GENIAC(ジーニアック)とは|生成AIの現状やゼネコン活用事例

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「GENIAC(ジーニアック)」についてピックアップします。経済産業省が行っている生成AIの支援事業で、注目のスタートアップ企業が多く採択されています。本記事ではGENIACの概要や採択企業の他、建設業での生成AI活用事例についてご紹介していきます。

GENIACとは

出典:経済産業省,GENIAC,https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/geniac/index.html,参照日2024.9.17

GENIAC(読み方:ジーニアック)とは、経済産業省が実施している生成AIの支援プロジェクトのことを指します。「Generative AI Accelerator Challenge」の頭文字を取った造語で、生成AIの開発力を強化していくために2024年2月から開始されました。

具体的には、生成AIのコア技術である基盤モデルの開発に対する計算資源の提供支援や、関係者間の連携促進、対外発信等を実施するプロジェクトが行われています。

生成AIとは

GENIACで推進されている「生成AI」とは、テキスト、画像、音声、動画などの新しいコンテンツを自動的に生成するAI(人工知能)のことを指します。具体的には、事前に大量のデータをディープラーニングさせたLLM(大規模言語モデル)を構築します。そして、学習内容に基づいて新しい情報や作品を作り出すのが特徴です。

生成AIはデザイン、ライティングといったクリエイティブな分野やビジネスにおける自動化ツールとして活用され、日常的なタスクの効率化にも役立っています。しかし倫理的な問題(誤情報、著作権侵害など)もあり、慎重な活用が求められています。国際的に開発競争が激化する中、速やかに開発力を強化していくことが重要です。

GENIACの概要

GENIACでは、主に下記のような支援が行われています。

  • 計算資源の利用料補助
  • 関係者間の連携促進・対外発信

基盤モデルを開発する上では、「計算資源の確保」が大きな課題となります。そのためNEDOが実施する「ポスト5G情報通信システム基盤強化研究開発事業」を活用し、計算資源の確保と利用料補助という形で支援しています。

計算リソースには、2024年7月にAWS(Amazon Web Services)が選定されたことが発表されています。具体的には「Amazon EC2 P5 インスタンス (p5.48xlarge) 」を提供しています。これは基盤モデルのトレーニングやデプロイに最適な計算リソースで、下記のスペックを備えています。

  • NVIDIA H100 Tensor Core GPU 8基
  • GPU メモリ合計640GB (HBM3)、合計30 TB のローカル NVMe SSD ストレージ
  • Elastic Fabric Adapter (EFA) および NVIDIA GPUDirect RDMA (リモートダイレクトメモリアクセス) をサポートする 3,200 Gbps のネットワーク帯域幅

また「開発者同士の連携」も非常に重要です。互いにネットワークを広めて知見を共有し合うとともに、生成AIの利活用を促進することが求められます。そのため海外有識者を招いたセミナーや、開発者ネットワーキングイベント、開発者・利用者のマッチングイベント等を順次実施しています。

GENIACの採択事業者

現在GENIACには、下記10の企業等が採択されています。

  • 株式会社ELYZA
  • 株式会社Kotoba Technologies Japan
  • 富士通株式会社
  • 株式会社ABEJA
  • Sakana AI株式会社
  • 大学共同利用機関法人 情報・システム研究機構
  • ストックマーク株式会社
  • Turing株式会社
  • 国立大学法人 東京大学
  • 株式会社Preferred Elements

東京大学の松尾・岩澤研究室や富士通といった歴史ある組織もありますが、スタートアップのSakana AIやTuringといった新興企業が多く採択されているのが特徴です。

建設業での生成AI活用事例

ここでは、建設業で生成AIが活用されている事例についてご紹介します。業務効率化に欠かせないツールとなっており、自社に合わせた独自の生成AIモデルを開発している事例も多いです。

清水建設|生成AIサービス「法人GAI」

出典:清水建設,全従業員向けに生成AIサービスの提供を開始,https://www.shimz.co.jp/information/others/20240326.html,参照日2024.9.17

清水建設では、生成AIサービス「法人GAI」を導入して全従業員向けに提供を開始しています。これはChatGPTをベースとした生成AIサービスで、調査、アイデア出し・文書生成、プログラミング補助、要約など、幅広い業務に活用されています。

他社サービスの導入には通常リスクが伴いますが、入力したデータが学習に利用されないことはもちろん、会社支給の端末からのみのアクセス制限や、利用履歴の記録といった安全・安心の機能が充実していることから採用されています。既に1,200名以上の従業員が利用しており、「プログラムが書けるようになった」「メール作成の時間が半分になった」「誤字・脱字が無くなった」「発表資料の構成づくりが楽になった」といった声が上がっています。

一方で調査・検索としての利用用途では、ハルシネーション(もっともらしい嘘)が多く発生することから、今後改善される予定です。

大成建設|生成AI活用「T-TwinVerse」

出典:大成建設,都市BIMと生成AIを活用したデジタルツインバース「T-TwinVerse」を開発,https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2024/240626_9969.html,参照日2024.9.17

大成建設は、デジタルツインバースシステム「T-TwinVerse」を開発しました。これは現実空間を仮想空間上に再現することで、2つの空間内のあらゆる情報をリアルタイムに相互連携できるシステムです。

多様なステークホルダーが持つ位置、音声、映像などの様々な情報を統合管理し、リアルタイムで高度な情報共有が可能となります。主に、下記4つの技術が活用されています。

  • ①当社保有の測量データと3D点群撮影を組み合わせて作成する高精度3D点群デジタルツインモデル技術
  • ②上記3D点群モデルから半自動でBIMモデルを生成するAI技術
  • ③街区のあらゆる情報を統合管理し、大規模言語モデルLLMを活用する街案内LLM
  • ④現地・遠隔地の双方向から接続可能なAR機能付きインターフェースである「QURIOS(キュリオス)」

生成AIによって、過去蓄積された観光情報や文化調査情報を活用した街案内ガイドが実現しました。さらに街高精度3D点群モデルを基に重要伝統的建造物をBIM化する際にも、生成AIが活用されています。

まとめ

生成AIはを上手に活用することで、文書作成や情報検索といった業務が大幅に効率化できます。GENIACによって日本発の革新的な生成AIが誕生すれば、国際力の強化にもつながると考えられます。