シニア向け住宅とは。関連するDX施策を解説

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国土交通省の「高齢者の住まいに関する現状と施策の動向」によれば、高齢者に該当する第1号保険者3,588万人のうち3,486万人は在宅となっています。つまり、介護などのサービスを受けながらも住宅を拠点としている高齢者が多いということです。

しかし、今後ニーズが増加すると想定されるシニア向け住宅に対して、「バリアフリーやヒートショック対策ができる設備は知っているけど、住宅としてニーズの高いDXについては把握していない」というケースもあるのではないでしょうか。

今回は、トレンドワードとして、シニア向け住宅の概要と関連するDXについて詳しくみていきましょう。

「トレンドワード:シニア向け住宅」

シニア向け住宅は、高齢者に向けた住宅の総称です。コミュニティの形成を前提とした住宅作りを行うケースも多く、実際にマンションであれば1階が店舗となっている建物もあります。また、シニア向け住宅には次のような種類がある点は知っておきましょう。

  • 高齢者住宅:基準はないものの、バリアフリー・手すり・動線などをふまえて設計されているケースが多い。
  • サービス付き高齢者向け住宅:要介護・要支援認定を受けている人が対象。専用部分の床面積(25平米)、台所やトイレ、収納設備などを備える必要がある。常駐のスタッフがいる点が高齢者住宅と大きく異なり、一般形と介護型に分かれる。
  • シニア向け分譲マンション:生活的に自立した人を対象として、生活支援サービスを含んだ建物が多い。たとえば、ジムやプールの併設、温泉などといった設備がある
  • 高齢者専用賃貸住宅:都道府県が認定した公的な賃貸物件。バリアフリー、緊急通報システムなどの設備が充実している。また、所得によって家賃が減額されるケースもある。

政府が掲げる「新たな住生活基本計画」では、総合的な相談体制の構築や必要な設備をふまえたリフォームの推進なども掲げています。また、住宅に期待される機能としては、コミュニティスペースとの役割もあるため、今後もシニア向け住宅は顧客からのニーズは高いといえるでしょう。

日本と海外の高齢者向けDX施策の違い

ここでは、日本と海外の高齢者向けDX施策の違いについてみていきましょう。日本では、政府が高齢者が自分らしい暮らしを行うための地域包括ケアシステムの構築を目指しており、地域によってはすでに取り組んでいる場所もあります。

日本

IoT機器によるモニタリング、警報システムとの連携、オンライン診療などは各事業者で導入が進んでいる状況です。ただし、医療機関との連携に関しても事業者単位で進められているため、地域や住む住宅によって大きな差があるのが現状です。

また、知識やリソース不足によってDX導入に踏み切れないといった課題もあり、ITリテラシーを高めるだけでなく、官民一体となった取り組みが必要な状況になりつつあります。

加えて、官民一体の取り組みでは、建物の所有者と施工会社だけでなく、地方自治体も含めて現状を把握し、課題となっている部分からDX化を図っていくことが必要です。ノウハウやスキルとしてDX化を推進できる人材が少ないため、施工会社単位での取り組みが増加していると想定されます。

海外

海外の場合、日本と比較して官民一体での取り組みが多い状況にあります。たとえば、次のような支援策が代表的です。

  • フィンランド:ビデオシステムの「バーチャルケア」を使用し、高齢者の状況をオンラインでチェックできる。遠隔介護が頻繁に行われており、高齢者が専用のタブレットを持っている。
  • ドイツ:高齢者が自宅で生活できるように支援するスマートホームシステムであるスマートサービスパワープロジェクトを展開している。リアルタイムでの状態管理、健康状態の悪化の予測を行い、場合によっては緊急医療サービスとも連携できる
  • ドイツ:バーチャル見守り住宅に参加する住宅に対して、健康情報の記録と健康リスクの早期発見を行うセンサーなどを提供し、近場の診療所とつながれる。補助員の配置もある

とくにモニタリングサービスを導入したうえで、地域とのつながりを活かした生活支援が行われている点が特徴といえるでしょう。IoT機器やAIの導入など、日本でも技術的には可能なものが多いものの、海外では連携の体制が日本とは異なり、地域差が生まれにくい点は大きな違いです。

日本のシニア向け住宅で活用されるDX施策

ここでは、シニア向け住宅で活用されるDX施策についてみていきましょう。シニア住宅におけるDXの導入と地域の医療の結びつきは海外ほど強くないものの、日本でも少しずつ増加している状況です。

オンライン診療

オンライン診療は、オンライン上で患者と医師がやり取りを行い、処方箋を発行するサービスです。代診医派遣や巡回治療をオンライン診療で代用できる指針がしめされたことから、地域によってはより利用頻度が上がっていくサービスだといえます。

また、住宅地の中でも僻地の場合には、オンライン診療を前提とした診療所の開設も認められているため、今後は地域と連携しながら活用されていくと予想されます。

スマート―ホーム機器との連携

家電操作の自動化や状態を観測するセンサーの導入などもシニア向け住宅では人気の近いDX施策です。たとえば、センサーに異常があった場合には緊急通報につながったり、知覚の医療機関とつながるなどの使い方ができます。

とくに家電操作から扉の開閉の検知など、あらゆる行動を自動化できる点にメリットを感じる顧客が多いといえます。ただし、スマートホーム機器との連動などは建物の設計段階から計画しなければなりません。

また、健康データの蓄積や可視化なども可能であるため、地域包括ケアシステムを成立させるためにもスマートホームとの連携は欠かせないでしょう。

まとめ

シニア向け住宅は、高齢者が住みやすい住宅の総称です。高齢者まで住みやすい住宅の1つであり、今後ニーズは増していくといえるでしょう。ただし、シニア向け住宅と連携しやすいオンライン診療やセンサーによる緊急通報などは、現状は建設する事業者の創意工夫に依存しています。

そのため、シニア向け住宅に対して、今後どのようなサービスを各社が付帯していくのかを冷静に見極めましょう。