CAD設計士とは。就業するメリットや将来性まで解説
CADは、建設業界や住宅業界で設計業務を行う場合に、必須となる図面作成ソフトウェアです。2D・3Dに特化しているものや特定の業種に特化しているものなど、多数の種類があります。
また、CADを使用する業種に関してもCADオペレーターや施工管理や設計士、建築士といった種類があります。本記事では、CAD設計士の仕事内容や将来的に活躍できる場について解説していきます。
目次
「トレンドワード:CAD設計士とは」
CAD設計士とは、CADを使用して設計を行う業種を意味します。たとえば、次のようなポイントを意識しながら業務を行います。
- 建築物の構造-木造や鉄筋などの構造体の仕様、耐震・耐火や荷重などの計算
- 建築物のデザイン-コンセプトやテーマを考慮した内装や外装の選定、動線の予想
- 周辺環境への影響-都市開発や地域の法令、環境に合ってているかどうかの検討
- 発生するコスト-建築・土木・空調衛生設備・電気などのコスト計算
- 保守・管理の方法-外壁、エレベータなどの点検サイクル、システムの導入可否の検討
クライアントのニーズを満たすためにも、住宅業界においてCAD設計士は、必要な業種だといえるでしょう。
CAD設計士とCADオペレーターの違い
CAD設計士とCADオペレーターには、以下のような違いがあります。
- CAD設計士-クライアントや依頼内容から、事前調査から建築後の保守管理まで全体的な設計を行う。設計図や仕様書の作成、使用する建材、建物の区分なども決定する
- CADオペレーター-設計補助の役割を行う。ゼロから建物の設計を行うケースはほぼなく、CAD設計士と連携しながら図面を作成することになる
また、求められるスキルにも次のような違いがある点は知っておきましょう。
CAD設計士に求められるスキル-建築士や機械設計技術者などの国家資格を持ったうえで、設計に関する高度な専門知識が必須。クライアントの要望に応じて独自の設計を提案する創造力など
CADオペレーターに求められるスキル-図面作成に必要なCADソフトを操作する技術。設計士の指示を理解し、数値に狂いがない図面を完成させる集中力
どちらもチームメンバーと密接に連携するため、コミュニケーション能力も必須だといえるでしょう。
CAD設計士に向いている人の傾向
CAD設計士に向いている人の傾向は、次のとおりです。
- 論理的思考ができ問題解決力がある
- 発想力がある
- 細かい所に気付ける
とくに、自動化できる部分が増えたものの、論理的な思考力は必須です。法規制やコスト、建物の基準などの様々な情報を考慮したうえで、設計を行う必要があるためです。
住宅業界でCAD設計士を採用する3つのメリット
ここでは、住宅業界でCAD設計士を採用する3つのメリットについてみていきましょう。
コスト削減とプロジェクト管理の役割を任せられる
CAD設計士を採用することで、次のような理由から業務プロセス全体の効率化が目指せます。
- 自動的に、積算やデザインができるシステムやプラットフォームが登場しており、担当者としてCAD設計士に任せられる
- CAD設計士を管理者として、標準化されたテンプレートや部材データを作成すれば、毎回ゼロから設計を行う必要がなくなる。仮に、似たよう規模・仕様のプロジェクトであれば作業時間を大幅に短縮できる
- CADデータをプレゼン資料として活用できる。顧客への提案も容易になり、商談成功率の向上、顧客満足度の向上も図れる。
CADと連携できるBIMは、デジタル上で図面や設計データを修正し、関係者とリアルタイムで共有可能です。そのため、無駄なやりとりや確認作業などのコストを削減できます。
また、住宅設計に必要な部材リストや積算表の自動生成機能を活用すれば、材料費の計算や発注業務を迅速・正確に行えます。
顧客満足度の向上につながる
住宅業界における顧客満足度の向上は、リピート率の向上や口コミによる集客に影響を与える要素です。そのうえで、CAD設計士が設計段階から顧客に「理想の住まい」を具体的に提案できれば、競合他社との差別化を図れるでしょう。
- 3D CADを活用して住宅の内外装をリアルに再現し、完成後のイメージをお客様に視覚的に見せる
- キッチンやリビングの動線をシミュレーションし、家具の配置や配色の変更を確認できる
- デザインや動線などの要素を考慮した住宅を提案しやすくなる
営業とは別業種として、CAD設計士を採用することで、満足度の高い設計を提供しやすくなります。
リフォーム・リノベーション事業の拡大にも貢献できる
新築住宅の戸数は2023年では80万戸であるものの、2040年は58万戸まで減少すると予想されています。しかし、リフォームやリノベーション市場が拡大しているため、CAD設計士を採用しておくことで、既存住宅のプランニングや提案力を強化することが可能です。
たとえば、築年数の経過した住宅は図面が残っていないケースも少なくありません。そのため、現地調査から始めてCADによるデジタル図面を作成する役割をCAD設計士に高頭して貰えば、調査やプランニングのスピードが格段に向上し、短期間で複数の案件を処理できる体制を構築できるでしょう。
また、デジタル化された設計データは、将来的なメンテナンスや追加リフォーム時にも活用可能です。そのため、アフターサービスの質の向上やリフォーム事業への進出も検討できるようになります。
CAD設計士の将来性
CAD設計士は次のようなキャリアパスを目指すことが可能です。
- BIMマネージャー及び設計ディレクター:高度な3D CADスキルを持っているため、BIMを活用したプロジェクト管理や設計ディレクターとしてプロジェクト全体を監督する役割を担える。
- 業務DX推進の担当者:住宅業界全体のデジタル化(DX)が進むため、CAD設計士の知識を活かせる。たとえば、設計プロセス全体をデジタル化するプロジェクトに関わることも可能。デジタルツールを活用した設計フローの効率化を支援する立場にもなりやすい
現状で、企業内に存在しない役職や業務も将来的には必須となる可能性があるといえます。
まとめ
CAD設計士は、CADソフトを使用し、総合的な建築物の設計を行います。クライアントの要望と法規制に合わせた構造・デザイン・コスト管理が重要です。
住宅業界におけるメリットとして、プロジェクト管理の効率化や顧客満足度の向上、リフォーム事業にも役立てられます。将来的には、BIMマネージャーや業務DX推進担当者としてのキャリアパスも検討できるため、社内の業務体制を見直してみましょう。