表および、令和6年、令和5年といった過去からの推移について詳しく解説します。

建築保全業務労務単価とは

建築保全業務労務単価は、国土交通省官庁営繕部が毎年更新している積算単価です。主に建築保全(完成〜取壊しまでの維持管理)に携わる人材に適用される直接人件費を決める単価であり、関係企業は最新の建築保全業務労務単価に基づいて見積書の作成や契約をしなければなりません。

なお建築保全業務労務単価は、費用の積算等の考えが記載された「建築保全業務積算要領」に基づいて直接人件費を算出するのが一般的です。例えば、下表の汚水槽・雑排水槽の点検・保守の場合には次のように費用を算出します。

  • 保全技術員:1基あたり0.02人工×基準日額(最新の単価を当てはめる)
  • 保全技術員補:1基あたり0.05人工×基準日額(最新の単価を当てはめる)

出典:国土交通省官庁営繕部「建築保全業務積算要領(令和5年版)」

また設定されている単価には、残業時間や深夜手当が含まれていないため、別途設定されている「割増基礎単価率」「宿直単価」を加味して算出しなければなりません。

建築保全業務労務単価の構成

建築保全業務労務単価は、所定労働時間内8時間当たりの単価として設定されており、次の費用がまとまっています。

  • 基本給相当額
  • 基準内手当(家族手当、住宅手当、通勤手当等など)
  • 賞与相当

ちなみに、建築保全業務労務単価から算出できるのは「直接人件費」です。保全業務費用を出すためには、別途「直接物品費」「業務管理費」「一般管理費等」「消費税相当額」などを算出する必要があります。

令和7年度最新の建築保全業務労務単価の一覧表

令和7年2月14日、国土交通省官庁営繕部計画課より、令和7年4月から適用される建築保全業務労務単価が公表されました。参考として以下より「保全技師・保全技術員等」「清掃員」「警備員」に分けて基礎単価の情報を整理しました。

保全技師・保全技術員等の建築保全業務労務単価

建築物や施設の点検・保守及び運転・監視業務などを担当する保全技師等の単価は、次のように設定されています。なお単価情報は一部の主要都市のみ抜粋しています。

職種北海道東京愛知大阪福岡
保全技師Ⅰ25,000円28,800円28,800円27,900円24,300円
保全技師Ⅱ23,600円27,200円27,200円26,300円23,000円
保全技師Ⅲ25,400円29,400円29,300円28,400円24,700円
保全技師補20,900円24,100円24,100円23,400円20,300円
保全技術員20,100円23,200円23,100円22,300円19,500円
保全技術員補17,400円20,100円20,000円19,300円16,900円

参考:国土交通省官庁営繕部「令和7年4月から適用する建築保全業務労務単価について」

清掃員の建築保全業務労務単価

建築物や施設の清掃を担当する清掃員の単価は、次のように設定されています。なお単価情報は一部の主要都市のみ抜粋しています。

職種北海道東京愛知大阪福岡
清掃員A17,600円21,800円19,100円20,600円17,400円
清掃員B13,900円17,300円15,200円16,400円13,900円
清掃員C12,800円15,900円14,000円15,100円12,700円

参考:国土交通省官庁営繕部「令和7年4月から適用する建築保全業務労務単価について」

警備員の建築保全業務労務単価

建築物や施設の日常的な警備を担当する警備員の単価は、次のように設定されています。なお単価情報は一部の主要都市のみ抜粋しています。

職種北海道東京愛知大阪福岡
警備員A17,800円20,600円19,400円19,100円16,200円
警備員B15,200円17,600円16,600円16,300円13,800円
警備員C13,500円15,600円14,700円14,300円12,200円

参考:国土交通省官庁営繕部「令和7年4月から適用する建築保全業務労務単価について」

過去からの建築保全業務労務単価の推移(全職種平均)

参考:国土交通省官庁営繕部「令和7年4月から適用する建築保全業務労務単価について」

令和7年4月から適用される建築保全業務労務単価の全職種における単価は、過年度のなかでも最高値(18,002円)となっています。なかでも令和7年度は伸び率が高く、毎年平均3%程度であることに対し、8.3%もの単価上昇となりました。

また、職種別の平均単価は次のとおりです。

職種令和5年令和6年令和7年
保全技師等20,718円21,417円23,032円
清掃員12,740円13,983円15,350円
警備員13,350円14,437円15,623円

参考:国土交通省官庁営繕部「建築保全業務労務単価」

全職種で単価の上昇が続いているのはもちろん、平成25年から13年連続での伸びが起きています。

過去からの建築保全業務労務単価(職種ごと)

建築保全業務労務単価を職種ごとに見た場合、どのような変化があるのでしょうか。参考として主要都市のうち東京に絞って過去からの推移を整理しました。

職種令和5年令和6年令和7年
保全技師Ⅰ26,20026,90028,800円
保全技師Ⅱ24,70025,40027,200円
保全技師Ⅲ26,60027,40029,400円
保全技師補21,90022,50024,100円
保全技術員21,00021,60023,200円
保全技術員補18,20018,70020,100円
清掃員A18,20019,90021,800円
清掃員B14,50015,80017,300円
清掃員C13,30014,50015,900円
警備員A17,90019,20020,600円
警備員B15,30016,40017,600円
警備員C13,50014,50015,600円

参考:国土交通省官庁営繕部「建築保全業務労務単価」

上表からわかるように、ひとつの職種も漏れず、全職種で単価の上昇が続いている状況です。過去からの推移を見ても、保全業務に携わる人材の待遇が改善しつつあることが伺えます。

建築保全業務労務単価の将来予測【令和8年以降は?】

13年連続で上昇を続けている建築保全業務労務単価ですが、令和8年度以降もさらに上昇する可能性があります。参考として、単価上昇の見込みがある理由を以下にまとめました。

  • 日本全体で少子高齢化が加速している
  • 保全業務に携わる人材が不足している(2025年問題)
  • 円安問題により単価を上げないと人が集まらなくなっている

今後の将来予測として、まず過年度からの伸び率をみると、毎年にバラつきはあるものの毎年平均3.0%程度の伸び率です。また直近の数年は5.0%以上の伸び率が出ていることから、令和8年においては最低5%、最大は令和7年度の伸び率を加味して9%程度の伸びがあると予測できます。

以上より、令和8年度は令和7年度の平均18,002円からさらに単価が上昇し、18,902~19,662円(5~9%増)と、平成25年時点と比べて2倍近い単価になるのではないかと予想します。

まとめ

建築保全業務労務単価は、建築物・施設の保全に携わる人材の直接人件費を決める重要な指標です。

特に国や自治体などから業務を受注している保全関係の企業は、自由に人件費を決められず、建築保全業務労務単価に依存します。そのため建築保全業務労務単価の上昇・下落が従業員の生活や企業経営を大きく左右すると言っても過言ではありません。

なお、建築保全業務労務単価は今後も上昇の見込みがあります。毎年更新される設計業務委託等技術者単価について、継続的に動向を追っていきましょう。