建設業の倒産、8年ぶりに1,600件超える 前年比38.8%増、深刻な「人手不足」「資材高」が背景
帝国データバンクは、2023年までに発生した「建設業」の倒産動向について調査・分析を行った。
目次
調査結果(要旨)
- 前年比38.8%増は、リーマン・ショック期を上回り2000年以降で最も大きな増加率
- 建設コストの上昇が背景、2024年問題で今後さらに倒産増加の可能性も
- 「北海道」は前年比210%増、「九州」は過去10年で最多
集計期間:2023年12月31日まで
集計対象:負債1000万円以上法的整理による倒産
調査機関:株式会社帝国データバンク
前年比38.8%増は、リーマン・ショック期を上回り2000年以降で最も大きな増加率
2023年に発生した建設業者の倒産件数は1,671件となり、前年比+38.8%と急増した。増加率が30%を超えるのは2000年以降では初めてで、リーマン・ショック期(2008年は3,446件で前年比+17.3%)にも見られなかった高い水準。
8年ぶりの1,600件超えでコロナ禍前の2019年(1,414件)を上回り、2014年以降の10年間では2番目の多さとなった。コロナ禍で政策的に抑制されていた倒産の揺り戻しと見られる一方、急激な業者数の減少は、進行中の案件の停滞や先送りを招く可能性もあり、地域経済への影響も懸念される。
負債総額は1,857億300万円で、前年比+52.5%の大幅増となった。大手パチンコチェーン「ガイア」のグループ会社で、同社の店舗建設を担っていたMG建設(負債214億5,000万円)とガイア・ビルド(同155億1,600万円)の負債が全体を押し上げたが、この2社を除くと1件あたりの平均負債額は8,900万円と小規模業者の倒産が中心となっている。
建設コストの上昇が背景、2024年問題で今後さらに倒産増加の可能性も
倒産急増の背景には、資材の高騰と人手不足などに伴う「建設コストの上昇」が挙げられる。施主に対しての価格交渉が難航するなど、請負単価が上がらない中で資材高騰の局面が続き、元請け、下請けともに収益力が低下している。
また、人手不足の問題は、工期の延長も引き起こしている。完工時期が後ズレすることで、元請業者による下請業者への支払延期要請も多く、孫請け以下の工事に関係する業者全体の資金繰りにも影響している。つなぎ融資を調達しようにも、コロナ禍でのゼロゼロ融資の導入などによって借入余力が小さい業者も多く、受注は確保できているにも関わらず、支払い先行で手元現金がショートする「黒字倒産」も見られた。
建設業界では、残業時間の上限規制(いわゆる2024年問題)が2024年4月から適用される。業界団体の声がけを中心に、価格転嫁や工期の適正化が進められているが、下請業者への浸透には時間が掛かる可能性もあり、更なる建設コスト上昇、倒産増加も懸念される。
「北海道」は前年比210%増、「九州」は過去10年で最多
2023年の建設業者の倒産を地域別に見ると、「北海道」が前年比210.0%増の62件となった。戸建を中心に資材価格の上昇で販売価格が高騰し、建売住宅の在庫が滞留。職人不足もあって、小規模業者を中心に倒産が急増した。
また、「九州」は50.5%増の158件となり、過去10年で最多。福岡市中心部の大型再開発プロジェクト「天神ビッグバン」や熊本の半導体関連投資など、案件が活発化しているが故に、仕入れや人手確保に伴うキャッシュアウトが先行し、資金繰りがショートするケースも多かった。
コロナ禍で業績や財務が悪化していたところからの急回復で、資金繰りが追いつかない業者の倒産は増える傾向にある。