鹿島建設、ブレーカに搭載した3Dレーザスキャナで切羽のアタリ判定を自動化
鹿島(社長:天野裕正)は、次世代の山岳トンネル自動化施工システム「A⁴CSEL for Tunnel」(クワッドアクセル・フォー・トンネル)の開発を、神岡試験坑道(岐阜県飛騨市)で進めています。このたび、施工ステップの一つである発破後のアタリ※1判定の自動化と高速化を実現する「アタリガイダンスシステム」を、株式会社演算工房(社長:林稔、京都市上京区)と共同開発しました。
本システムは、ブレーカに搭載した3Dレーザスキャナで切羽形状のデータを取得し、アタリを定量的かつ自動で判別するものです。ブレーカを遠隔操作室から操作することにより、アタリ取り作業中の切羽の完全無人化が実現し、安全性が飛躍的に向上します。
※1 発破掘削後の地山のうち、設計断面内にあるためブレーカにより除去する必要がある部分
開発の背景
建設業界では、「熟練技能者不足」、「高い労働災害の発生率」、「低い生産性」が喫緊の課題であり、山岳トンネル工事も例外ではありません。
そこで当社は、これらの課題解決に向けて「A4CSEL for Tunnel」の開発を進めています。これは、山岳トンネル工事の掘削作業を6つの施工ステップ①穿孔 ②装薬・発破 ③ずり出し ④アタリ取り ⑤吹付け ⑥ロックボルト打設 に分け、各ステップで使用する重機を自動化し、それらを一元管理する次世代の建設生産システムです。
このうち④アタリ取りは、発破直後の岩盤が露出した切羽近傍で熟練技能者がアタリを判別し、ブレーカのオペレータに指示を出しながら行うため、技能者が肌落ち※2などに巻き込まれるリスクがありました。
そこで当社は2018年1月、アタリの確認作業を技能者による目視から3Dレーザスキャナでのスキャニングに置き換え、アタリを定量的に判別できるシステムを開発しました。これにより、判別者は切羽近傍にいなくてもアタリを高精度に測定できるようになりましたが、測定者はアタリ部分が示された画面をブレーカのオペレータに見せるために重機に近づく必要があるといった課題が残されていました。
※2 掘削後の地山表面の土砂や岩などがはがれ落ちること
「アタリガイダンスシステム」の概要と成果
「アタリガイダンスシステム」は、ブレーカに搭載した3Dレーザスキャナにより、切羽形状をスキャニングします。次に、そこで得られた点群をデータ化し3Dモデル化した後に、事前に登録されたトンネル設計断面のデータと重ね合わせて数値化することで、高精度なアタリ判定が可能になります。
これにより、従来はブレーカのオペレータと判別者の2名が必要だった切羽でのアタリ取りを、オペレータ1名で行うことができる上、アタリを定量的かつ自動で判別できるようになりました。
なお、スキャナを振動や飛石から守るため、計測時のみ自動で開閉する防護カバーと10Gの衝撃にも耐えることができる免震装置を設置しました。
今後の展開
今後、アタリ判定のさらなる高速化と精度向上を追求してまいります。併せて、遠隔操作の精度向上も検討していく方針です。
鹿島は引き続き、山岳トンネル工事の掘削作業における安全性および生産性向上を目指して、6つの施工ステップの自動化開発を進めてまいります。
神岡試験坑道 工事概要
場所: 岐阜県飛騨市神岡町
諸元: トンネル掘削延長321.3m 掘削断面積:アプローチ部43.9m2、自動化施工試験部73.5m2
(参考)
トンネル掘削面のアタリが一目瞭然!ガイダンスシステムを開発(2018年1月10日プレスリリース)
https://www.kajima.co.jp/news/press/201801/10c1-j.htm