ZEB Orientedとは?基準と注目される理由を徹底解説

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ZEB Orientedは、ZEBを目指すための基準の1つです。大型の建物に適用される基準であり、ZEBと比較するとより低いコストで導入できます。

政府のZEB普及目標やカーボンニュートラルの実現などもふまえて、ZEB Orientedは企業や自治体にとって現実的な省エネ対応の第一歩として推奨されている状況です。

本記事では、ZEB Orientedの定義や種類、注目される理由と将来的な展望についてみていきましょう。

「トレンドワード:ZEB orientedとは」

ZEB orientedとは、建築物の一次エネルギー消費量を30%から40%程度削減する措置を講じた建物を意味する言葉です。延べ面積が10,000㎡以上の建物に適用されます。たとえば、数値ごとにわけると次のような建物が対象となっています。

  • 30%-ホテルや病院、百貨店、飲食店など
  • 40%-事務所、学校、工場など

これまで、10,000㎡以上の建物は着工数が少ないものの、エネルギー消費量が大きい建築物として扱われていました。そのため、2019年に経済産業省資源エネルギー庁が発表した「ZEBロードマップフォローアップ委員会とりまとめ」によって、ZEB orientedが定義されました。

ZEB orientedは、既存や新築の建物を対象として、ZEB Readyに移行していくための環境整備の意味も含まれています。

ZEBとして認められるための手順

ZEBとして認められるための手順は、以下になります。設計や認証手続き、申請が複数回必要となるため、事前の準備も必要です。 既存の建物の場合は、ZEB化ができるかどうかを調査し、検査しなければなりません。

新築既存
対象となる建物の基本設計を進める第三者にZEB化可能性検査を依頼する
詳細設計を補助事業者と策定する詳細設計を補助事業者と共に策定する
認証手続きを行う認証手続きを行う
補助申請を行い、施工事業者を選択する補助事業申請を行い、施工事業者を選択する
施工・竣工検査。エネルギー効率が評価と補助事業者の検査もある施工・竣工検査。エネルギー効率が評価と補助事業者の検査もある
実績報告実績報告

※補助事業はZEBの補助金を使用する場合に必要となる

ZEBの種類は4つある

ZEBの種類は、以下のとおりです。全てZEBに該当するものであるため、実際の定義を知り、顧客のニーズに合わせて施工・コミュニケーションを取っていくことが求められます。

ZEB-再エネなしで一次消費エネルギーを50%以上削減。再エネ含めて100%以上削減している

Nearly ZEB-再エネなしで一次消費エネルギーを50%以上削減。再エネを含めると75%以上削減している

ZEB Ready-一次消費エネルギーを50%以上削減。再生可能エネルギーは必要なし

ZEB Oriented-一次消費エネルギーを30%から40以上削減。(建物全体ではなく部分的でもよい)

ZEBが必要とされる3つの理由

ここでは、ZEBが必要とされる理由についてみていきましょう。

環境負荷の削減

ZEBは、環境負荷の削減に役立ちます。建築物が使用するエネルギーを最小限に抑え、地球環境に与える負荷も削減可能です。また、断熱性能や最新の設備使用によるエネルギー効率の最適化も目指せます。

日本に関しては、省エネ基準法やカーボンニュートラルの実現に向けて、今後も継続的に環境に配慮した建築物が求められる状況です。

エネルギーコストの削減

ZEB orientedの場合もこれまでの建築物と比較して、一次消費エネルギー使用量は30%から40%削減されます。長期的なエネルギーコストの削減が見込まれるため、経済的なメリットがあるといえるでしょう。

また、国内の事情としてもエネルギー自給率が低いため、建物内でエネルギーの循環ができる環境が求められています。

国際的な規制や基準への対応

気候変動や海洋汚染、地球温暖化に対応するため、国際的な規制や基準が強化されています。たとえば、ドイツではパッシブハウス基準という基準があり、一次消費エネルギー率は学校でも90%以上と定められている状況です。

国際的な基準や規制に建物から対応するために、ZEBの適用を推進しているといえるでしょう。また、企業として環境負荷の軽減に対応できているかどうかは、国内外で評価されるため、市場での競争力強化という意味でも対応が必要です。

ZEB orientedを施工する3つのメリット

ZEB orientedを施工するメリットは、次の3つです。

  • 初期コストの削減ができる
  • エネルギーコスト削減が見込める
  • 段階的なZEB化を目指せる

ZEBは、最新の設備や再生可能エネルギーを可視化するためのシステム導入などが必須となるため、初期コストが高額となるケースも多いといえます。しかし、ZEB orientedの場合は、建物一部や設備のみから省エネを意識した設計が可能です。そのため、初期コストを顧客のニーズに合わせて提案しやすいといえます。

また、設計段階でZEB化を前提としていれば、計画的にZEB化を目指していくことも可能です。そのため、法規制や環境負荷の軽減が今まで以上に厳しくなった場合でも、対応しやすいといえるでしょう。

これまでのZEBの取り組みと今後の展望

ここでは、これまでのZEBの取り組みと今後の展望について解説します。

これまでのZEBの取り組み

2016年には、ZEBの普及目標が示され、政府主体で取り組みが進められてきたといえるでしょう。SDGsの目標達成や2050年のカーボンニュートラルの実現も含めて、2030年には新築の建物はZEB・ZEH水準をクリアする必要があります。

ZEB orientedに関しては、すでに官公庁の新築物件は適用しなければならない環境となっています。そのうえで、現在は各社で断熱性能の向上や建材の研究、設備開発を進めているといえるでしょう。

ZEBの今後の展望

業界として、ZEB化への対応は避けられないため、施工できる技術や環境を整えておく必要があります。たとえば、エネルギー効率を把握できるシステムを導入する場合、設計や提案の段階で、AIIoTの活用を前提とするケースも増えていくでしょう。

加えて、ZEB化されている建物は日本国内ではまだまだ少ないものの、今後より規制が強くなっていく可能性もあります。

まとめ

ZEB Orientedは、国際的な環境規制への対応やカーボンニュートラルの達成に向けた重要な要素の1つです。現在は、官公庁や大規模な建築物を中心に普及が進んでいます。今後は、規制強化や市場のニーズに対応し、AIやIoTなどの先端技術を活用したエネルギーマネジメントも必要となると予想されます。

企業からすれば、ZEB Orientedによって、エネルギーコストの削減や初期コストの低減、段階的なZEB化につなげられます。日本国内でも、より多くの建物がZEB基準に準拠していくと予想されるため、どのように変化していくのか注目しておきましょう。