CADの種類は業界別でどう使い分けられている?利用事例まで解説
住宅や建設業界では、CADを設計や管理のツールとして活用している企業は多いといえるでしょう。しかし、CADは多くの業界で活用されており、それぞれの種類も異なります。
では、建設や住宅業界も含めて、業界ごとにどのような種類のCADが活用されているのでしょうか。
本記事では、住宅や製造業、電子機器といった各業界で使用されるCADの種類やその選定ポイントについてみていきましょう。
業界別。よく活用されるCADの種類を解説
ここでは、業界別によく活用されるCADの種類についてみていきましょう。CADが各業界でどのように活用されるのかを知ることで、業務効率化や最適なCAD選びが実施しやすくなるといえます。
建築業界
建築業界において、CADは建物の設計から施工、運用管理のすべての段階で不可欠なツールです。BIMに基づいた工事では、3Dモデルによる設計やシミュレーション、数量計算まで可能となっています。
つまり、CADの機能活用によって各工程の連携強化や設計ミスの削減、施工の効率化につながっているといえるでしょう。とくに3Dモデルでは、設計の意図を明確に伝えることができるため、クライアントや関係業者とのコミュニケーションがスムーズになります。
また、施工段階では、図面とのズレを発見しやすくなるため、コスト削減や工期短縮にも効果を発揮するでしょう。
建設業界で活用されている代表的なCADは次のようなものがあります。
BIMに特化したCAD。建物の設計、施工、管理のすべてを統合的にサポートできる。たとえば、設計変更がリアルタイムで他の図面に反映できるため、プロジェクト全体の効率化につながる。また、建物のエネルギー効率やコスト分析も可能。
- Vectorworks (ベクターワークス)
多用途に対応したCAD/BIMソフトウェア。建築や地形、家具デザインの設計を包括的にサポートできる。たとえば、2D図面と3Dモデルを同時に操作できる統合環境があり、プロジェクトの視覚化と効率的な設計が可能。また、豊富なプラグインがあるため、特定の設計ニーズに応じたカスタマイズができる。
自動車業界
自動車業界は、車両の設計から開発、製造のすべてのプロセスでCADを活用しています。たとえば、車両の外観デザインから内部構造、エンジンや機械部品の設計では、精密な3Dモデリングが必要です。
自動車業界におけるCADは、設計精度の向上と開発期間の短縮に効果を発揮しているといえるでしょう。仮想モデルを用いたテストやシミュレーションによって、実際の製造に移行する前に問題を特定し、修正することが可能です。また、次のような業務でもCADを活用しています。
- 設計段階での衝突・安全性解析
- 空力シミュレーション
- プロトタイプの製作前における仮想環境での検証
自動車業界で使用される代表的なCADには次のようなものがあります。
- Siemens NX
CAD・CAM・CAE機能が統合された、ソフトウェア。とくに自動車業界においては、3Dモデリング機能と解析機能が評価されている。たとえば、部品やアセンブリの詳細なモデリングが可能で、製造に必要なすべての要件を統合できる。
- CATIA
フランスのダッソー・システムズ社が開発したソフトウェア。複雑な形状のサーフェスモデリング(表面のみが定義された3次元モデル)の作成に優れ、多くの自動車メーカーが外観デザインに採用している。また、設計から製造までのプロセスを一貫してサポートできるため、協力企業間でのデータ共有を円滑に行える。
製造業(機械設計)
機械設計におけるCADは、機械部品や製品の設計に広く利用されています。製品のコンセプト設計から詳細設計、解析、製造準備といった一連のプロセスで活用可能です。
機械設計でのCADは製品の設計精度を向上させ、開発期間を短縮することにつながります。設計データと製造機械の連携が容易となるため、生産工程の自動化にも期待できます。
また、シミュレーションによる製品性能の検証が可能であるため、試作コストの削減と製品の信頼性向上にも活用できるでしょう。
- SolidWorks
使いやすさと直感的なインターフェースが特徴となる3D CADソフトウェア。パーツのモデリングやアセンブリ、シミュレーション、ドキュメント作成まで可能。たとえば、部品の変更を行った場合には、アセンブリ、図面へ自動で反映できる。特にコストパフォーマンスが評価されており、中小企業での導入が多い。
- PTC Creo
複雑な製品設計と解析を行うための3DCAD。パラメトリック設計やダイレクトモデリング、シミュレーション、生成デザインも可能。たとえば、設計データをARに反映することができ、プログラミングは必要ない。
住宅業界
住宅業界では、建物の設計から施工、維持管理まで、CADが幅広く利用されている状況です。たとえば住宅のプランニングや空間デザイン、設備配置などでよく活用されているといえるでしょう。
また、BIMの導入によって、3Dモデリングが一般化し、設計の正確性とプロジェクト管理の効率化が進んでいます。設計図や3Dモデルを通じて、設計者、施主、施工業者間でのコミュニケーションが円滑になり、クライアントの要望を的確に反映することに役立っているといえるでしょう。
住宅業界で活用されている代表的なCADは、以下のとおりです。
- ArchiCAD
住宅設計に特化したBIMソフトウェアで、直感的なインターフェースが特徴。3Dモデリングと同時に2D図面を自動生成する機能を持ち、設計変更が瞬時に反映される。また、レンダリング機能では、リアルなビジュアルプレゼンテーションも作成できる。
- SketchUp
SketchUpは、使いやすさと柔軟性で人気のある3Dモデリング。住宅のデザインやインテリアデザインにおいて、アイデアを迅速にビジュアル化する際に役立つ。豊富なプラグインやライブラリが利用可能。選択するバージョンによっては、アニメーション機能も活用できる。
- Vectorworks Architect
詳細設計作業を支援する包括的なソフトウェア。建築設計、地形、インテリアデザインなど多岐にわたる用途に対応できる。設計の各段階で、3Dモデルと2D図面を効率的に管理できるため、施主や関係各社への解説にも役立つ。
まとめ
CADには、業界ごとに特化した機能があり、ニーズに応じて使い分けられているといえるでしょう。たとえば、住宅業界ではArchiCADやSketchUpなどが使用され、直感的な3Dモデリングとプレゼンテーション機能を活用することが可能です。
それぞれの業界で今後もCADがどのように活用されていくのかに注目しておきましょう。