【建設DX展 独自取材⑤】建設DXプラットフォーム・BuildAppで業界アップデート|野原HD
2021年12月6日〜8日に行われた建設DX展にて独自取材を行いました。建設DXの生の声を全8回の連載にてお届けします。
第5回目は当サイト:BuildApp Newsの運営会社:野原ホールディングス株式会社の出展についてです。2022年開始の建設DXプラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」のお披露目となる出展でした。事業責任者である野原ホールディングス株式会社 グループCDO 兼)建設DX推進統括部 山﨑 芳治 統括部長に出展意図などに話を聞きました。
目次
Q.「BuildApp(ビルドアップ)」とは?
野原のDX新規事業|BIMを基点として建設工程の元管理システム
「BuildApp(ビルドアップ)」とは野原ホールディングスが立ち上げた建設DXプラットフォームです。野原グループは1598年創業、1947年設立以来、建材商社、施工会社としてデータ・技術・経験を蓄積してきました。そのノウハウを活用し、設計から生産・施工・維持管理まで、BIMを起点としたデータを一元管理し、建設プロセス全体の圧倒的な生産性向上を目指しています。
詳細BIMデータで|見積・発注、プレカット、施工管理などが連動
具体的には意匠設計段階のBIMデータを自動的に建材パーツレベル(LOD400)のBIMデータに詳細化し、生産・施工情報を付与。生産・施工情報が付与された詳細BIMデータを基に、実数量/コスト把握、見積・発注連動、プレカット連動、建具生産連動、施工状況可視化といった仕組みを展開し、各建設プロセスにおける圧倒的な時間短縮・生産性向上を提供します。
Q.「BuildApp(ビルドアップ)」の具体的な提供価値は?
建設プロセス、サプライチェーンを大きく5つに分けて、各プレーヤーに合わせたサービスを提供します。
設計積算
●ゼネコンの業務効率化を目的
●BIMを通じた積算や施工図の自動化がメリットに
<BIMモデル詳細化>
現状、ゼネコンが作るBIM設計データはLOD300もしくは350という精度です。例えばBIM上で壁をつくるとあくまで壁というデータで構成材までは判別できません。ですので、石こうボード、LGS(スタッド、ランナーといった部材まで)の品番数量まで詳細なBIMデータ(LOD400)に落とし込むのです。
<5D自動積算見積>
詳細化されたBIMデータは「5D自動見積」に連動します。5Dとは3Dに時間軸とコスト軸を足したものです。野原は従来からの建材販売データを有していますし、また顧客である工事店とは密なパートナーシップを築いているため労務費データをしっかり管理してもらうことが可能です。建材商社の野原だからできる特長だと思っています。これによりゼネコンや専門工事店にとっては、従来の積算見積に比べ大きな工数削減が期待できます。
<施工BIM作成>
施工段階では、現場で使う施工図が必要になります。現状、BIM導入が進んでいるゼネコンも現場ではBIMとは違うソフトウエアで施工図を作成していることが珍しくありません。これに対して、設計BIMデータから自動的に施工BIMが生成作成されることをBuildAppでは目指しています。
生産
●建材の現場廃棄を削減する 究極のプレカット
●廃棄コスト減 SDGsに貢献
ゼネコンの大きな課題の一つに現場廃材の削減があります。廃材はコスト面もしかり、SDGsとしても好ましくありません。BuildAppでは現場での実証実験を繰り返し現場廃材ゼロを究極の目標として目指していきます。
<BIM-プレファブ・プレカット>
QRコードに詳細な施工指示を埋め込み|施工者は迷わずに施工可能
BuildAppはBIMデータに基づき建材のプレカットから納材まで一括管理に取り組んでいます。例えば石こうボードやLGSなどはメーカーや工場で加工・出荷の際にQRコードを貼付します。QRコードには詳細な施工場所の指示などが埋め込まれています。施工後はタブレットのAR技術を使い、図面通りに施工ができているかなど施工確認までもができます。
<建具施工図自動化/建具BIM生産連動>
手作業だったバラ図がBIMで自動化|工期短縮
建具製作の効率化も提供できます。建具加工は現状のバラ図(加工図)が設計図面とは連動せず、熟練者が手作業で行う課題がありました。職人技で人手不足でもあり作図待ちで1か月半かかるようなこともあります。そこで、ソフトウエア会社のシンテックと業務提携をし、BIMデータからバラ図が自動作成できる技術を開発しました。これにより大幅な作図の手間軽減、工期短縮が可能になります。
流通
●スケジュール管理をBIM連動
●現場での建材・職人手配の無駄を解消
<工期連動自動手配>
建築現場のスケジュールは日々変動します。現状は変更が発生すると職長さんが電話で「明日材料いらないから明後日にして」などとアナログで調整しています。職人手配も一緒です。調整作業には無駄も多く、相当なコストがかかっています。
BuildAppは現場の搬入搬出や施工管理もBIMの4Dデータ(スケジュールデータ)を活用します。BIMと連携したスケジュールにより建材や職人手配の自動化を狙っています。スケジュールが自動的に変更され、建材問屋など流通システムと全自動でデータが連動できれば、人によるアナログなデリバリー業務が不要になる、という効率化を狙っています。
その他、施工管理、維持管理工程においてもBuildAppによる抜本的な効率化と未来へ繋がる成長を推進するサービスを提供します。
Q.「BuildApp(ビルドアップ)」の今後の展望は?
建材商社だからこそできるDX|BuildAppで建設業界をアップデートする
BuildAppは野原が建材商社として培ってきた建設業界でのネットワーク、ノウハウを基盤にした新しいシステムです。現在、実用可能なシステムに成長するためにゼネコンや各建築現場で実証実験を重ねています。
BuildAppを見た方は以前の野原とのイメージの違いに驚かれる方も少なくないです。野原としてはDX事業を掲げたからには、建設プロセス全体の改善に取り組みたいという思いです。今回の展示会で業界のDX化が本格化する雰囲気を感じています。ぜひ、このシステムを実現し建設業界をアップデートしていきたいと思います。