建設業における中小企業のDXの課題とは?技術から事例まで解説
デジタル技術を取り入れ、今抱えている様々な問題を解決することをDX(デジタルトランスフォーメーション)といいます。しかし、IT人材の不足や予算不足などの理由で、DXの推進企業規模によって大きな格差があるという状況です。
DXを進めた場合、業務効率化による人手不足の解消、危険作業リスクの改善、技術が継承しやすくなるなど、多くのメリットが生じます。本記事では中小企業における建設業におけるDXの課題、DX化の進め方や注意点についてみていきましょう。
目次
建設業界における中小企業のDXとは
https://www1.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001587783.pdf
建設業界におけるDXとは、多くの課題を解決するために以下のような工程にデジタル技術を取り入れることです。業務効率化や生産性向上が期待できます。
- 事務手続き
- 測量などの現場作業
- 設計図の作成
- 人材育成
建設業界においてもDXは注目ワードであり、大手企業では3Dやドローンの活用なども進んでいます。従来からの課題である労働力不足や働き方改革に対応するためには、業務の効率化が欠かせません。
中小企業でも大企業でもDXによって得られるメリットは、知識として浸透しつつあるといえます。しかし、危険作業のリスクや技術継承問題などにおいて、中小企業はより多くの問題を抱えているといえるでしょう。
中小企業におけるDXの課題
中小企業におけるDX化が進まない要因として、人材や費用の不足があげられます。ここでは大きな課題を3つみていきましょう。
デジタルも含む人材が不足している
中小企業ではIT人材が不足しています。そのため、デジタル化に取り組みたくても「どこから手を付ければ良いか分からない」というケースが多くみられます。
社内でデジタル人材を育成するには時間やコストが必要です。そこまでの手間暇を割けないという企業も少なくありません。そういった場合は、DX推進に詳しい企業への外部委託を検討してみましょう。自社で人材育成を行うよりも短い時間・安いコストでの課題解決が見込めます。
請求書・契約書などのデジタル化が進んでいない
請求書や契約書などのデジタル化が進んでいないという中小企業は多いといえるでしょう。たとえば、紙でのやり取りには次のようなリスクがあります。
- 郵送でのやり取りには時間がかかり、紛失や破損の可能性がある
- 書類の管理にはファイルや棚、箱が必要
紙の管理は場所を取り、探しづらいという問題も生じます。
そういったデメリットを書類のデジタル化に取り組むと、書類の一元管理が可能になり業務効率化につながります。業務効率化やセキュリティ向上のためにも、請求書や契約書に特化したシステムを導入しても良いでしょう。
ノウハウ共有ができず自社だけで完結している
建築業界は「元請」「下請」「孫請」と複数の企業で仕事を行っています。ノウハウの共有を行わず自社だけで完結させると、プロジェクト全体でDXを進めるのが困難な状況が生じます。企業同士で協力し、ノウハウやシステムを共有できれば、スピーディなDX推進が可能になるでしょう。
中小企業のDX化を進める技術
中小企業のDX化を進めるための技術には様々なものがあります。代表的なものを5つみていきましょう。
技術 | 内容 |
BIM/CIM | ・建築物を立体的な3D画像で示すことができるデジタル技術・事業に係る全ての関係者と情報共有可能・計画・調査・設計段階から導入でき、施工・維持管理の段階でも利用できる |
ICT(情報通信技術) | ・通信技術を活用したコミュニケーション ・図面や仕様書などの情報を電子ファイルで共同編集できる・ドローンなどの機械の遠隔操作も可能 |
クラウドサービス | ・インターネット上の仮想サーバーを利用できるサービス ・インターネット環境さえあればどこからでも同じ情報にアクセスできる ・自社PCやイントラネットを使うよりコストが抑えられることも多い |
loT | ・モノをインターネットにつなぐ技術・重機・機材・ヘルメットなどをインターネットにつなげ、現場の安全管理を測る・資材や建機につなげ、使用状況や所在の把握につかう |
AI(人工知能) | ・コンピュータが自ら得た情報を元に判断できる技術・画像解析による診断業務や職人の技術継承など、幅広く利用可能 |
DX化を進めると、利便性や安全性の向上、生産性向上などが期待できます。
中小企業でのDX化事例
ここでは、中小企業のDX化事例をみていきましょう。
管理・事務作業の効率化
BIM/CIMの導入によって、3次元モデルで見れるだけでなく、図面の中に計画・調査・設計・施工・維持管理などの全ての高低データが追加可能となりました。
途中で設計変更があった場合はすぐに関係者全員で情報共有できるため、従来のような伝達ミスが起こりません。
人材育成
ドローンを操作できる人材育成から取り組み、「社内全員が使えるアプリ」を自社で開発しました。使い勝手の良いアプリを作ることで、従業員自身もデジタル技術を利用して仕事ができるようになっています。
結果として、顧客満足度や生産性の向上だけでなく従業員のデジタル技術力や受注力の向上にもつながりました。
中小企業がDX化を進める際の注意点
DXを進め、社内に根付かせるための注意点をみていきましょう。
現状の把握からスタートする
企業や現場によって、抱えている課題は異なります。自社の課題を解決するために、DXを導入しなければなりません。そのためには、最初に現場が抱えている現状課題の把握から始めましょう。
また、混乱を防ぐために、事務手続きや管理部分の一部など導入しやすいところから、スタートしましょう。
現場で使用できるかどうか意思統一を行う
DXの目的の1つは現場の負担削減です。そのうえで、DX化を進める際は、その技術が現場で活用できるかどうか、意思統一を図っておきましょう。
導入を決めた場合は、DXで得られるメリットや使用方法について予め現場に伝えておくことが大切です。システムの活用方法に不安がある場合は、教育の時間を確保しましょう。
管理及び情報共有部分から改善する
現場のシステムを急に変更した場合、円滑な業務ができなくなる可能性があります。そのため、管理や情報共有部分からDXの導入をスタートし、徐々にデジタル化に慣れてもらう方法も効果的です。
たとえば、現場の入出金管理や顧客情報、業務案件などの情報のデジタル化に取り組みます。データ化による業務効率化や生産性向上を実感してもらうことからスタートしてみましょう。
まとめ
中小企業のDXはデジタル人材不足、ノウハウの共有化不足など様々な要因によって進んでいないといえるでしょう。また、DXにはBIM/CIM、AI、クラウドサービスなど多くの技術があります。
そのうえで、自社の現状の課題を把握し、課題解決につながる技術を導入することでDX化を推進できます。導入の際は、現場にDXのメリットを伝え、内容を理解してもらうことが大切です。
いきなり根幹の業務内容に影響する技術やシステムではなく、導入しやすい部分から取り入れ、デジタル化のメリットを実感してもらい、徐々にDX化を進めましょう。