2025年問題で建設業に何が起きる?人手不足が続く業界で今できること
国民の5人に1人が後期高齢者に変わる2025年問題は、建設業界に多きな打撃を与える課題として浮上しています。では、人手不足に悩む建設業界は今後どうなっていくのでしょうか。
そこで本記事では、2025年問題の概要を説明したのちに、建設業界で起こる問題の具体例や解決策についてわかりやすく解説します。
目次
建設業界を悩ませる2025年問題とは
2025年問題とは、日本にいる約800万人の団塊の世代が、後期高齢者に該当する75歳以上を迎え、国民の5人に1人が後期高齢者、3人に1人が65歳以上になると言われている超高齢化社会である、日本ならではの問題です。
内閣府が公開している「令和6年高齢社会白書」でも、令和5年時点の集計で65歳以上の高齢化率が29.1%と、想定どおりの結果が出ていることがわかっています。
出典:内閣府「令和6年高齢社会白書」
そして建設業界は、2025年問題の影響を強く受けると問題視されています。例えば、日本建設業連合会が公開している「建設労働」のデータによると、全産業と比べて55歳以上の割合が15%ほど高い状況です。
出典:日本建設業連合会「建設労働」
そのため、建設業界では2025年問題に合わせて大量の離職が起きると危惧されています。2025年問題を迎える本年、どのような影響が起こるのか今後の動きを注視しなければなりません。
2025年問題で発生する建設業界の問題
2025年問題が実現すると、建設業界でさまざまな問題が発生する恐れがあります。今後起こるかもしれない問題を3つまとめました。
従事者不足による工事の停滞
2025年問題が起きると、建設業界で働く人材の減少によって、企業による工事の受注数が減って工事業務が停滞するかもしれません。
まず、国土交通省が公開している「建設業を巡る最近の状況」の資料より、建設業界はもともと人手不足に悩まされている状況です。以下に関係する情報を引用しました。
現在の就労者の年齢構成等を踏まえると、2018 年度は約329 万人、5年目は約326 万人となると見込まれる。他方、建設業における働き方改革の進展を踏まえて必要となる労働力は、2018 年度は約331万人、5年目は約347万人と見込まれる。その結果、2023年時点では21万人程度人材が不足する見通し。
引用:国土交通省「建設業界を巡る最近の状況」
そういったなか、建設業に従事する高齢者が大量に離職をすると、人手不足がさらに加速します。工事業務は人力での作業に依存することから「人がいない=工事ができない」という悪いサイクルに陥りやすくなるのが問題です。
人手不足倒産
2025年問題により高齢従事者の大量離職が起きると、今後多くの建設企業で人手不足倒産が起きると危惧されています。
なお、人手不足倒産は実際に起きている問題であり、労働政策研究・研修機構が公開している「【特別調査:各地域における企業倒産の動向】」によると、次のような事例が起きている状況です。
- 2024年1~8月に岩手県で倒産した企業の約3割が建設業
- 北陸地域でも2024年の倒産件数が最多に
もちろんほかの業界でも人手不足倒産は起きていますが、そのなかでも群を抜いて大きく問題化しているのが建設業界です。人手不足倒産により会社が減れば、その分だけ業務に対応できる母数が減り、ほかの企業へしわ寄せが行ってしまいます。
団塊の世代以降は徐々に出生率が減っているということもあり、2025年問題以降は、今後さらに人手不足倒産の数が増えていくと考えられています。
一人当たりの業務時間の増加
2025年問題は、企業経営における問題だけではなく、一企業の内部でも問題化しやすいと言われています。
なかでも問題視されているのが、人手不足によって受注数過多となり、一人当たりの業務時間が増加するという点です。例えば5人で回すことができていた5つの業務があったとき、高齢者の離職により3人で5つの業務を回さなければならなくなる企業も出てくるでしょう。
今までの業務時間を1.0とした場合、上記の条件だと約1.7の業務量となります。その分だけ、残業をしなければ業務が終わらない状況に陥ることから、各業務担当者の過労死問題に発展するかもしれません。
もちろん36協定により法定労働時間の制限はあるため、ルールを超過して強制してくる企業はないでしょう。しかし、離職した人たちが残した仕事を誰がやるのか、その問題を解決できない点が今後の課題として挙がってくるのも事実です。
2025年問題のために建設業で今できること
2025年問題を乗り越えるためには、建設業の各社が離職者数に応じて、効率化などの対策を取ることが欠かせません。参考として、今後建設業でできるアイデアをまとめました。
新規人材の確保
なかなか新規の人材が集まらないと悩む企業は、今後、次のような方法で新規人材の獲得に力を入れることで、2025年問題を乗り越えることができるかもしれません。
- Webを活用した人材採用に取り組む
- “待ち”の採用活動を行わない
積極的に求職者がいる場所に顔を出すことはもちろん、自社から率先したPRをおこなうことが人材採用につながります。ただ待つだけで「人が来ない」と嘆く企業も多いため、人材採用の取り組みに力を注いでみてはいかがでしょうか。
業務を仕組み化する
一度現在の業務体制をリストにまとめ、何が業務負担になっているのかを見える化することで、人手不足の問題を解決しやすくなります。
例えば、部署全体で課題となっている時間のかかる作業の代替案を用意できれば、作業にかかる時間分の労力を削減できるでしょう。また、自社の得意分野・不得意分野を明確化し、不得意な部分を得意な企業に再委託するなど、動き方を調整することが2025年問題の解決につながるかもしれません。
「人が足りない=仕事に対応できない、社内がパンクする」というのも確かですが、なかには余計な作業に時間を浪費している企業も見つかります。無駄をなくし業務を仕組み化できれば、人材不足を補える場合もあるので、一度社内の状況を見える化してみてはいかがでしょうか。
作業効率化ツールを導入する
2025年問題を解決するために重要だと言われているのが、作業効率化ツールの導入です。参考として以下に、作業効率化ツールの一例をまとめました。
- BIM/CIM
- 工事管理システム
- 電子野帳
- クラウド
例えば、工事管理システムを導入すれば、業務全体の見える化のほか、現場で持ち歩く資料の電子化に対応できます。誰がどこで何をしているのか、どこまで進んでいるのかをシステム上で管理できるのが特徴です。なかにはスマートフォンといった端末と連携して、入退場管理やグループチャットなどに対応できる製品があるので、導入することによって移動時間や管理の手間を削減しやすくなります。
また、作業効率化ツールを導入すれば、人力で対応している業務や複雑化して時間のかかる業務を、ツールやシステムの導入で解決できます。1人当たりの仕事量が1.2倍(一例)になるなど、1人で対応できる業務量を増やすことで、人材の減少に対応できるのがメリットです。
まとめ
2025年問題を迎えてしまった今年、実際に人手不足の問題が発生しつつあります。そういったなか建設業界で今できることは、人材が減った分をどのように補うのか検討することです。
人材採用の強化や、効率化に関する取り組みなど対策できることは複数あるため、この機会に自社で何ができるのかを検討してみてはいかがでしょうか。