プロセスマイニングは建設業でも役立つ。概要と成功のポイントを解説

AIやデータを活用した業務効率化は、建設業でも取り組まれています。しかし、プロセスの効率化において、プロセスマイニングを実施している企業は少なく、内容を詳しく知らないというケースもあるでしょう。

本記事では、プロセスマイニングの概要と成功のポイントについて解説していきます。

「トレンドワード:プロセスマイニング」

プロセスマイニングとは、業務の流れをデータとして取得・分析する方法を意味する言葉です。ツールやシステムを用いて、次のような項目や方向性からデータを取得し、業務改善につなげていきます。

  • 人材による品質・時間のばらつきの有無
  • システムや使用するツールが異なる非効率な作業の有無
  • 属人性の高い業務の有無

仮に、人の手が現状把握を行うには、作業担当者・部署内の役職者といった順にアンケートやヒアリングを実施したうえで、次のような内容を細かく把握する必要があります。

  • どの作業にどの程度の時間がかかるのか
  • どこに問題がありどのように改善できるのか
  • マンパワーに頼りきりになっていないか
  • 無駄が発生している場合、人材と材料、工程・・・どれに問題があるのか
  • 業務データを使用する場合、繰り返しの作業が発生していないか

プロセスマイニングを活用した場合、人力で調査を行う必要がなくなるだけでなく、データとして可視化できるため、リアルタイムでのモニタリングも実施可能となります。

建設業におけるプロセスマイニングの導入価値

建設業においてもプロセスマイニングは導入価値があります。たとえば、次のような作業が発生する場合、プロセスマイニングによって業務効率化が実現できるでしょう。

  • 土砂の運搬
  • 建材の加工
  • 書類整理、作成
  • 測量
  • 計測

企業内の業務効率や業務工程の向上を図りたい場合、プロセスマイニングによって現状を把握し、それぞれの課題に合わせた施策を実施するといった取り組みを実施できます。ただし、プロセスマイニングを導入するだけではなく、根本的な原因を把握したうえで改善施策の目標を立てる、施策の評価を行い、次につなげるといった体制作りが必要です。

プロセスマイニングの実行手順

プロセスマイニングの実行手順は、次のようになります。

  • 分析するプロセスを策定し、情報整理を行う
  • 目的を決定し、必要な施策やツール、方法を検討する
  • 必要なデータと項目を決め、データを収集する(検証も含む)
  • プロセスマイニングに必要なデータの形式にし、イベント(日時・部署名・担当者)ログの内容を検証する
  • イベントログの数値確認、手法の実行によって問題・課題を抜き出す

問題・課題を抜き出した後は、対応策を検討し、実行した上でモニタリングするといった流れになります。そのため、建設業に限らずプロセスマイニングを実行する場合は、解決したい課題に関連する知識や業務の流れを知った人間が関わらなければならない点は知っておきましょう。

プロセスマイニングを導入を検討する企業の特徴

ここでは、プロセスマイニングを導入を検討する企業の特徴についてみていきましょう。

  • データを保有したうえでプロセスマイニングを実施したい業務が明確に決まっている
  • データの有無が把握できず、目的や課題を把握していない

どういった状況であったとしても必要な人材やスキルは変わらないため、まずは専門業者に相談したうえで今後の動きを決めましょう。建設業の場合は、現場担当者だけでなく、経営陣も巻き込み、実際の現場で起きている問題の把握から始めることが大切です。

ただし、プロセスマイニングの実施には次のようなスキルが必要であるため、社内で存在しなければ早めに専門業者に相談しながら、自社の状況を見極めましょう。

  • 業界やビジネスモデル、プロセスを把握している
  • データがどこにあり、どうやって分析すればいいのかわかる
  • 分析する条件や要件を提示し結果を見極めるられる
  • データの形式を変更・加工し、検討する
  • データから適切な目標を立てて実践できる

プロセスマイニングは建設業界に広がる可能性がある

ここでは、プロセスマイニングマイニングが建設業界で広がる可能性が高い理由について、みていきましょう。繰り返すの作業による生産効率の低さや人口に伴うスキル継承の機会損失と労働力の不足、スキルや経験による属人性の高さなど、建設業独自の課題に対して、プロセスマイニングによる業務効率化は効果を発揮すると想定されます。 

可視化されるべきデータ・作業内容が多い

建設業において、リアルタイムで作業内容を確認しなければならないケースは多くあります。たとえば、トラックによる土砂の運搬、建材の溶接や施工状況などは、頻繁に確認・コミュニケーションを取る必要があるといえるでしょう。

たとえば、図面の共有だけでも次のような課題が発生する可能性があります。

  • 古い図面と新しい図面が混在してしまう
  • 全員に新しい図面がわたり切っていない
  • コミュニケーションが上手くいかず図面の共有が遅れる

こういった場合は、ヒューマンエラーや企業の体制として情報共有手段が整っていないと判断できます。加えて、人の手による安全点検・壁や建設物の劣化状況などは、人によって作業時間やフローが異なるケースも少なくありません。

しかし、そうした状況をプロセスマイニングによって、データ化できれば、現場の3M(ムリ・ムダ・ムラ)を解決・改善できます。全ての業務が可視化できるため、1つずつ問題点を改善していくことで、結果として生産性向上や業務効率化につながるでしょう。

属人性を薄めたうえで人材育成を行う必要がある

建設業は、今後労働人口が減少していく 傾向にあり、個人の知識やスキルに頼る属人性を薄めたうえで、人材育成を行っていく必要があります。勘や経験によって加工される建材などは、AIによる分析に頼る必要もあるものの、マニュアルに沿ったプロセスに関しては、プロセスマイニングで全て最適化可能です。 

たとえば、マニュアルの内容や人材の配置、フローなどの問題であれば、プロセスマイニングによって、課題を発見・対処できます。また、各人の工夫によってプロセスに良い影響があれば、その内容も把握できるため、品質の担保や人材の評価にもつながるといえるでしょう。

建設業でプロセスマイニングを成功させるためのポイント

建設業におけるプロセスマイニングの成功確率を上げるためには、次のポイントを意識しましょう。

  • 業務に精通した人材の協力を仰ぐ
  • 目的に合わせた議論、KPIの共有ができる人材を集める
  • 社内体制として経営陣まで含めてアドバイスや後押しができる状態を作っておく
  • 外部も含めてプロセスに合わせたゴール設計の相談を行える他姓を作る

とくに、ツールやシステムの導入は難しくないものの、組織としての協力体制を作らなければならない点や目的の設定が必要となる点から、事前に綿密な会議や打ち合わせが必要です。

まとめ

プロセスマイニングは、プロセスをデータによって可視化し、改善を図っていくための手法です。書類作成やトラックによる運搬など、建設業でも活用できます。

現状では、活用している企業は多くありません。しかし、業務効率化や生産性の向上を達成するための手段となるため、プロセスマイニングが建設業に広がっていくかに注目しておきましょう。