大成建設がIGCCスラグ活用の環境配慮型コンクリートを国内初採用 千葉の洞道工事で実証へ

東京電力パワーグリッド株式会社(東電PG)と大成建設株式会社は、千葉県印西市で進める洞道新設工事において、画期的な環境配慮型コンクリートの実用化に成功しました。このコンクリートの特徴は、福島県の石炭ガス化発電所から生まれる副産物「石炭ガス化スラグ」を有効活用している点で、日本初の取り組みとして注目を集めています。

なぜ新しいコンクリートが必要なのか

従来のコンクリートづくりでは天然の砂を使用するため、自然環境への影響が懸念されてきました。この課題を解決するため、今回採用されたコンクリートでは、福島県内のIGCC(石炭ガス化複合発電)施設から生まれる石炭ガス化スラグを砂の代わりとして活用しています。このスラグは、コンクリートの品質を確保するため、JIS規格に沿って粒の大きさと形が調整されています。

環境に優しい二つの技術の融合

今回の工事では、大成建設が独自に開発した環境配慮コンクリート「T-eConcrete®/セメント・ゼロ型」に、石炭ガス化スラグを組み合わせて使用しています。T-eConcreteは、通常のセメントを使用せず、高炉スラグと特殊な反応剤で固めることができる革新的なコンクリートです。この技術により、コンクリート材料の製造時に発生するCO2を約80%も削減できます。

相乗効果がもたらす品質向上

この新しい組み合わせには、予想以上の利点がありました。通常、石炭ガス化スラグを使用すると材料の分離(ブリーディング)が起きやすく、耐久性が低下する懸念がありました。一方、T-eConcreteは粘性が高いため、やや流動性が低いという特徴がありました。しかし、両者を組み合わせることで、これらの課題が互いに補完し合い、結果として従来以上の品質と性能を実現することができました。

福島の復興と環境保護への貢献

この取り組みの背景には、福島の復興支援という側面もあります。使用されている石炭ガス化スラグは、福島イノベーション・コースト構想の一環として建設された勿来IGCCと広野IGCC発電所から供給されています。これらの発電所は、従来の石炭火力発電と比べて発電効率が高く、燃料使用量とCO2排出量の削減にも貢献しています。

循環型社会の実現に向けて

東電PGと大成建設は、この新しいコンクリートの採用を通じて、循環経済(サーキュラーエコノミー)の構築を目指しています。天然資源の使用を抑制しながら、高品質な建設材料を生み出すこの取り組みは、環境保護と社会インフラの整備を両立する新しいモデルとして期待されています。

今後の展望

両社は、この革新的なコンクリートの活用を通じて、持続可能な社会の実現と環境負荷の低減に取り組んでいくとしています。また、この技術が建設業界に広く普及することで、天然資源の保護や温室効果ガスの削減にさらに貢献することが期待されています。

この取り組みは、環境保護、地域復興、技術革新という三つの観点から、建設業界の新しい可能性を切り開くものとして注目されています。今後、この技術がどのように発展し、社会にどのような影響をもたらすのか、建設業界関係者から大きな期待が寄せられています。

出典情報

大成建設株式会社リリース,国内初、石炭ガス化スラグ入り環境配慮コンクリートをシールド工事に採用T-eConcrete®/セメント・ゼロ型に福島復興電源由来の再生資源を有効活用,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2025/250120_10300.html