ワイヤレス給電で走行中にEV充電|ゼネコンが実用化へ

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著者:小日向

トレンドワード:ワイヤレス給電

「ワイヤレス給電」についてピックアップします。スマホや家電で対応機器が次々と登場していますが、電気自動車が走行中に充電できる仕組みが開発されています。本記事ではワイヤレス給電の仕組みや、ゼネコンの取り組みについてご紹介します。

ワイヤレス給電とは

ワイヤレス給電とは、物理的な接続を必要とせずに電力を送受信する技術のことを指します。具体的には、電磁場を利用して電力を伝送する仕組みです。

ワイヤレス給電の技術は現在も進化を続けており、将来的にはより多くのデバイスで広く普及することが期待されています。

ワイヤレス給電の実用化事例

ここでは、ワイヤレス給電の具体的な実用化事例をご紹介します。身近な場所で既に普及している事例も多く、技術開発が進められています。

スマホ・家電

ワイヤレス給電は、スマホや家電製品の分野で幅広く活用されています。特にスマホは、充電パッドに本体を置くだけで完了するため便利です。

ケーブル端子を接続する必要が無くなる上、機種ごとに違う充電ケーブルを用意する必要も無くなります。端子の不具合が起こらないことで、トラブル防止につながります。

技術の進化とともにさらに多くの製品やデバイスがワイヤレス給電に対応し、利便性が向上することが期待されています。

電気自動車(EV)

ワイヤレス給電は電気自動車(EV)の分野でも活用され始めており、利便性や効率性を高めるための新技術として注目されています。

具体的には駐車場の送電コイルの上に停車することで、非接触のまま充電可能です。充電ケーブルを接続する動作が不要になることで、充電し忘れにもつながります。

さらに将来的には、道路に給電設備を埋め込むことで走行中に充電する方法も開発されています。ただし道路や駐車場への設置には高額な費用がかかるため、初期投資が大きいのが課題です。また有線充電と比べてエネルギー効率が低いことが多く、技術的な改善が求められます。

ワイヤレス給電のメリット

ここでは、ワイヤレス給電の主なメリットについてご紹介します。

ケーブルが不要

デバイスを充電パッドや充電エリアに置くだけで充電が開始されるため、ケーブルを探して接続する手間が省けます。またケーブルを差し込んだり抜いたりすることがないため、接続部が摩耗したり破損したりするリスクが減少します。

さらに家具や車内、公共スペースでワイヤレス充電機能を内蔵することで、デザインやレイアウトの自由度が増すのもメリットです。将来的に公共の場所にワイヤレス充電ステーションが整備されれば、ユーザーの快適性がさらにアップします。

走行中も給電できる

ワイヤレス給電は走行中に給電ができるため、電気自動車(EV)の航続距離が大幅に延びます。これにより、長距離ドライブや遠距離旅行がより現実的になってきます。

充電ステーションを探す必要が減少することで、旅行や移動の計画が柔軟に立てられるのもメリットです。充電ステーションでの待ち時間も無くなるため充電インフラの効率が向上し、多くの車両がスムーズに利用できるようになります。

また現在開発が進められている自動運転車は、停車せずに連続して運行することが求められます。走行中に給電できるシステムを導入することで自動運転車の稼働率が向上し、効率的な運行が可能になります。

ワイヤレス給電の仕組み・規格

ワイヤレス給電の仕組み・規格には、下記のような方式があります。

①電磁波方式

電磁波方式では、高周波の電磁波を使用して送信側から受信側に電力を送ります。電磁波には、マイクロ波とレーザー光の2種類があります。具体的には、IoTセンサ等で活用されています。

複数デバイスでの受電や、数m先への長距離伝送が可能です。そのため被災地や離島、山岳地、海底など、ケーブルを敷設できないところへの電力伝送を実現するものとして、技術開発が期待されています。ただし空間を介して電力を送信するため、効率が低くなる場合があります。

②電磁誘導方式(磁界共鳴方式)

電磁誘導方式は、現在ワイヤレス給電で最も主流となっている方式です。送電と受電の2つのコイルを用いて、磁界の共鳴を利用して給電します。送電・受電コイルが互いに共振する現象を利用しており、高性能なコイルや共鳴技術を使用するため、製造コストが高くなることがあります。

③電界結合方式

電界結合方式は、静電容量結合を利用した技術です。コンデンサの原理に基づいており、絶縁層(空気)を挟んだ送電側と受電側の電極に高周波を流し、電界を介して電力を伝送します。

形状の自由度や低発熱といった利点がある一方で、伝送距離や高電圧の必要性、大電力伝送時の電極サイズといった課題も存在します。

ワイヤレス給電の課題

ここでは、ワイヤレス給電の課題についてご紹介します。まだ開発段階にあるため、技術的な課題が残っています。

法整備が未熟

ワイヤレス給電技術は、多くの利便性を提供する一方で、法整備の未熟さという課題があります。明確な規制や基準が確立されていないため、新技術の導入が遅れる可能性があります。

法整備が進まないと、公的なインフラ整備も遅れがちになります。例えば、公共の充電ステーションや道路に埋設されたワイヤレス給電システムの導入が進まない可能性があります。

人体への影響が不明瞭

ワイヤレス給電技術の普及と利用拡大において、人体への影響が不明瞭であるという課題が存在します。電磁波を利用してエネルギーを伝送する際に人体に与える潜在的な影響について、科学的な合意が得られていない部分があります。

また科学的な知見が不足していることで、適切な安全基準を策定することが難しい場合があります。これにより、企業や消費者が安全性を確保するための具体的な措置を講じにくくなっています。

今後は国際的な規模での共同研究を促進し、異なる地域や文化における影響の比較・評価を行うことで、包括的な安全性評価をする必要があります。

ワイヤレス給電に関するゼネコンの取組

ここでは、ワイヤレス給電に関するゼネコンの取り組みについてご紹介します。大手ゼネコンでは、

大林組

https://www.obayashi.co.jp/news/detail/news20211117_1.html

大林組は、非接触で給電可能なEVの走行中給電システムの都市全体へのエネルギーマネジメントシステム(EMS)の技術開発に取り組んでいます。走行しながらの給電を可能とすることで、走行距離の延長と充電の利便性の向上を目指します。

常にEVと電力系統を接続することで、昼間に余剰となる再生可能エネルギーによる電気の有効活用も期待されています。

大成建設

https://www.taisei.co.jp/about_us/wn/2022/220921_8962.html

大成建設は、走行中の電気自動車(EV)に無線で電力を給電する道路「T-iPower Road」の実証実験を行っています。これにより大型車両や中型車両、商用車の航続距離が大幅に延び、EV化の課題解決に繋がることが期待されます。

具体的には、電界結合方式による無線給電道路(延長約40m)の施工を行っています。まずは高速道路での実用化を目指し、中型車両や商用車が走行できる10kW無線給電道路の技術開発を加速させ、EVの長距離・連続走行を可能にするシステムの確立を目指します。

まとめ

ワイヤレス給電は、スマホや家電といった様々な分野での活用が広がっています。今後道路への施工が実現すれば、電気自動車の普及に貢献します。大手ゼネコンでも技術開発が進められており、今後が期待されます。