大成建設が階間移動システム「T-MoveX」を開発、建設ロボットで現場の生産性を向上させる

大成建設株式会社(相川善郎社長)は三成研機株式会社(野田裕二社長)と共同で、建設ロボットの階間移動を可能にする新システム「T-MoveX」を開発しました。このシステムは、ロボット専用エレベーター「ROBOELE(ロボエレ)」とドローン専用の移動経路「Dシャフト」という2つの革新的な設備で構成されています。

開発の背景

建設業界では深刻な人手不足が続いています。この課題を解決するため、建設作業の自動化や効率化に向けたロボット技術の導入が進められています。しかし、建設現場でロボットを活用する際、最も大きな課題となっていたのが「階層間の移動」でした。
従来の仮設エレベーターは作業員や資材の運搬で常に混雑しており、ロボットとの共用は困難でした。そのため、ロボットの活動範囲は同一フロアに限定され、建設作業の効率化に大きな壁となっていました。
この問題を解決するために誕生したのが「T-MoveX」です。

ROBOELEの特徴と仕様

ROBOELEは、建設ロボット専用に設計された画期的な仮設エレベーターです。最大の特徴は、従来の仮設エレベーターと比べてコンパクトな設計(幅1500mm×奥行2250mm)であり、既存の仮設エレベーター開口部の余剰スペースや、最小限の新規開口部(1950mm×2450mm)に設置できる点です。
ロボットは内蔵された通信機能を使って自動的にROBOELEを呼び出すことができ、目的の階へスムーズに移動することが可能です。ROBOELEの主な仕様は以下の通りです。

・内部寸法:830mm×1130mm×2000mm
・昇降速度:40m/分
・揚程:200m
・積載重量:240kg以下
・用途:ロボット専用または人員輸送用として利用可能

Dシャフトがもたらす新たな可能性

建設現場でのドローン活用が今後さらに増加すると予想される中、「T-MoveX」システムにはドローン専用の移動経路「Dシャフト」も組み込まれています。幅1200mm×奥行1200mm程度の専用シャフトにより、ドローンの垂直移動がスムーズに行えるようになり、建設現場での活用範囲が大きく広がることが期待されています。

今後の展開と期待される効果

大成建設は2025年秋までにROBOELEの製作を完了させ、実証実験を経て、2026年度には実際の建設現場での本格運用を開始する計画です。「T-MoveX」の導入により、建設ロボットやドローンが建物内を自由に移動できるようになることで、以下のような効果が期待されています。

・建設現場の作業効率の向上
・人手不足問題の緩和
・施工管理の効率化
・建設現場全体の生産性向上
・DXによる建設業界の近代化促進

このシステムは、国が定めるDX認定制度(情報処理の促進に関する法律に基づき、デジタルガバナンス・コードの基本要件を満たす企業を認定する制度)の認定を受けており、建設業界のデジタル化を推進する重要な取り組みとして注目されています。
「T-MoveX」の開発は、建設現場の未来を変える革新的な一歩として、業界関係者から大きな期待が寄せられています。

出典情報

出典:大成建設株式会社リリース情報,建設ロボット活用に不可欠な階間移動システム「T-MoveX」を開発
-ロボット専用仮設エレベーターの開発により現場の生産性を向上-,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/241024_10187.html