ペーパーレス化を建設業に取り入れよう!導入するメリット・デメリットや事例を解説

事務所内に大量の書類が溜まっている、現場で紙の資料に直接書き込んでいるという企業は、ペーパーレス化に取り組むことが重要です。特に建設業は、数百ページにものぼる納品資料を大量に管理している場合もあるため、早急なペーパーレス化が欠かせません。

そこでこの記事では、建設業にペーパーレス化を取り入れるメリット・デメリットを解説したのち、企業事例を紹介します。

建設業界に必須のペーパーレス化とは

ペーパーレス化とは、紙媒体で管理している情報を電子化し、データとして管理・保存する手段です。2019年4月1日から施行した働き方改革をきっかけに、導入を始める企業が増えてきました。

そして建設業界は、次の理由からペーパーレス化との相性が良い業界だと言われています。

  • 成果品を紙の書類として納品する文化が根強い
  • 紙の書類を使いながら打ち合わせをすることが多い
  • 現場作業でも紙の書類を使って情報を管理している

例えば建設業界では、業務の納品データを紙の書類として納品する指示を受けることがよくあります。なかには1業務で厚さ10cmものチューブファイルを大量に納品することも多く、社内には過年度の書類も含め、膨大な量の書類が溜まっていくのが特徴です。

また、発注者から過年度業務の成果品を受け取る際にも紙の書類で情報を共有するなど、非常に手間のかかる業務スタイルとなっています。そのため、ペーパーレス化に取り組めば、今までより効率的な業務を実施できると期待されているのです。

国土交通省にて原則電子化がスタート

働き方改革の波を受け、建設業界でもすでにペーパーレス化が普及しています。

例えば国土交通省では「完成図や完成写真などの提出を原則電子に一本化」という発表もされており、納品時の情報を電子データでの提出に一本化すると決められています。

出典:国土交通省「完成図や完成写真などの提出を原則電子に一本化」

ただし、建設業界全体のペーパーレス化が完了したわけではありません。発注者のなかには過年度資料を紙のまま保管している場所も多く、また現場作業などに紙の資料を出力して持ち歩いているなど、電子化できずに留まっている企業もあります。

よって以下より、ペーパーレス化に取り組むメリット・デメリットのほか、実際に取り組んでいる企業事例を整理しました。どのようにペーパーレス化に取り組むべきかわからない方はぜひ参考にしてみてください。

ペーパーレス化に取り組むメリット

ペーパーレス化に取り組めば、業務効率化に役立つ2つのメリットを得られます。

現場作業を端末操作だけで完結できる

ペーパーレス化に取り組めば、スマートフォンやタブレットといった端末でデータを閲覧・編集できるようになります。つまり、現場作業で紙を持ち歩く必要がなく、端末ひとつあれば、必要な情報をチェックできるのはもちろん、資料の編集に対応できるのがメリットです。

普段から現場に大量の書類を持ち歩く人もいますが、出力を忘れた場合に現場まで印刷しに戻る必要があるほか、紙の書類を紛失するリスクがあります。

一方でペーパーレス化に取り組めば、現場で持ち歩くものは端末ひとつです。大量の書類を持ち歩く必要がなくなり、必要書類を探すためにバッグをおろして書類を探すという手間がかからなくなります。

データ入力の二度手間を解消できる

ペーパーレス化により書類の電子化ができれば、現場作業の際に発生するデータ入力の二度手間を解消できるのがメリットです。

例えば、現地踏査や現場点検を実施する際には、紙の書類を出力してペンで情報を書き込んでいくのが一般的な動き方でした。しかし、帰社後にデータをもう一度パソコンに入力し直さなければならないほか、記入者の文字のうまさによってはデータ入力者が情報を読み取れないという問題がありました。

対してペーパーレス化をすれば、端末上にタッチペンで情報を記述できます。利用するツールによっては、書き込んだ文字を文字情報としてデータ化してくれるもの、Excelのように入力できるものもあり、現場でデータ入力を完了できるのが魅力です。

帰社後の作業を減らす効果を期待できるため、残業時間を削減できるなど、建設業界における長時間労働の課題をペーパーレス化が解決してくれます。

ペーパーレス化に取り組むデメリット

メリットの多い建設業界のペーパーレス化ですが、2つのデメリットがある点に注意しなければなりません。

現場作業が多いため端末を破損しやすい

建設業界では、次のような不安定かつ危険な場所で作業をするのが一般的です。

  • 山道
  • 道路
  • 河川

そのため、ペーパーレス化をして端末を持ち歩きながら作業をする際に、その端末を地面などに落としてしまうと、そのまま壊れてしまうことも少なくありません。

また端末が壊れてしまうと、データを閲覧・編集できないようになることにも注意が必要です。中身のデータはクラウド管理をすることで安全性を維持できますが、端末自体は買い替えが必要になるほか、予備を用意するというコスト負担がかかるデメリットがあります。

うまく社内に浸透しない場合がある

建設業界には高齢の方が多い影響もあり、ペーパーレス化を導入してもうまく活用してくれない人が出やすい点に注意しなければなりません。なかには「昔ながらのやり方がいいから」という理由で、紙媒体の資料を使い続ける人もいます。また、電子化したデータを出力してから閲覧するという人もいるのが実情です。

どんなに便利な手段であっても、使ってくれる人がいなければ廃れてしまいます。取り組みを成功させるためにも、ペーパーレス化に取り組む前に、情報を周知しておくことはもちろん、社内の全員が扱えるように社内講習会を実施するなどの準備をしておくのがよいでしょう。

ペーパーレス化の取り組み事例

ペーパーレス化のアイデアとして、実際に建設業で取り組まれている事例をまとめました。

企業名ペーパーレス化の手法概要
大成建設建築図面・現場管理アプリの導入クラウドベースで膨大なデータを管理できるDXアプリを導入したことにより、大量のデータを電子化し、現場管理に活用
清水建設図面チェックの電子化PDF上に電子記入できるソフトを導入したことで、印刷せずに赤黄チェックや指摘ポイントを共有
鹿島建設施工管理アプリの導入大量のデータを施工管理アプリ内に電子データとして保存し、クラウドを通じて関係者全員が閲覧できる体制を構築、また管理に手間のかかる入退場、調整協議などもアプリ内で完結

特に大手建設企業は、ペーパーレス化のアプリを導入して、業務の効率化を実現しています。なかでも現場管理アプリは、工事業務の一連の流れのデータ管理が可能です。今まで紙の資料で管理していた次のような情報を電子データとして取り扱えます。

  • 現場関係者の情報
  • 工事進捗状況
  • 工事関連資料
  • 写真台帳

また、ペーパーレス化のみならず、ほかの業務効率化機能が合わさっているアプリなども数多く登場しています。まずは自社の課題をリストアップしてみて、役立ちそうなアプリがないかを探してみてはいかがでしょうか。

まとめ

働き改革の施行をきっかけに導入が進んでいるペーパーレス化は、特に建設業界との相性が良い取り組みのひとつです。

手書き後のデータ入力の手間を削減できるのはもちろん、関係者がすぐに必要な情報を見つけやすくなる、社内で管理している紙の書類の保管場所が必要なくなるなど、さまざまなメリットがあります。業務効率化を期待できる取り組みですので、この機会にペーパーレス化を目指してみてはいかがでしょうか。