現調作業の“手間”削減について考える|LiDARセンサーを活用したAI測量アプリ Scanat

住宅・建設業界の現調作業には多くの課題が

住宅・建設業界では従来のアナログな手法からの転換が求められつつある。建設工事現場における現地調査作業。特に住宅の内装工事などの小規模な現場となると、メジャーや紙とペンを使用したアナログな手法が未だ見受けられる。このような手法だと、関わる作業人員やその技術を教える育成の時間が必要となり、多くの工数がかかってしまう。

この現場で取得した情報を第三者へ伝達するためには、調査した寸法情報をもとに図面を生成し、同時に撮影した写真やメモを添付するなど、より工数がかかる作業が発生してしまう。この現場での調査コストを削減するためには、経験に基づいた効率的な寸法情報の取得や写真撮影などを行う必要があり、精度や情報レベルのばらつきを無くす必要がある。

Scanat(スキャナット)とは

Scanatは、「現実空間のデジタル化」を通じて現場の課題を解決するiOSアプリとして建設業界をはじめ、住宅業界や不動産業界、自治体など様々な業界で導入が進んでいる。iPhoneやiPadの上位モデルに搭載されているLiDARセンサーを活用して空間情報の記録を行うアプリで、土木・建築を問わず、建設工事の各工程にかかわる情報をデジタル化する。

誰でも簡単に操作をすることが可能で、現場での調査コストが削減されるだけでなく、高品質な3Dモデルが作成できるので、そのデータの活用先は使い手によって様々だ。2024年1月に国土交通省が運用する新技術提供システム「NETIS」にも登録され、全国的に活用の幅が広がりつつある。

Scanatを使った現調作業の新たな手法とは

冒頭で述べた現調作業の課題に対し、Scanatでは、iPhoneやiPadに搭載されたLiDARセンサーを活用するだけで、誰でも簡単に現実空間の記録を行うことが可能だ。計測の誤差は1%以下※と高精度で、mm単位の計測を行うことができる。

建築の知識が無い新人やアルバイトの従業員でも、迅速かつ正確に空間情報を記録することが可能で、寸法情報の取得や撮影のミスなどに伴う現場調査のやり直しは起こらず、現場へ行く回数も削減することができる。

現実空間の記録が新たな価値に

Scanatは現場での計測作業のみならず、各業務工程に変革を起こし新たな価値を生み出す。Scanatは従来の計測作業とは異なり、現実空間をそのまま共有することが可能なため、施主や発注者、協力会社とのコミュニケーションの齟齬が大幅に減少する。

Scanatが記録する3Dモデルにはあらゆる情報が含まれるため、業務によっては図面を生成せずとも確認したい箇所の状況と寸法を確認することができる。これまで、計測する→図面を生成する→不明箇所のため現場へ再訪する、といった工程を削減することができ、人手や時間などを別の業務に回すことができるのだ。

外構・土木領域でも活用が可能

Scanatは内装だけでなく外構・土木領域でも活用が可能だ。茨城県にある合同会社にわけん様では、Scanatから出力される点群データとCADソフトを組み合わせた最前線の活用法に取り組んでいる。これまで1時間以上かかっていた外構の測量が約15分まで短縮し、傾斜や凹凸のある場所でも簡単に測量できるため、材料の調達や見積作成に役立てている。

代表の須藤氏は、Scanatの導⼊により撮影した3Dモデルから生成される正確なパースを利用することで、お客様からの信頼も高まり、成約率が上がったと話す。⼟のレベルが正確に測れるので、それによってブロックの基礎の⾼さなどを知りたい場所ごとに出せるようになるのだ。


3Dスキャンを行う合同会社にわけん代表須藤氏

撮影後、わずか数分で3Dモデルを作成することができる

一方、福島県にある寿建設株式会社様では、インフラの維持補修での活用を試みている。例えば、従来のトンネル補修における調査は、目視で補修箇所などを長い図面に手書きで落とし込んでいた。図面ベースでの落とし込みになると、トンネル全体のどこが劣化しているかを把握しにくく、調査の手間と情報の見やすさを課題としていた。

代表の森崎氏は、Scanatを導入することで、約1キロのトンネルをゆっくり歩くだけで、劣化部位・補修必要箇所のデータをうまく入手できたと話す。メモ機能をうまく活用し、断面欠損などの劣化写真を3Dモデルに落とし込むことで、有効にデータになる可能性があるのだ。外構・土木領域においても事例を重ねて工夫を続ければ、現場を歩き回るだけで各種データを入手でき、現場での労力を削減することができるのだ。