オフグリッド建築とは|住宅・ホテルでの事例紹介

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著者:小日向

トレンドワード:オフグリッド建築

「オフグリッド建築」についてピックアップします。環境負荷の少ない自給自足建築としての注目が高まっており、事例も増えています。本記事ではオフグリッド建築のメリット・デメリットのほか、具体的な事例についてご紹介していきます。

オフグリッド建築とは

オフグリッド建築とは、従来のインフラ(公共の電力、水道、ガス等)に頼らず、独自の自給自足システムを利用する建築や住宅設計手法のことを指します。最近では住宅のほか、ホテルやヴィラといった宿泊施設での導入事例も増えています。

「グリッド(送電網)」をオフにするという意味が由来で、自家発電することが特徴です。具体的には太陽光・風力・地熱といった自然エネルギーを利用します。また立地に応じて、雨水を生活水として利用するといった事例も見られます。地球温暖化問題が深刻となる中、オフグリッド建築の重要性も高まっています。

オフグリッド建築のメリット

オフグリッド建築のメリットとしては、下記の点が挙げられます。

  • 持続可能性と環境への配慮
  • エネルギーコストの削減
  • 非常時への備え
  • 独立性と自由度の向上

オフグリッド建築は、再生可能エネルギーを利用することで環境への負荷を大幅に減らすことができます。自然エネルギーの活用や環境への配慮により、持続可能なライフスタイルを実現できます。

またオフグリッド建築は再生可能エネルギーを活用することで電力料金がかからず、エネルギーコストを削減できます。長期的に見ると、エネルギーシステムの導入費用を上回る節約が可能です。

そして自己完結型のシステムを持つため、災害時や緊急事態においても、電力や水、食料などの必需品を供給できます。公共インフラに依存せず、自給自足の生活が可能です。これにより、従来の住宅よりも独立性が向上し、自由度が高まるでしょう。

オフグリッド建築のデメリット・課題

一方で、オフグリッド建築には下記のデメリットや課題があります。

  • 建築コストが高い
  • メンテナンスの手間が掛かる
  • エネルギー供給の安定性の課題
  • スペースの制約と制限
  • 非効率性と資源消費の矛盾

オフグリッド建築では、再生可能エネルギーシステムや自給自足のインフラを構築するための高い初期投資が必要です。太陽光発電システムやバッテリーなどの設置、水や排水システムの構築などが、コストがかかる要因となってしまいます。

またオフグリッドシステムの設計、運用、メンテナンスには、特定の技術的な知識が必要です。万が一システムトラブルが起こった際には、適宜修理が求められるでしょう。

そして天候や季節によって太陽光や風力発電の発電量が変動するため、エネルギー供給の安定性が課題となります。特に冬季や曇りの日等には、エネルギー不足が生じる可能性があります。

ソーラーパネルや風力発電機、水タンクなどの設置には一定のスペースが必要であり、これが制約となる場合があります。特に都市部や狭い敷地においては、オフグリッド建築の実現が難しいケースが多いです。

一部のシステムでは、逆に一般的なケン地区よりも資源の消費が大きくなってしまうことがあります。例えば、バッテリーの製造や廃棄に伴う環境負荷が懸念されます。これらの課題やデメリットを克服するためには、技術の進化や普及、効率的な設計と運用などが必要です。

オフグリッド建築・住宅の具体事例

ここでは、オフグリッド建築や住宅の具体的な事例についてご紹介します。スタートアップ企業を中心に開発が進められており、すでに実用化されている事例も多いです。

①バレッグス|大樹の杜

バレッグスでは、エネルギー自立型住宅「大樹の杜」を販売しています。主な特徴は、下記3点です。

  • ①暮らしの消費電力を抑えた住まい(ZEH)
  • ②エネルギーは「自ら創り・貯めて・使う」自産自消の家(ZEH+太陽光&蓄電池)
  • ③外部のエネルギーに頼らない自立したレジリエンスハウス(ZEH+オフグリッド)

必要な電気エネルギーは太陽光パネルを利用して創り出します。1000日間の実証実験結果を踏まえ、オフグリッドハウスに合ったパネルを選択可能です。3つのプランから選べるようになっています。

  • ①自給率100%の家(2580万円)
  • ②自給率94.5%の家(2300万円)
  • ③完全オフグリッドの家

①では送電網に接続し、余った電力は売電可能です。一方で③は送電網に接続せず、完全自給自足となります。災害時には防災拠点としての役割も果たします。

②ARTH|WEAZER(ウェザー)

スタートアップ企業のARTH(アース)は、オフグリッド型コンテナ建築「WEAZER(ウェザー)」を開発しています。自然の力でエネルギーを自給できるため、電気や水道インフラに頼らず、どこにでも設置することが可能です。

https://www.chillnn.com/1836d2246923a9#hotelMenu

同社はモデルハウスとして、宿泊施設の「WEAZER西伊豆」を運営しています。既存のインフラから独立し、電力や水を自給します。駿河湾を一望できる1日1組限定の宿泊施設となっており、稼働率9割を超える人気を博しています。

WEAZERの基本モデルは、20フィートコンテナを6台連結した約86㎥の躯体です。太陽光発電パネル、蓄電池、浄水・貯水設備、住設機器、内外装建材などが搭載されています。工場で設備や内外装をつくり込んだ状態で現地に運び、完全ユニット化されているのが特徴です。

③モルディブ・フローティング・ヴィラ| MAST

デンマークの海洋建築スタジオ MASTは、モルディブ・フローティング・ヴィラ(Maldivian Floating Villa)を開発しています。太陽電池、バッテリーパック、船上下水処理、ウォーターメーカーといった機能が搭載されています。

近年モルディブでは観光客の増加により、海を埋め立てて宿泊施設を建築することが大きな問題となっています。しかしこちらは海に浮かぶ建築のため埋立の必要が無く、環境負荷が少ない建築となっています。陸上リゾートとほぼ変わらない快適性を実現し、ハイエンドなリゾート体験が可能です。

まとめ|オフグリッド建築で環境に優しい住まいに

オフグリッド建築では、既存インフラから解放された自給自足の生活が可能です。まだまだ宿泊施設等での活用に留まっているのが現状ですが、技術開発により住宅での採用も増えていくことが期待されます。