国土強靱化とは?|国交省の取組や事例まとめ

掲載日:
Tag:建設DX

著者:小日向

トレンドワード:国土強靱化

「国土強靱化」についてピックアップします。防災・減災の必要性が高まる中、強さとしなやかさを備えた国づくりが進められています。本記事では国土強靭化の概要や予算、国交省の取組についてご紹介していきます。建設業での具体事例も、参考にしてみましょう。

国土強靱化基本計画とは

ここでは、国が進める「国土強靱化基本計画」の概要や現在の進捗状況についてご紹介していきます。

国土強靱化の概要

国土強靱化とは「内閣官房 国土強靱化推進室による、災害に強い国づくりを目指す取り組み」です。大規模災害時にも被害を最小限に抑え「強さとしなやかさ」を備えた経済社会システムを平時から構築することが求められます。

国土強靱化の枠組み

2013年に施行された「防災・減災等に資する国土強靱化基本法」では、以下4点の基本目標が定められています。

  • 人命の保護が最大限図られること
  • 国家及び社会の重要な機能が致命的な障害を受けずに維持されること
  • 国民の財産及び公共施設に係る被害の最小化
  • 迅速な復旧復興

その後「国土強靭化基本計画」として、「3か年緊急対策(2018~2020年度)」、「5か年加速化対策(2021~2025年度)」が実施されています。そして毎年年次計画が策定され、進捗状況に応じた対応が行われているのです。

令和5年度(2023)国土強靱化の予算

内閣官房サイトによると、令和5年度(2023)の国土強靭化関係予算は「4兆7454億円」です。各府省庁で具体的な実施内容が計画されており、たとえば2023年4月に発足したこども家庭庁では「就学前教育・保育施設等の耐震化」といった取り組みが行われる予定です。

中でも国土交通省全体での予算は「約3兆4940億円」と大部分を占めており、主な内容は下記のようになっています。

  • 流域全体で行う「流域治水」の推進
  • 集中豪雨や火山噴火等に対応した総合的な土砂災害対策の加速化・強化
  • 海岸保全施設の整備
  • 道路ネットワークの機能強化対策(高規格道路のミッシングリンク解消等)の推進
  • 無電柱化の推進

切迫する大規模地震災害、相次ぐ気象災害、火山災害、インフラ老朽化等の国家の危機に打ち勝ち、社会の重要な機能を維持するためハード・ソフト一体となった取組を強力に推進しています。

国土強靱化に関する民間の取組事例集|建設業

ここでは、民間企業が進める国土強靭化への取り組み事例をご紹介します。建設業はインフラとの関わりも深く、注目すべき取り組みが多いです。

①大林組|総合防災情報システムの構築

大林組等の大手ゼネコンは、災害時に交通網や施設の復旧を行う責務を担っています。そのため「被害状況の情報収集・通信手段の整備・従業員の安否確認手段の整備」を中心とした「総合防災情報システム」を構築しています。

たとえば、地理情報システムをベースにしたシミュレーションプログラムである「地震被害予測システム」には、大林組の従業員や家族居住地、自社施設、建築系施工物件、工事事務所が登録されています。

また「地盤情報、歴史地震、活断層、鉄道・河川・道路地図等の情報」も合わせて整備されているのも特徴です。緊急時にはそれらのデータと震源情報から計算された全国各地の震度分布、建物被害度、液状化危険度分布を組合せ、被害の全体像を早急に把握できます。これにより、調査・復旧などの計画・立案に必要な情報を分析・提供できるのです。 

②鹿島建設|既存街区のスマート化

鹿島建設では、東京都江東区の大型複合施設「東京イースト 21」のスマート化に取り組んでいます。東日本大震災で、オフィス用途のタワー棟の電力供給の多元化・信頼性が求められるようになったことがプロジェクトのきっかけです。

スマートエネルギーネットワークの「実用化」、「汎用化」を目指して、運用段階のエネルギー評価以外にも、BCP 価値の定量化などを実践しています。また震災や浸水などのリスクを想定し、自立スタート型コージェネレーションを増設しました。

信頼性の高い中圧都市ガス導管からの供給を受け、タワー棟オフィス専有部へ直接電源を供給することで、震災や浸水等あらゆるリスクに対して電源の安心・安全を確保しています。さらに太陽光発電を導入し、電力・エネルギーの見える化で居住者の省エネ意識の向上を目指しました。

③積水ハウス|避難・支援拠点となる工場

積水ハウスは宮城県加美郡色麻町と締結した「防災協定」に基づき、「東北・住まいの夢工場」を災害発生時の避難所として活用することとしています。

普段は工場ですが、災害時には250 人が寝泊まりできる避難スペースと 7日間の防災備蓄が確保されています。また住民や地域組織とも連携して、実践的な防災訓練を定期的に行っています。

さらに災害発生時の避難所としての活用だけでなく、町、住民、地域組織により構成される色麻町防災協議会に参画して「地域全体の被災者支援拠点」としても活動できる体制やコミュニティづくりも計画されています。

まとめ|国土強靭化で安全な暮らしを

日本は地震や台風といった災害の多い国であり、過去にも大きな被害が発生しています。国土強靭化は国家のリスクマネジメントであり、産業競争力の強化にも繋がります。国民の命と財産を守るため、官民それぞれの適切な対策が求められます。