大林組、建設現場の鉄スクラップを循環利用へ 解体から新築まで一貫した環境対策を展開

大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、建設業界の環境対策として画期的な取り組みを始めました。建物を解体する際に出る鉄材を新しい建物の建設に再利用する「水平リサイクル」という仕組みを導入します。この取り組みでは、解体現場から出る約1,000トンもの鉄材を、効率的に再利用することを目指しています。

なぜ今、鉄材のリサイクルが重要なのか

建設業界では、2050年までに温室効果ガスの排出をゼロにする「カーボンニュートラル」の実現を目指しています。建物には設計から解体までの一生があり、その過程で発生する二酸化炭素(CO2)を「ホールライフカーボン」と呼びます。特に建材の製造から施工までの段階で発生する「アップフロントカーボン」の削減が、建設会社にとって重要な課題となっています。

新しいリサイクルの仕組み

従来の鉄材リサイクルでは、解体現場から出た鉄材がどのように再利用されるのか、その行方を追跡することが難しいという課題がありました。また、輸送経路も効率的とは言えず、必ずしも建設用の材料として再利用されるとは限りませんでした。

大林組は、この問題を解決するため、以下の関係者と協力して新しいリサイクルの仕組みを作りました。

・建材商社

・金属リサイクル事業者

・電炉鉄鋼メーカー

この仕組みでは、解体現場から出た鉄材を電炉で溶かして新しい鋼材に生まれ変わらせ、それを建設現場で使用するまでの全工程を最適化します。これにより、輸送時のCO2排出量を減らすことができます。

トレーサビリティの確立

建材がどのように製造され、どのような環境への配慮がなされているかを確認できる「トレーサビリティ」が重要視されています。新しい仕組みでは、鉄材の履歴を追跡できるようになり、環境への配慮を具体的に示すことが可能になります。

■具体的な成果:北青山プロジェクト

この取り組みの第一弾として、東京都港区北青山三丁目の解体工事で実施されます。ここでは約1,000トンの鉄材をリサイクルし、大林組が手がける新築工事で使用します。この方法により、新しい鉄材を使用する場合と比べて、製造時のCO2排出量を約60%も削減できる見込みです。

今後の展開計画

■2024年度の展開:

・首都圏での本格実施

・関西地域での開始

・効率的な輸送方法の確立

■2025年以降:

・全国規模での展開

・協力事業者網の拡大

・さまざまな建材への応用

水平リサイクルとは

建設業界での「水平リサイクル」は、建設現場から出る廃材を同じ種類の建材として再生利用することを指します。

・コンクリートの破片を新しいコンクリートの材料として使用

・アスファルトを再び道路舗装材として活用

このような取り組みにより、貴重な資源を無駄なく使い、最終的な廃棄物を減らすことができます。

環境への貢献

この新しいリサイクルの仕組みには、いくつかの重要な効果があります。

・CO2排出量の大幅な削減

・資源の効率的な利用

・廃棄物の削減

・環境負荷の低減

大林組は、この革新的な取り組みを通じて、環境に優しい建設業の実現を目指しています。建材のリサイクルや再利用を積極的に進め、持続可能な社会づくりに貢献していく方針です。この取り組みは、建設業界全体の環境対策のモデルケースとなることが期待されています。

出典情報

株式会社大林組リリース,建設現場で発生する鉄スクラップの水平リサイクルフローを構築し、アップフロントカーボン削減を推進 大林組解体現場で発生する約1,000tの鉄スクラップを大林組建設現場で循環利用,https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20241126_1.html