2024年最新版。住宅業界におけるヒートアイランドの取り組みとは?

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近年では、ESGやSDGsなど、環境に配慮した観点から企業が評価されるように変化しつつあります。住宅業界に関しても他の業界とその傾向は大きく変化しません。では、現在の住宅業界では、ヒートアイランドに対してどのような対策を行っているのでしょうか。

本記事では、ヒートアイランドの概要やこれまでの対策、実例について詳しくみていきましょう。

「トレンドワード:ヒートアイランド」

ヒートアイランドとは、都市部が周辺と比較して高温になる現象を意味する言葉です。住宅も含めた構造物の多さによって、都市部の気温が周辺地域と比較して高くなり、次のような問題を引き起こします。

  • 熱中症の増加
  • 集中豪雨の増加
  • 気温の変化(日中よりも夜間の方が気温が高い)

建物がヒートアイランドに及ぼす影響は以下のようなものが代表的です。

  • アスファルト、コンクリートの増加(緑地現象、表面温度の高温化)
  • 建物からの廃熱の増加(エアコンや照明などのエネルギー量の増加)
  • 高密度化(風通しの悪化)

高温化という観点から、ヒートアイランドと地球温暖化を比較すると、気温が上がる点は同様です。しかし、地球温暖化は温室効果ガスによって世界的に気温が上昇する現象を意味するため、対象範囲と取り組みの方法が異なります。

改善する場合は都市単位での取り組みとなるものの、住宅も含めた建物に対策を施すことによって、断熱性向上やエネルギー効率の向上につながる(排熱の抑制)ため、住宅業界でも注目されています。

住宅に効果のあるヒートアイランド対策

ここでは住宅に効果のあるヒートアイランドと対策についてみていきましょう。住宅の場合はガラス、緑化などが候補となります。顧客のニーズとして、ヒートアイランド対策を口にするケースはあまりないと考えられるものの、窓ガラスや

緑化

https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001380405.pdf

都市部では、屋上や壁面緑化の施工面積は、年々広がっています。屋上緑化に関してはビルの最上階で実施する点や重量の計算なども行わなければならない点から、設計の段階で工夫する必要があるため、現在は壁面緑化が進んでいる状況です。

緑化を住宅で行う場合も屋上や壁面、周りを木々で囲むといった方法が実施されています。バルコニーや庭に木々を植えるという方法も室温の調整に効果を発揮するため、取り組んでいるケースも多いといえます。

保水性建材・舗装

保水性建材は、ベランダで使用される建材であり、水はけのよさと夏場でも裸足で歩ける温度である点が特徴です。ただし、汚れやすいため、定期的なメンテナンスと掃除が必要となる点は知っておきましょう。

保水性舗装は、公園などの耐久性を求められない場所で使用されており、吸水・保水性能に優れている舗装です。太陽熱によって蒸発し、水の気化熱によって舗装の周辺温度を下げる役割があります。温度としては、約10℃から20℃ほど下がる点も特徴です。

どちらも雨によって水を蓄え、蒸発するタイミングで周りから熱を奪う素材です。しかし、使用できる場所は限られるため、顧客のニーズに合わせて使用しましょう。

窓ガラスの遮熱・断熱性能の向上

窓ガラスに関しては、ZEH水準が2030年までに義務化される点も含めて、対応しやすいヒートアイランド対策となっています。たとえば、遮熱フィルムを張った場合には、この反射率を高めることができ、エアコンによる温度調整の負荷を軽減可能です。

住宅や建物の温度は、日射が直接家の中に入ることで上昇するため、遮熱フィルムは一定の効果があるといえるでしょう。

また、断熱性能の高い窓ガラスの使用によって、空調による負荷をより軽減できます。等級などは顧客から聞かれる機会は少ないものの、「環境と住みやすさに配慮した家づくり」を実施したといったニーズを聞いた場合は、複層ガラスの提案を行うとよいでしょう。

地中熱ヒートポンプ

地中熱ヒートポンプは、熱交換率に優れており、東北や北海道で導入が増加しています。調査や掘削が必要となることから、高額となりやすいものの、設置数は増加が続いている状況です。

冷暖房の効率が高くなり、省エネ効果も向上する点がメリットです。また、室外機の音を気にする必要がなくなるため、ヒートポンプの音が気になっている顧客にも提案しやすいといえるでしょう。

ただし、地中熱ヒートポンプを使用する場合は、住宅そのものが高気密・高断熱でなければならないため、仕様も確認しなければなません。

高反射塗料

高反射塗料は、赤外線の反射率が高い特殊な塗料です。表面温度の上昇を抑え、構造物の気温上昇を抑制できます。メリットは次のようなポイントが挙げられます。

  • 電気代削減が可能
  • 耐用年数も10年から20年と長い
  • 室内温度を2から3度ほど下げられる

しかし、冬季の暖房負荷の上昇のリスクや施工するための金額が高いため、住宅作りに活用する場合はよく検討したうえで提案しましょう。

ヒートアイランド対策事例

ここでは、ヒートアイランド対策の事例についてみていきましょう。自治体での取り組みが代表的であるものの、住宅会社として環境に配慮できれば、社会的信用を高めたり、ブランディングにもつながるでしょう。

愛知県名古屋市

名古屋市では、都市緑地法に則った都市開発が進められています。敷地面積300平米の新築や増築を行う建物であれば、敷地内の一部を緑化する必要性があります。屋上・屋内緑化の費用援助や助成金制度なども過去にはあったことから、緑化を意識した街づくりに注力しているといえるでしょう。

東京都

東京都では、学校の校庭内の緑化が進んでいます。たとえば、全公立学校(2,000校)の校庭芝生化を目指した経費補助なども実施していました。土や砂埃が散らない、芝生による日射の吸収などが期待できます。また、ほとんどの学校は地域と連携しながら、維持・管理を行っています。

まとめ

ヒートアイランドは、住宅業界としても関連性の高いワードです。都市部が周辺地域と比較して、夜でも気温が高くなる現象であるため、個別で対応することによって、対策が可能となると予想されます。

会社・自治体としても取り組んでいかなければならない問題であるため、今後もヒートアイランドの現状を知っておきましょう。