燈と住友林業ホームテックがAIを活用した断熱改修工事の提案システムを開発
燈株式会社(社長:野呂侑希 本社:東京都文京区)は、住友林業ホームテック株式会社(社長:島原卓視 本社:東京都千代田区)に対して、AI技術を含むアルゴリズム開発とAIシステム開発を行いました。今回のAIをベースに開発された「効率的な調査によるAIを活用した断熱改修工事提案システム」は、12月21日に東京・名古屋・大阪エリアから利用を開始して全国の省エネ基準地域区分5~7地域を対象に展開していきます。
システムとAIの概要
今回開発したAIは、サーモカメラによって撮影された熱画像に対して、深層学習を用いた物体認識アルゴリズムと温度データの解析による低温部位の抽出アルゴリズムによって、室内の断熱性能の弱点部位(床・壁・天井・窓など)の診断を行うことができます。
近年、深層学習を中心とする技術発展により、画像分類・物体検出の精度は著しく向上しました。燈は深層学習を用いた独自の画像認識モジュールを、今回のシステムの対象物体に合わせてチューニングや組み合わせを行うことで、従来の方法よりも室内の物体認識の対象範囲を拡大できました。
また、複数の写真から独自の高速な三次元復元技術を用いることで、居住者の頭部付近の高さの壁の温度を抽出したり、室内の壁を面ごとに切り出したりするなど、断熱改修工事提案に必要な情報を詳細に抽出することが可能になりました。
診断された室内の断熱性能に基づき、お客様の求める性能や範囲、価格などの条件に合わせて、有効な断熱改修工事の提案レポートをシステムから出力することができます。
従来は経験や知識を持つリフォームエンジニアが行っていた断熱診断を、誰でも定量的に行うことが可能になり、お客様満足度の向上に加えて業務の効率化や品質の確保にもつながります。
燈は、AIの研究開発に留まらず、「現場で使える」実用的なAIシステムを提供し、企業のDXに貢献し、さらにその先のお客様の価値に繋がり、社会をより良くするソリューションを提供し続けて参ります。
今後の見通し
今回の取り組みを通して、実際に撮影されたデータを蓄積していき、そのデータを用いてAIを更に学習し、アルゴリズムの精度の向上を図ります。また、現状は断熱性能向上の評価を考慮していない改修工事や木製家具などについても断熱性能向上への影響を調査検証して評価の見直しを図る予定です。
西山圭太からコメント
「AIの活用とサステナビリティ、そしてQOLの実現。いずれも我々の社会が直面する課題です。一見遠い関係にあるようにみえますが、実は密接な関係にあります。それは、持続可能性やウェルビーイングの実現には、自然環境や生命が担っている精妙な「計算」を再現する必要があるからです。
人間の経験だけでは可能でなかった「計算」を、AIを使って実現する。それがこのプロジェクトの意義だと思います。今回の住宅のリフォーム、断熱、木材の利用に着目した取り組みを第一歩として、さらにAIの利用とサステナビリティの結びつきが強まることを期待します。」
西山圭太プロフィール
1985年東京大学法学部卒業後、通商産業省入省。1992年オックスフォード大学哲学・政治学・経済学コース修了。株式会社産業革新機構専務執行役員、東京電力経営財務調査タスクフォース事務局長、経済産業省大臣官房審議官(経済産業政策局担当)、東京電力ホールディングス株式会社取締役、経済産業省商務情報政策局長などを歴任。日本の経済・産業システムの第一線で活躍したのち、2020年夏に退官。著書に「DXの思考法」(文藝春秋)
パナソニック ホールディングス株式会社取締役。
東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。
株式会社経営共創基盤シニア・エグゼクティブ・フェロー。
燈株式会社は、「日本を照らす燈となる」という使命を掲げ、産業が抱える課題を起点に、AI を中心とする最先端テクノロジーによって未来を実装する東京大学/松尾研究室発の AI スタートアップ企業です。
深層学習を利用した画像処理や自然言語処理、点群モデリング、シミュレーションなど幅広いAI技術に強みをもち、「DXソリューション事業」・「AI SaaS事業」の2つの事業を通じて課題解決に尽力しています。現在、建設業界を主要な事業ドメインとしており、大手から地方まで多数の建設会社様と共に建設DXに取り組んでおります。
住友林業ホームテックは、住友林業株式会社(社長:光吉 敏郎 本社:東京都千代田区)の100%出資のリフォーム専門会社です。“「ほんもの」の価値リフォームの実現”のため、住友林業グループならではの確かな設計力と高度な技術力、豊富なノウハウを活かし、省エネ改修+耐震改修+空間提案(木質化+インテリア)を推進し、良質な住宅ストックの形成と脱炭素社会の実現に貢献していきます。
住友林業グループは、森林経営から木材建材の製造・流通、戸建住宅・中大規模木造建築の請負や不動産開発、木質バイオマス発電まで「木」を軸とした事業をグローバルに展開しています。2030年までの長期ビジョン「Mission TREEING 2030」では住友林業のバリューチェーン「ウッドサイクル」を回すことで、森林のCO2吸収量を増やし、木造建築の普及で炭素を長期にわたり固定し、自社のみならず社会全体の脱炭素に貢献することを目指しています。
今後もZEH、ZEB、LCCM住宅、ネットゼロカーボンビルを推進し、建てる時と暮らす時の両面でのCO2排出量削減で脱炭素化を加速させます。