大林組、場所打ちコンクリート杭の杭支持層到達確認システム「PiRuler-GEO™」を開発

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株式会社大林組(本社:東京都港区、社長:蓮輪賢治)は、AIとICTの活用により、場所打ちコンクリート杭の施工において、杭支持層への到達状況を高精度でリアルタイムに確認できるシステム「PiRuler-GEO(パイルーラー ジオ)」を開発しました。

開発の背景

場所打ちコンクリート杭は、大口径杭の施工が可能で経済性に優れることから、土木・建築工事で多く採用されています。

杭が支持層まで達していない場合、将来的に構造物の沈下などの原因となりますが、支持層への到達状況の管理は、現状では経験豊富な技術者が、掘削時に採取した試料の土質を目視や手触りで確認することにより判断して行うのが一般的です。

このため、特に複雑な地盤条件下においては、杭の支持層到達状況の管理に多大な労力を要しており、その安定化と省力化が求められています。

システムの概要と特長

今回開発したPiRuler-GEOは、掘削時に掘削機から得られる回転トルクや押し込み力、掘削深度などの計測データと、設計土質や経過時間などの独自指標を用いて、機械学習させたAIソフトによって支持層の土質と地盤の固さを推定します。

本システムの適用により、技術者がリアルタイムで掘削深度や支持層到達状況を確認できるため、管理の安定化と省力化を図ることができます。

 PiRuler-GEOの特長は以下のとおりです。

豊富な教師データを機械学習させたAIによる高精度な判定

PiRuler-GEOは、想定される様々な地盤条件をカバーできる850件以上の豊富な教師データを機械学習させたAIソフトによって、15秒ごとに土質と地盤の固さ(N値)を推定します。

推定の精度は、土質が90%以上、地盤の固さはRMSE(二乗平均平方根誤差)(※1)が10以下と高く、その推定結果をもとに、目視による土質確認を併せて行うことで、総合的に到達状況を確認できます。

同システムは、支持層が傾斜している施工条件では特に有効で、あらゆる条件下において施工品質の安定化を実現します。

図1 地盤の固さ(N値)・土質の推定フロー図1 地盤の固さ(N値)・土質の推定フロー

リアルタイムに計測状況の把握が可能

従来は掘削時に採取した支持層の試料を用いて、掘削完了後に目視で到達状況を確認していましたが、PiRuler-GEO は、掘削深度や支持層到達状況などの計測データを、掘削中にリアルタイムで確認することができるため、手戻り工事の発生を抑制し、工期遅延の防止につながります。

図2 杭支持層到達確認システムの画面例図2 杭支持層到達確認システムの画面例

今後の展望

当社ではAIとICTを活用して、場所打ちコンクリート杭の施工品質の安定化や、施工計画の信頼性向上を実現する総合的な品質管理システム「PiRuler™(※2)」の構築に取り組んでおり、今回開発したPiRuler-GEOは、その構成技術の一つです。

当社は、PiRulerの各構成技術の開発を進めるとともに、施工現場へ積極的に適用し、施工の効率化と施工品質の向上を図ります。

また、将来的には大裕株式会社(本社:大阪府寝屋川市、社長:飯田浩二)を通じて、PiRuler-GEOのレンタルによる外部提供も計画するなど、自社以外の活用も推進することで、安全安心な構造物を社会に提供することに貢献します。                                                                                                                                       

※1 RMSE(二乗平均平方根誤差)

 機械学習を用いた推定値と、実際の値がどの程度離れているかを評価する指標で、この値が低いほど誤差が小さいと評価できる

※2 PiRuler (パイルーラー)

https://www.obayashi.co.jp/solution_technology/detail/tech_d253.html

 計画を対象とした自動打設シミュレーションシステム「PiRuler-CP™」、施工を対象とした杭支持層到達確認システム「PiRuler-GEO」および安定駅構内比重測定方法「PiRuler-SG™」、維持管理を対象とした施工記録データベース「PiRuler-DB™」の4つの技術から構成される場所打ちコンクリート杭の品質管理システム