国土交通省発表、令和6年の新設住宅着工戸数、2年連続減少も地域で明暗、貸家市場は底堅く推移

国土交通省が令和6年の建築着工統計調査報告を発表。国内の住宅建設市場は引き続き調整局面にあることが明らかになりました。特に注目すべきは、地域による格差が鮮明になってきていることです。以下、市場の動向を詳しく見ていきましょう。

住宅着工全体の動向

新設住宅市場は、全体として緩やかな縮小傾向が続いています。令和6年の新設住宅着工戸数は79万2,098戸を記録し、前年と比べて3.4%減少しました。これは2年連続の減少となります。また、床面積も6,086.9万平方メートルと前年から5.2%減少し、こちらは3年連続のマイナスとなっています。

利用関係別の状況

住宅着工を利用形態別に見ると、以下のような状況となっています。

貸家市場の底堅さが際立っている一方で、分譲住宅市場の弱さが目立つ結果となりました。

【持家(個人住宅)】

住宅ローン金利の上昇や建築資材の高騰の影響を受け、3年連続で減少しています。

・年間着工戸数:21万8,132戸

・前年比2.8%減

【貸家(賃貸住宅)】

賃貸需要の底堅さを反映し、比較的小幅な減少に留まりました。

・年間着工戸数:34万2,044戸

・前年比0.5%減

・最大のセグメント

【分譲住宅】

マンションと一戸建の両方で大きな落ち込みを見せています。

・年間着工戸数:22万5,309戸(前年比8.5%減)

・マンション:10万2,427戸(前年比5.1%減)

・一戸建住宅:12万1,191戸(前年比11.7%減)

地域別の動向分析

住宅市場の動向は地域によって大きく異なり、特に大都市圏と地方部での格差が顕著になっています。また、同じ大都市圏の中でも、地域特有の需要動向により、異なる傾向が見られます。

【首都圏】

日本最大の住宅市場である首都圏では、全体としては減少傾向にありますが、貸家市場が底堅さを見せています。

・総戸数は前年比2.9%減

・貸家のみ微増(0.0%増)と底堅い動き

・分譲住宅は6.6%減

・マンション3.3%減、一戸建住宅10.2%減

【中部圏】

製造業の好調さを背景に、マンション市場が特に活況を呈しています。

・総戸数は前年比1.4%減

・マンションは17.6%増と大幅増を記録

・一戸建住宅は12.8%減と対照的な動き

【近畿圏】

関西圏では貸家需要が特に強く、市場を下支えしています。

・総戸数は前年比0.5%減とわずかな減少

・貸家は4.2%増と好調

・分譲住宅は7.0%減

【その他地域】

地方部では全般的に弱い動きとなり、特に分譲住宅市場の落ち込みが顕著です。

・総戸数は前年比5.7%減

・分譲住宅は16.0%減と大幅な減少

・マンション17.5%減、一戸建住宅15.3%減

建築工法別の特徴

建築工法の選択にも変化が見られ、従来型のプレハブ住宅が減少する一方で、ツーバイフォー工法が増加するなど、住宅建築の多様化が進んでいます。

【プレハブ住宅】

3年連続で減少が続いています。

・着工戸数:9万3,077戸(前年比10.0%減)

・新設住宅全体に占める割合は11.8%

【ツーバイフォー工法】

3年ぶりに増加に転じました。

・着工戸数:9万5,095戸(前年比4.7%増)

・環境配慮や施工効率の面で評価

今後の市場展望

令和6年の住宅市場は、全体としては調整局面が続いているものの、いくつかの注目すべき動きが見られます。特に、以下の点が今後の市場動向を見る上で重要なポイントとなるでしょう。

・貸家市場の底堅さ:大都市圏を中心に需要が堅調

・地域による格差:大都市圏と地方部での二極化が進行

・建築工法の変化:環境配慮型工法への関心が上昇

・マンション市場の地域差:中部圏での顕著な回復

市場関係者は、これらの変化を注視しながら、それぞれの地域特性や需要の変化に対応した戦略を立てていく必要があります。特に、地域ごとの需要特性を見極めることが、今後ますます重要になってくるものと考えられます。

出典情報

国土交通省リリース,建 築 着 工 統 計 調 査 報 告 令和 6 年計,https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001859940.pdf