大成建設が廃棄物再生技術を開発、ふるい下残さをソイルモルタルに活用する資源循環

大成建設株式会社(社長:相川善郎)と株式会社光洲産業(社長:光田興熙)は、建設混合廃棄物から生じる「ふるい下残さ」をソイルモルタルとして再利用する技術を開発しました。これにより、従来は最終処分場行きだった廃棄物が、有用な建設資材として生まれ変わります。

廃棄物処理の課題と背景

建築物の解体現場では、コンクリートや木材、プラスチックなどが混ざった建設混合廃棄物が大量に発生します。中間処理施設での選別後に残る「ふるい下残さ」は、小さな異物を含むため再利用が困難でした。日本の最終処分場の残余容量は減少の一途をたどっており、廃棄物削減は建設業界の重要課題となっています。

TAST工法を応用した開発プロセス

今回開発された技術は、大成建設の既存技術「TAST工法」を基盤としています。従来のTAST工法では建設発生土を原料としていましたが、新技術ではふるい下残さを主原料として使用します。

開発にあたっては、まず室内での基礎実験から始め、ふるい下残さの物理的・化学的特性を詳細に分析しました。その後、配合比率や添加剤の種類を調整する実験を繰り返し、最適な製造方法を確立。最終的には実際の現場での試験施工を行い、実用性を検証しました。約1年半にわたる研究開発の結果、十分な品質のソイルモルタルが製造できることが確認されました。

安全性と強度の確保:詳細データ

ふるい下残さには様々な物質が含まれているため、環境への影響や強度不足が懸念されていました。新技術では、セメント固化処理によって有害物質の溶出を抑制し、必要な強度を確保することに成功しています。

実際の測定では、7日強度が目標値の100kPaを大きく上回りました。また、有害物質の溶出試験においても、六価クロムや砒素などの全項目で土壌環境基準値を下回る結果が得られています。

実用化の第一歩:木造人道橋への適用事例

この技術は既に、大成建設技術センター(横浜市戸塚区)に建設された木造人道橋の橋台周辺充填工事に適用されています。約8トンのふるい下残さが再利用され、同量の廃棄物が最終処分場に送られることを防ぎました。

施工後も、強度低下や有害物質の溶出などの問題は発生していません。この成功事例は、この技術の実用性と信頼性を示す重要な一歩となりました。

循環型社会への貢献と今後の展望

両社は今後、この技術の本格的な普及を目指しています。

さらに、ふるい下残さ以外の建設副産物など、より広範囲な廃棄物の有効活用が期待されます。建設副産物の再利用促進と最終処分量の削減は、資源の有効活用と環境負荷低減につながります。この取り組みは、建設業界における循環型社会の実現に大きく貢献するものと期待されています。

専門用語解説

・建設混合廃棄物:建設工事から発生する廃棄物で、がれき類や木くず、プラスチックなど様々な材料が混在したもの

・中間処理:廃棄物を減量・減容するための処理工程で、焼却・破砕・選別などを行う

・ふるい下残さ:中間処理で10mm以下のふるいにかけた後に残る微細な土砂と異物の混合物

・ソイルモルタル:土に水と固化材を加えて流動性を持たせた建設材料

・TAST工法:大成建設が開発した建設発生土再利用技術、Taisei Advanced Soil Treatment methodの略

出典情報

大成建設株式会社リリース,建設混合廃棄物由来の再生土砂をソイルモルタルに有効活用-建設副産物の再生利用と最終処分量低減を実現-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250220_10342.html