建設マスター制度とは?認定されるメリット・条件一覧・年収について解説
国土交通省が運営している「建設マスター制度」に認定されれば、建設業界の施工従事者は、今よりも良い待遇を受けやすくなります。では、具体的にどのような制度で、どういった業種の従事者が認定の対象となるでしょうか。
そこでこの記事では、建設マスター制度について、認定される業種一覧やメリット、年収を説明したのち、建設マスターに求められる条件を詳しく解説します。
目次
建設マスター制度とは
建設マスター制度とは、建設業において特に優秀なスキル・技術をもつことはもちろん、後進で働いている従事者の指導や育成に貢献している施工人材を顕彰する制度です。
平成27年度よりスタートした制度であり、建設業界における人材の育成およびインセンティブの向上を目的に立ち上げられました。
なお、2025年1月時点の建設マスターは、全業種で1万1,935名が登録されています。令和6年度では建設マスター452名、建設ジュニアマスター121名が登録されている状況です。
建設ジュニアマスター制度との違い
建設マスター制度のひとつに、青年優秀施工者を対象とした建設ジュニアマスター制度というものも用意されています。参考として以下に、2つの制度の違いを整理しました。
建設マスター | 建設ジュニアマスター | |
年齢 | 40歳以上65歳以下 | 40歳未満 |
経験年数 | 20年以上 | 10年以上 |
上記の違いはあくまで一部の抜粋ですが、主に年齢や経験年数に分けて顕彰する対象が異なります。
建設ジュニアマスターという名称についても、ジュニア(年少者・息子)というキーワードがつくことから学生向けの制度だと思われがちですが、20代後半から30代後半にかけての建設従事者が対象である点に注意してください。
建設マスター制度の業種一覧
建設マスター制度として顕彰される業種を一覧にまとめました。
各業種において、設定されている条件を満たす優秀な実績を残している人材であれば、建設マスターになれる可能性が高いです。
なお、建設マスターとして顕彰されるためには、自己申請ではなく次のような団体等からの推薦を受けなければなりません。
- 都道府県知事
- 建設業者団体の長
- 国土交通省地方整備局長
発注者との密接なコミュニケーションはもちろん、評価されるための工夫が必要になると覚えておきましょう。
建設マスター制度に顕彰されるメリット
建設マスター制度で顕彰されることには、対象となる従業員のみならず、企業にとってメリットがあります。詳しいメリットを解説しているので、ぜひ顕彰に向けた対策をスタートしてみてください。
企業としての実績や信頼につながる
まず建設マスターとして従業員が顕彰されると、従業員名はもちろん会社情報が運営ページ上に公表されます。運営ページは多くの発注者がチェックしていることから、場合によっては建設マスターへの登録が発注のきっかけにつながるかもしれません。
また建設施工の業務では、複数の業者による提案によって委託先を決めるというケースもあります。他社よりも優れてるという証明に建設マスターが役立つため、企業としての実績になるのはもちろん、発注者からの信頼獲得につながるのがメリットです。
顕彰者の年収・待遇アップにつながる
前述したように、顕彰者としての評価が会社の役に立てば、その分だけ従事者は給与アップや待遇アップを期待できます。
例えば、資格手当のように建設マスターへ認定されることで、月額数万円の支給をするなどの社内制度ができるかもしれません。従業員の年収アップなども期待できるため、働き甲斐をつくりやすい制度だと言えるでしょう。
また、建設マスターとして顕彰されるために、従業員がスキルアップに力を入れ出すのも魅力です。社内全体の意欲の向上につながることも含め、メリットの多い制度だと言えます。
建設マスター制度に認定された場合の年収
建設マスター制度に認定されれば、顕彰された本人の給与アップ・年収アップを期待できます。では、どれくらいの年収アップを期待できるのでしょうか。
まず、国土交通省が定めている「建設キャリアアップシステム(CCUS)」では、以下に示す4段階で能力を評価しており、そのなかでも建設ジュニアマスターはレベル3、建設マスターはレベル4に該当すると言われています。
出典:国土交通省「【CCUSポータル】能力評価制度について」
また同じく国土交通省が公開している「建設キャリアアップシステム(CCUS)におけるレベル別年収の公表」では、各レベルに応じた年収体系がまとめられています。参考として建設ジュニアマスター・建設マスターの顕彰を受けた場合の年収イメージの一例を整理しました。
レベル3(建設ジュニアマスター) | レベル4(建設マスター) | |
橋梁 | 最大979万円 | 最大1,046万円 |
防水施工 | 最大802万円 | 最大857万円 |
トンネル | 最大979万円 | 最大1,046万円 |
左官 | 最大772万円 | 最大825万円 |
型枠 | 最大808万円 | 最大863万円 |
とび | 最大796万円 | 最大851万円 |
土工 | 最大776万円 | 最大804万円 |
比較として、国税庁が公開している「平均給与」の情報によると、日本国内の平均年収は461万円です。この数値の2倍近い収入を得られるようになることから、非常に魅力的な制度だということがわかります。
現在の仕事での収入アップはもちろん、転職などでも力を発揮するため、ぜひ会社のためだけではなく自分のために顕彰を目指してみてください。
建設マスター制度に認定される条件
企業だけではなく、個人としても魅力的な効果を得られる建設マスター制度について、これから顕彰を目指して取り組みたいと考える人も多いでしょう。参考として以下に、認定に必要な条件を整理しました。
建設マスター・建設ジュニアマスターでそれぞれ、要件をまとめています。
建設ジュニアマスター | 建設マスター | |
対象者 | 建設現場において工事施工に 直接従事している個人 | 同左 |
経験年数 | 建設現場業務に10年以上直接従事 | 建設現場業務に20年以上直接従事 |
年齢 | 年齢40歳未満 | 40歳以上65歳以下 ※相当な理由があれば35歳以上 40歳未満および66歳以上も対象 |
事故 | 自己の責任に関する無事故期間が 3年以上 | 同左 |
それぞれ「技術・技能が優秀であること」「合理的な工事施工を実施していること」「後進の指導・育成に力を入れていること」「安全・衛生対策を徹底していること」「他現場の模範となっていること」などがチェックされ、建設マスターとして推薦されます。
難易度は高いものの、安全と効率を考えて施工現場を回せる人材であれば、検証の確率を高めやすいと覚えておきましょう。
まとめ
建設マスターは、建設業界の施工従事者のうち、発注者を含めた団体から高く評価された人材を顕彰する制度です。
企業の実績になることはもちろん、本人の給与アップ・待遇アップも期待できます。厳しい条件はあるものの、それ以上に魅力をもつ制度ですので、ぜひ顕彰を受けるための準備をスタートしてみてください。